お題 : 輝き
[輝き]がない人間は、いつまでたっても
[頂点]には昇れない。
周りに合わせて少しずつ折っているスカート。
鬱陶しくて切ってない黒髪。
何故かそれだけで、私は「真面目」と判断されるらしい。
自分が困るから常識内の勉強をして、平均点をとっているだけ。少しでも怠って、悪い点をとると「珍しい」と言われる。人に文句を言うことはできない。
そんな弱虫な人間でも、好きな人ぐらいはいる。
同じクラスの、少し不良っぽい男の子の夏(ナツ)。
私からしたら嫌いな人種。だけど、自分らしく生きているのが[輝き]を持っているなと羨んでいるのだ。
『おはよ、こは』
「え?あぁ……おはよう」
『今日テストだけど、自信あんの?』
「それなりには?」
『じゃ、補習ん時勉強教えて。それじゃ』
「結局こじつけじゃん!?………もう」
私のことをあだ名で読んでくれて、気軽に話しかけてくれる。それでいて、友達に恵まれている。
本当に自由。本当に、羨ましい。
それでも、彼の[輝き]に嫉妬して噂をする連中がいる。
「なぁ知ってる?夏って男が好きらしいぜ」
「え、それってゲイってこと?」
「うわ、でも有り得る。だっていつも男に抱き着いてるしなw」
「女の子に無駄に優しいのもそういうこと?うわぁ、なんか無理だわ」
『………』
「…………」
夏と同じクラスになって気付いたこと……それは、意外にメンタルが弱いこと。
たとえただの「噂」だとしても、結構気にしてる。
でも……「男が好き」。それが本当なら、女の私は恋愛対象にないのだろうか?
…………私も、夏みたいに自由に生きたい。
心の何処かでは、彼に嫉妬をしている。
髪色はあまり目立たない薄黄蘗。少し乱れ、汚れもある指定服。
テストの時間も集中せず、全てを投げ出して自室に籠る。
今日と明日のうちに全部やる。そう決めたから。
そんなこんなしてるうちに、あっという間に時間が過ぎて登校する日になっていた。
この2日間、[輝く]ための準備をした。
「おはよう琥珀……あら、相当なイメージチェンジね」
『何?似合ってないとでもいいたいの?』
「違うわ。すごく似合ってるわよ。いってらっしゃい」
美容室を明日に予約し、制服を投げ捨てて私服に着替える。
家にあるスカートは全部切った。
「え、あれって誰?」
「え?見た事ないけど……」
「ねぇ!あれどうやら琥珀らしいよ!」
「はぁ!?琥珀!?」
後日の美容室で男の子みたいに短く切ってもらい、藍白に染めてもらう。
『おはよ』
「えっ!?あ……お、おはよう…?」
『今日も、がんばろーね』
「は、はい…」
そしてお母さんからピアスをもらい、雫型のピアスを付ける。
そして今日、お兄ちゃんから学校指定の制服を借りて着ていく。
「あ、夏見ると思い出すわ。ゲイってこと」
「ちょっとやめなよw」
『…………』
『大丈夫?』
『……え?』
『忘れたの?俺、琥珀だって』
『こ、こは……!?……どしたの、なんかあった?』
『そういうの関係なくない?俺も俺らしく生きたかったんだって』
『こはがいいならそれでいいけど…』
『それじゃ夏!今日一緒に遊び行こ?俺夏のゲームスキル見たいな〜』
『こはもゲームとかすんのな……勉強してるイメージしかなかった』
『いやいや、勉強なんか面倒臭いし!もう今日から頭に通すだけにした!お願い、今日だけでいいから〜』
『分かった、分かったから!くっついてくんな…!』
_____そう。これが、俺の[輝き]なんだ。
2/17/2025, 11:56:09 AM