お題 : 20歳
拝啓、親愛なる貴方へ。
僕はやっと、20歳になってしまいました。
貴方はきっと、まだ16歳のままなのでしょうか。
今は、貴方が望んでいたような未来にはなりませんでした。
僕はあの日からもずっと虐められていたし、
僕を救ってくれるような人は周りには居なかった。
だから招待された同窓会にも行かなかったし、
僕はあの日から、変わらぬまま弱いです。
それでもきっと、人並み生きているのは貴方のお陰です。
貴方は今、別の世界線で清く正しく生きているのでしょうか?
僕のことなど、もう忘れているのでしょうか。
それとも、別の世界線でも貴方は僕を憶えているのでしょうか。
僕はずっと、君が幸せならそれでいいです。
どの世界線でも、他の誰かだとしても、貴方が幸せなら。
僕が貴方の不幸を拭うから、僕に苦労を精一杯掛けてくれた貴方は幸せであってください。
同じ16歳だった学生時代でも、
もう20歳になってしまった今でも、
僕は、貴方の幸せを永久に祈っています。
お題 : 三日月
どれだけ朝日に目を逸らしていたくても、
どれだけ夕日の閃光が目に刺さっても、
どれだけ夜の静けさが1人を自覚させてきても、
どれだけ、世界が自分を拒もうとも、
この世界でたった一人、君だけは何故か放っておけなかった。
「おはよ〜う!」
昔から太陽そのもののような人だった。正しく、自ら光を発しているかのような明るさ。人によって、臨機応変に対応をする、正に"人によって感じ方が変わる日光"。
「また怪我してるが、頬」
「え?嘘!!!気付かなかった〜」
_______それでも、放っておけなくなる。
放っておいたら、いつの日にか自身の感情が爆発して、周りを巻き込んでしまうような気がしたから。きっとこれも、自分の過保護だと言うのは自覚しているものの。
それに、元の君はきっと"太陽"なんかじゃない。
「はい、絆創膏」
「さっすがぁ!でも貼ってよ、鏡なんか持ってないし」
「はぁ…………………」
渡したはずの絆創膏を受け取って、グシャグシャにしてしまわぬように丁重に扱う。
薄目でこちらの指を見る君を視界の端にいれつつ、いつもの場所に絆創膏を張り付けた。
「ありがと!」
世界を照らしているのではないか、と自称させたくなる程の笑顔。
それでも、自分にとっての解釈は"太陽"なんかに揺れ動かない。
いつも朝登校してきたら作られている痛々しい怪我。それに反して元気すぎる性格に、意外と真面目なステータス、少し天然を匂わせる発言。
________この人は全てが完璧なはずなのに、必ず何処かが抜けているのだ。そして、そんな未完成さにみんなが惹かれる。
もちろん、それは自分だってそうだ。自覚はしてる。
それでも、そんなに誰かを惹きつけていようとも、自ら光ることは許さない。
そう、だから自分とってこの人は_____。
「あーー!!なんかめちゃくちゃ可愛い絆創膏貼られてる!!!」
「鏡持ってるじゃん………」
「借りてるだけだも〜ん」
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お題 : 君が繋ぐ歌
「この曲はね、私の大好きな人が繋いでくれたんだ」
今日も大歓声が響くステージで、確かにそう言っていた曲を君は歌っていた。
喉を使った、迫力のある歌い方。彼女の魅力だ。喉を全力で使って、枯れることを知らないような歌い方。それに魅了されたファンは多いだろう。
でも、そんな声は_____彼女には負担でしかない。
彼女は、喉が弱いのだ。ずっと、ステージに立っていなかったら喉が死ぬほど痛いと静かに苦しんでいる。
それでも彼女は、あの歌い方を絶対にやめない。
その理由を、私は、私だけは……たしかに知っていた。
あの日、喉を痛めて入院していた病院の病室で、静かに語った言葉は、今でも忘れたことは無い。
「次のライブは、絶対これを歌う。もう最後かもしれないからね」
「あとさ、この曲を貰った大好きな人から言われたんだ」
「この曲は、繋げていく。『大好きな人にこれを教えて、ずっと忘れないようにするんだ』って、私も言われたんだ」
「だから今度は、君にこの曲をあげる。歌上手いんだし、いいでしょ?歌手、絶対辞めないでね」
あの時の衝撃を、忘れられるはずが無い。
「________!!」
力強く響く歌声に、負けないほどの歓声。私は、この景色を忘れることもきっと無いのだろう。
「 」
そう呟いた。
確かに、そう言ったはずなのだけれど。
耳鳴りが邪魔で、自分自身の耳にははっきりと聞こえなかった。
「いつの間に、もうこんな暑くなってる」
日差しが直接当たる。汗が流れる。
そして、風鈴の音が鳴る。まだ微かに風が吹く季節だ。
「蝉もうるさいし、トンボも無邪気に飛んでる」
虫は……動物は、植物というのは、どれもが無邪気なもんだ。私とは、静かに泣く君とは違う。
静かで無邪気な心を持っている。
「だから、だからさ」
影で泣いている、君に向き直す。
もう一度、さっき私には聞こえなかった言葉を。
「ただいま、夏。」
微かに強くなった日差しが。
微かに鳴った風鈴が。
微かに強くなった虫の声が。
あの時止まったままの「夏」を、思い出させてくれた。
お題 : ただいま、夏。