お題 : 時間よ止まれ
目を開けると、真っ白な天井。
起き上がろうとしても、体が思うように動かない。
頑張って視点を左右に動かして、状況を把握する。
きっとここは病院だ。
にしても、俺はなんでこんなことに?
思い出そうとしたら、頭に激痛が走る。
頭痛だとか、言葉に表せるような痛みじゃない。激痛より激痛。
それなら、簡単なことなら。
1+1=2。いや、これは簡単すぎたか。
だったら俺の名前。俺の名前は_____
あれ?俺の名前って、なんだっけ。
……なるほど。これがいわゆる、記憶喪失。「ここはどこ?わたしはだれ?」っていうヤツ。
でも、俺の場合常識は頭にしっかり残っている。
さっきだって、ここが病院ってことが分かったし。
その瞬間、閉まっていたカーテンが開く音がした。
そこには、背が高い男の子が1人。俺の常識しかない記憶によると、ソイツは同じ学年の奴らしい。
「……え、起きてる…大丈夫か!?」
真冬なはずなのに、汗を流している。
彼は、俺の友達だったのか?
「えっと……本当にすいません、誰ですか?」
衝撃を与えてしまうのは申し訳ないが、こう聞かないとキリがあかない。自分ながら胸が痛い。
「……俺は、お前の親友。俺達が遊んでた時に、事故に巻き込まれてこうなってる…ってわけ。」
「事故…………って、貴方は大丈夫なんですか?」
「俺達」。そう言っていたなら、彼だって…………
そう思い、疑問を口に出してしまう。
しまった、迷惑だったかな?
「それも全部、記憶が治ったら分かるよ」
彼は笑っている。本当に笑顔。
つまり、無事………そういうことになる。
でも、何でなんだろう。
気持ちが…とてつもなく落ち着かない。
「ところで、1つ質問してい?」
「……いい、ですよ」
「なんで泣いてんの?」
優しい顔だった。
自覚はしてた。「自分自身が泣いている」という自覚。
覚えているはずがない。記憶喪失なはずだったのに。
目の前で笑う████を見ていたら、涙が止まらなくなってしまった。
そんな優しい顔をした彼を見た時、少しだけ思い出した。
突然彼が「いつもありがとう」とか言い出したと思ったら、「今度一緒にまた遊び行こうぜ」とか言葉を並べ出して。だから、約束通り今日遊んで。
そしたら、突然建物に車が突っ込んできて、████が俺を庇って、車の下敷きになって。叫んで。泣いて。
_____そうだ。████は、死んだはず。
「思い出した?」
……さっきと同じ、優しい顔。
「マジで………有り得ねぇよ、馬鹿」
「感謝伝えられたから、俺はもうこれで満足なの」
「有り得ねぇから……そんなの……」
「受け入れろよ。それが、俺の1番の幸せだ」
「そんな簡単に受け入れるわけねぇだろ……」
「変なとこプライド高いお前も好きだぞ」
「死んだからってなんでも言っていいわけじゃねぇからな……」
██████は死んでいる。俺はまだ生きている。
そんな2人が話せる時間は、今この瞬間だけ。
「ありがと………最後まで、かっこよかったぞ…馬鹿」
「こちらこそ。………諦めず生きろよ、馬鹿」
お願いだから、1秒でもいいから。
時間が、ずっと止まっていてくれ。
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追記 : 2025/02/15「お題 : ありがとう」の2人のお話です
繋がってますので、良ければ読んでみてください
作者の「Shina#47」からでした
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2/16/2025, 3:21:17 PM