Shina#47

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2/20/2025, 10:43:06 AM

お題 : ひそかな想い


____何事も始めた頃の記憶を忘れてはいけない。


昔、そう言われた記憶がある。
その「言葉」は、世界の人間が忘れるからそう呪っているのだろうけど。じゃあそれができすぎる人間はどうなるのだろうか。
そういう「言葉」こそ、忘れられないからずっとそれを繰り返している気がして、聞くたびに変な気持ちになる。

「行けたら行く」「期待している」

生々しい言葉は自分の中で淘汰して。

「君がいるから生きていける」「生きてていいんだよ」

美しい思想や押し付けられた表現は面倒臭いと思い、それが求められる時代に嘘くさいと思って。

「___っていう経験があったけど、後悔はしていない」

目の前にいるただの他人が語る、綺麗に梱包された不幸や悲劇が安っぽく感じる。


「絶対できるから、期待しておくね」
「君がいたから、こんなに素敵なのができた!」
「君の経験だって、成功に繋がるはずだ」


『 うるさい 』

そんな人達に、「言葉」のナイフを突き付けた。
だって、その「個人の幻想」で俺が報われるわけないでしょう?
「うるさい」……その「呪い」は、俺自身が思った、まさに「濁りのない毒」。


心に残り続けるひそかな想いは、『救わないで』。そんな綺麗な毒のような想い。

こう想い続ける俺が報われるたった一つの方法は、具現化できない腐った想いを他人に突きつけること。
「うるさい」という呪いでは折れないぐらいの、まさに突き刺さる言葉。

周り……いや「他人」は、そんな俺に自分自身の思想を押し付けてくる。いつか爆発するのは目に見えている。


だったら今は、正気で狂わせて欲しい。


俺を救おうとしないで。
これは俺の染み付いた執着。
きっと、他人にも大切な人にも奪えない。

「表現」という「呪い」が、俺の中で正気であるうちに。さっさと、目の前で消えろ。

さもなければ____これは、言ってはいけなかった。

ともかく、俺は密かに想い続けている。

「 世界なんかどうなってもいい。 」
「 この想いだけは、誰にも奪えない。 」

_____そうやって、ね?

2/19/2025, 10:06:47 AM

お題 : あなたは誰

ずっと頭の何処かで、知らない誰かが生き続けている。

『おはよう!今日は何するの?』『そこはAじゃない?』

『ねぇ、忘れ物してるよ!!』

とにかく、うるさい。ありがたいけど、うるさい。

本当にこの声に覚えがない。ずっとうるさい。

だからある時、言ってしまった。

「毎日毎日、なんなの!?あなたは一体誰なの!」

『え、僕の言ってることが分かるの?』

「へ?」

頭に響き続ける声は、僕の幻覚だったのか?

