「20歳」
20歳。それは、私にとって超えたくない壁だった。その壁を越えれば、大人であることを強制され、これまでの思い出が全て過去になる。周りはみんな成人式だ、お酒だと浮つく中、私だけがずっと後ろを向いていた。
そんな思いを抱えながら20歳を迎えて1ヶ月が経った。
今も、私は大人になりきれないまま毎日を不安の中で生きている。
「三日月」
ベランダから空を見上げると、まだ明るさの残る空に三日月が浮かんでいた。満月の姿からは考えられないほど細く、誰かに奪われたみたいに穴が空いているようだ。その姿が、私の心の形と重なるように見えた。幸せだったのに、満たされていたのにいつの間にか蝕まれ奪われて気づけば大きな穴が空いていた。
月はまた、段々と満ちていく。
けれど、私の心が満月になる日が再び訪れる日は、きっとしばらくは来ないだろう。
「色とりどり」
甘い香りに誘われてそっと扉を開けると、そこには色とりどりで様々な表情のお花たちが歓迎するように並んでいた。
そんな花たちを見ていたら、あなたの優しい笑顔が浮かんだ。
虹のように色とりどりの花束を作ってあなたにプレゼントしよう。記念日ではないけれど、鮮やかな花束はいつもらっても嬉しくて、元気が出るものだろうから。
「雪」
灰色の重たそうな雲から、白い雪が降ってくる。手がかじかむ手を擦り合わせつつ、ゆっくりと白い息を吐いた。
こんな雪の日は、嬉しそうな君の笑顔が頭に浮かぶ。雪が大好きでいつも子どものように無邪気に笑っていた。僕はそんな君の笑顔に元気をもらっていたのに。今、君はこの雪をどこで誰と見ているのだろう。あの笑顔を誰に向けているのだろうか。
寒さのせいか鼻がツンと痛み、僕は灰色の空を憎々しげに見上げた。
「君と一緒に」
この道は、まっすぐに光へと続いている。私がいる場所は暗いが、歩き続ければ光の世界へ行けるだろう。でも私は、そんな世界に行きたくなかった。明るい世界なんて散々だ。それなら暗い場所で1人でいた方がよほど居心地が良くて安心だ。
そう思っていたのに。
突然光の世界からやってきた君は、私に向かって手を伸ばす。一緒に行こう、と。
私は首を激しく横に振った。それでも君はめげずに私の手を取って立ち上がらせた。
「一緒なら大丈夫だよ。行こう。」
温かくて優しい声に、自然と一歩を踏み出していた。君と一緒ならきっと大丈夫。根拠はないけれど、そう思えた。
君と一緒に、私は再び光の世界へと歩き出した。