お題 : 君が繋ぐ歌
「この曲はね、私の大好きな人が繋いでくれたんだ」
今日も大歓声が響くステージで、確かにそう言っていた曲を君は歌っていた。
喉を使った、迫力のある歌い方。彼女の魅力だ。喉を全力で使って、枯れることを知らないような歌い方。それに魅了されたファンは多いだろう。
でも、そんな声は_____彼女には負担でしかない。
彼女は、喉が弱いのだ。ずっと、ステージに立っていなかったら喉が死ぬほど痛いと静かに苦しんでいる。
それでも彼女は、あの歌い方を絶対にやめない。
その理由を、私は、私だけは……たしかに知っていた。
あの日、喉を痛めて入院していた病院の病室で、静かに語った言葉は、今でも忘れたことは無い。
「次のライブは、絶対これを歌う。もう最後かもしれないからね」
「あとさ、この曲を貰った大好きな人から言われたんだ」
「この曲は、繋げていく。『大好きな人にこれを教えて、ずっと忘れないようにするんだ』って、私も言われたんだ」
「だから今度は、君にこの曲をあげる。歌上手いんだし、いいでしょ?歌手、絶対辞めないでね」
あの時の衝撃を、忘れられるはずが無い。
「________!!」
力強く響く歌声に、負けないほどの歓声。私は、この景色を忘れることもきっと無いのだろう。
10/20/2025, 9:11:57 AM