高校生を卒業すると、その声はいつの間に聞こえなくなっていた。

一体頭にいたあの声が誰だったのか、今でも分からない。

2/18/2025, 1:57:51 PM

お題 : 手紙の行方

「……ほら。」

「…え、あの、居先輩……こ、これは」

「手紙!さっさと受け取って。ほら」

「は、はい」

「それじゃ、また明日。頑張って」

「あ、が、頑張ります!」


尊敬する先輩から手紙を貰うなんて、想像もしてなかった。


きっと1年生と3年生の間でしている交流だから、私にくれたのだろう。それでも見た目も可愛く実力もありモテる先輩から、手紙をくれるとは思ってなかった。

つい先日も、1年生のチャラいやつから言い寄られているのを見たし。まさか「手紙を渡す相手がいる」という「相手」が私だとは。

なんだか凄く嬉しい気分になり、手紙を抱えてルンルン気分で家に帰った。

【 後輩の粋へ 】

【 正直、交流とかめんどいよね。なんかうるさい1年が声掛けてくるし、他に仲良い1年もいないからあんたにしといた。 】

【 3年にビビりすぎていつも吃ってるのは鬱陶しいけど。粋のこと、部活では3年より頼りにしてるんだから、もっと自信出しなよ。 】

【 粋の歌、私は1番好き。 】

【 はい、これぐらいで満足でしょ?足りない時は聞いてきなよ。あんたはいいところ有り余るほどあるんだからね 】

【 自慢の先輩 月城居 】

心が熱くなって、燃える感覚がした。

先輩は本当に凄くて、尊敬している。だからこそ、先輩の言葉が凄く嬉しい。手紙とか書いたこと無かったけど、こんなにいいものだったんだ。

その手紙を丁寧に、元の状態に戻す。

きっと居先輩なら、「なくした」と呟いてしまうと、冗談でも怒られる。なら、しっかりと丁寧に保存しておこう。


この手紙の行方は、ずっと経っても分からない。
それでも、今は心からこの手紙を大切にしたい。

そう考えた私は、この手紙を心に仕舞い、明日も頑張ろうと自分を奮い立たせた。

2/17/2025, 11:56:09 AM

お題 : 輝き


[輝き]がない人間は、いつまでたっても
[頂点]には昇れない。


周りに合わせて少しずつ折っているスカート。
鬱陶しくて切ってない黒髪。

何故かそれだけで、私は「真面目」と判断されるらしい。

自分が困るから常識内の勉強をして、平均点をとっているだけ。少しでも怠って、悪い点をとると「珍しい」と言われる。人に文句を言うことはできない。

そんな弱虫な人間でも、好きな人ぐらいはいる。

同じクラスの、少し不良っぽい男の子の夏(ナツ)。
私からしたら嫌いな人種。だけど、自分らしく生きているのが[輝き]を持っているなと羨んでいるのだ。

『おはよ、こは』
「え?あぁ……おはよう」
『今日テストだけど、自信あんの?』
「それなりには?」
『じゃ、補習ん時勉強教えて。それじゃ』
「結局こじつけじゃん!?………もう」

私のことをあだ名で読んでくれて、気軽に話しかけてくれる。それでいて、友達に恵まれている。

本当に自由。本当に、羨ましい。

それでも、彼の[輝き]に嫉妬して噂をする連中がいる。

「なぁ知ってる?夏って男が好きらしいぜ」
「え、それってゲイってこと?」
「うわ、でも有り得る。だっていつも男に抱き着いてるしなw」
「女の子に無駄に優しいのもそういうこと?うわぁ、なんか無理だわ」

『………』
「…………」

夏と同じクラスになって気付いたこと……それは、意外にメンタルが弱いこと。

たとえただの「噂」だとしても、結構気にしてる。
でも……「男が好き」。それが本当なら、女の私は恋愛対象にないのだろうか?


…………私も、夏みたいに自由に生きたい。


心の何処かでは、彼に嫉妬をしている。
髪色はあまり目立たない薄黄蘗。少し乱れ、汚れもある指定服。

テストの時間も集中せず、全てを投げ出して自室に籠る。
今日と明日のうちに全部やる。そう決めたから。

そんなこんなしてるうちに、あっという間に時間が過ぎて登校する日になっていた。

この2日間、[輝く]ための準備をした。

「おはよう琥珀……あら、相当なイメージチェンジね」
『何?似合ってないとでもいいたいの?』
「違うわ。すごく似合ってるわよ。いってらっしゃい」

美容室を明日に予約し、制服を投げ捨てて私服に着替える。

家にあるスカートは全部切った。

「え、あれって誰?」
「え?見た事ないけど……」
「ねぇ!あれどうやら琥珀らしいよ!」
「はぁ!?琥珀!?」

後日の美容室で男の子みたいに短く切ってもらい、藍白に染めてもらう。

『おはよ』
「えっ!?あ……お、おはよう…?」
『今日も、がんばろーね』
「は、はい…」

そしてお母さんからピアスをもらい、雫型のピアスを付ける。

そして今日、お兄ちゃんから学校指定の制服を借りて着ていく。

「あ、夏見ると思い出すわ。ゲイってこと」
「ちょっとやめなよw」

『…………』


『大丈夫?』


『……え?』
『忘れたの?俺、琥珀だって』
『こ、こは……!?……どしたの、なんかあった?』
『そういうの関係なくない?俺も俺らしく生きたかったんだって』
『こはがいいならそれでいいけど…』
『それじゃ夏!今日一緒に遊び行こ?俺夏のゲームスキル見たいな〜』
『こはもゲームとかすんのな……勉強してるイメージしかなかった』
『いやいや、勉強なんか面倒臭いし!もう今日から頭に通すだけにした!お願い、今日だけでいいから〜』
『分かった、分かったから!くっついてくんな…!』


