「 」
そう呟いた。
確かに、そう言ったはずなのだけれど。
耳鳴りが邪魔で、自分自身の耳にははっきりと聞こえなかった。
「いつの間に、もうこんな暑くなってる」
日差しが直接当たる。汗が流れる。
そして、風鈴の音が鳴る。まだ微かに風が吹く季節だ。
「蝉もうるさいし、トンボも無邪気に飛んでる」
虫は……動物は、植物というのは、どれもが無邪気なもんだ。私とは、静かに泣く君とは違う。
静かで無邪気な心を持っている。
「だから、だからさ」
影で泣いている、君に向き直す。
もう一度、さっき私には聞こえなかった言葉を。
「ただいま、夏。」
微かに強くなった日差しが。
微かに鳴った風鈴が。
微かに強くなった虫の声が。
あの時止まったままの「夏」を、思い出させてくれた。
お題 : ただいま、夏。
お題 : ぬるい炭酸と無口な君
「ねぇ、それ。なんで置いてあるの?もしかして僕のために!?」
何も答えてくれない。テンプレ通りだ。
でも確かにそれは、絶対に僕のために置いてあるもの。何故ならというと、君は炭酸が飲めないから。
(書き途中)
お題 : 涙の跡
涙の跡を知らないフリした。
…………私は、そんなのしたことない。
どれだけ逃げたくあっても、それは変わることのない事実だ。
人前で泣いたなら誰かが覚えているし、
自分一人で泣いた涙に籠っている気持ちは嫌でも覚えている。
どれだけ「死んでくれ」と願って泣いた夜があったか。
あの夜の気持ちを忘れたわけではない。
今でももちろん、あいつの事は殺したいほど憎んでいる。なんならいっそ、今この瞬間に消えて欲しい。
だけどどれだけ泣いた涙の跡を追って、こんな気持ちに行き着く。それは後悔の気持ち。
あんなやつの為に泣いてるだけ時間の無駄。
嫌でもアイツは生きてるんだ。私にとってアイツなんてただのモブ。ただの脇役!!
私は誰がなんと言おうとこの人生の主人公だ。ただ人の否定と過度な虐めしか出来ない可哀想な脇役共(笑)
あの涙は無駄だった。でも、無駄じゃない。
そう気付かせてくれた人がいる。
そんな運命的な出会いがあった。
それを結びつけてくれたのは悔しいけどアイツらだ。
あんなやつ、いつか忘れていつか笑い事になる。
自分がどんなに嫌いでも、アイツらよりは好きだ。
そう誇れるようになった、涙の跡。
「そうだよ。私は何回も泣いたことがある。」と。
隠すことも、知らないフリもしない。
誰がなんと言おうと、あの涙は私の人生の証だ。
もしも過去へと行けるのなら
いっそ産まれた時代からやり直して、
貴方と学生として出会えた時まで戻らせて。
こんな考え方でごめんなさい。
「死にたい」とか考えないぐらい慣れてしまったけど。
もしも戻れるなら、
人生赤ちゃんからでもやり直せるなら、
むしろ産まれないままで。
それか時代を変えて、あなたとちゃんと出会えるまで。
私は、貴方とこんな関係性で出会いたくなかったの。
今日顔を合わせられたことも偶然じゃなくて、必然であって欲しかったの。
今日、手を振ってくれて私が振り返した時間は嘘じゃなかったけど。
出会えただけで、会えただけで、声が聞けただけで本当に嬉しいのに、「もっと違う時代で」「関係で」って思ってる自分が大嫌いだ。
ごめんなさい。でもせめて、少しは我儘な私を許して。
お題 : 真昼の夢
とんでもなく最悪な夢を見たよ。
簡単なことだけど、君が死ぬってだけの夢。
君にはとんでもなく苦労をかけているのに。
ただ、ただの私の判断でとんでもないトラウマを植え付けているっていうのに。
ごめんね。でも、君が好きだから「もう忘れて」なんて言いたくないんだ。本当はもっと普通の人生歩みたかったよね。なんで、なんでこの体は。
ただ、「同じものが好きだから」って理由で、関係も違うのに仲良くなって、一緒に歩いてたあの時。
どうやら、お姉ちゃんの刃先の鋭いシャーペンを使って道路で遊んでいた子供が、危なく見えたからって飛び込んで。そのシャーペンが目に刺さって、通りかかった車に足を轢かれて。
今、私は病院の天井を見ることしかできない。足も目も失うことはなかったけど、動けないし見れない。落ち着いて動けばよかったのにね。
…………あの時の君の顔、鮮明に覚えてる。
目を覚ましたら病室で、思うように目が見えなくて、ピントが合わなかった。けど、分かった。今まで見たことないぐらい、目に涙を溜めて、悲しい顔をしている君がそこにいたってこと。
日差しが強くて、晴天で。足の感覚も、片目の機能も分からず寝ている体に、暑さと汗だけの感覚があった。
そんな真昼の出来事に、同じぐらい辛い夢を見て、まだ片目が痛いのに情けなく泣いてしまっている。
ごめんね。本当にごめん。
夢の中でも最期に「無事で良かった」なんて言わせて。
私は、まだ貴方みたいに大人になれそうにないよ。