_____そう。これが、俺の[輝き]なんだ。

2/16/2025, 3:21:17 PM

お題 : 時間よ止まれ

目を開けると、真っ白な天井。
起き上がろうとしても、体が思うように動かない。

頑張って視点を左右に動かして、状況を把握する。
きっとここは病院だ。


にしても、俺はなんでこんなことに?


思い出そうとしたら、頭に激痛が走る。
頭痛だとか、言葉に表せるような痛みじゃない。激痛より激痛。

それなら、簡単なことなら。
1+1=2。いや、これは簡単すぎたか。
だったら俺の名前。俺の名前は_____


あれ?俺の名前って、なんだっけ。


……なるほど。これがいわゆる、記憶喪失。「ここはどこ?わたしはだれ?」っていうヤツ。

でも、俺の場合常識は頭にしっかり残っている。
さっきだって、ここが病院ってことが分かったし。

その瞬間、閉まっていたカーテンが開く音がした。

そこには、背が高い男の子が1人。俺の常識しかない記憶によると、ソイツは同じ学年の奴らしい。

「……え、起きてる…大丈夫か!?」

真冬なはずなのに、汗を流している。
彼は、俺の友達だったのか?

「えっと……本当にすいません、誰ですか?」

衝撃を与えてしまうのは申し訳ないが、こう聞かないとキリがあかない。自分ながら胸が痛い。

「……俺は、お前の親友。俺達が遊んでた時に、事故に巻き込まれてこうなってる…ってわけ。」

「事故…………って、貴方は大丈夫なんですか?」

「俺達」。そう言っていたなら、彼だって…………
そう思い、疑問を口に出してしまう。
しまった、迷惑だったかな?


「それも全部、記憶が治ったら分かるよ」


彼は笑っている。本当に笑顔。
つまり、無事………そういうことになる。

でも、何でなんだろう。
気持ちが…とてつもなく落ち着かない。

「ところで、1つ質問してい?」
「……いい、ですよ」

「なんで泣いてんの?」

優しい顔だった。

自覚はしてた。「自分自身が泣いている」という自覚。
覚えているはずがない。記憶喪失なはずだったのに。
目の前で笑う████を見ていたら、涙が止まらなくなってしまった。

そんな優しい顔をした彼を見た時、少しだけ思い出した。

突然彼が「いつもありがとう」とか言い出したと思ったら、「今度一緒にまた遊び行こうぜ」とか言葉を並べ出して。だから、約束通り今日遊んで。

そしたら、突然建物に車が突っ込んできて、████が俺を庇って、車の下敷きになって。叫んで。泣いて。

_____そうだ。████は、死んだはず。


「思い出した?」


……さっきと同じ、優しい顔。


「マジで………有り得ねぇよ、馬鹿」

「感謝伝えられたから、俺はもうこれで満足なの」

「有り得ねぇから……そんなの……」

「受け入れろよ。それが、俺の1番の幸せだ」

「そんな簡単に受け入れるわけねぇだろ……」

「変なとこプライド高いお前も好きだぞ」

「死んだからってなんでも言っていいわけじゃねぇからな……」


██████は死んでいる。俺はまだ生きている。

そんな2人が話せる時間は、今この瞬間だけ。

「ありがと………最後まで、かっこよかったぞ…馬鹿」

「こちらこそ。………諦めず生きろよ、馬鹿」

お願いだから、1秒でもいいから。
時間が、ずっと止まっていてくれ。

𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
追記 : 2025/02/15「お題 : ありがとう」の2人のお話です
繋がってますので、良ければ読んでみてください
作者の「Shina#47」からでした
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄

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