「夢の断片」
柔らかな朝の光で目が覚める。見慣れたはずの部屋が何故だか知らない部屋のように感じた。ついさっきまで違う世界にいたような感覚だ。
まだ頭の中に残っている微かな夢の断片を、逃さないように繋ぎ止めながら急いで紙に記す。
断片を組み合わせていくと、忘れかけていた夢の形が不思議と浮かび上がってくる。
見えてきた夢は思わず笑ってしまうくらい支離滅裂で辻褄の合わないものだった。
この夢の話を聞いたあなたはどんな反応をするのか、想像しただけで楽しい朝だった。
「見えない未来へ」
過去はいつでも鮮やかに輝いているのに未来は目を凝らしても何も見えなくて、いつも目を逸らして後ろ向きに歩いてきた。
時が経った今も未来は見えないままだけれど、隣には君がいる。
君が私の手を取って未来に導いてくれるから、私は前を向くことができる。
たとえその未来が闇に続いていたとしても、私はきっと後悔しない。
「吹き抜ける風」
隣を歩くあなたの顔を見つめる。あなたは何を言ったらいいのか分からなさそうに、顔を真っ赤にして、私から目を逸らして前を見ていた。
気まずくなってしまった2人の間には冷たい冬の風が吹き抜けて、いつもよりあなたが遠く感じる。そのことに何だか悔しさを感じて、あなたの手をとって握った。
驚いて私の顔を見るあなたに、私は満面の笑みを返した。
今はまだ、2人の間には風が吹き抜けるだけの間があるけれど、いつかあなたの体温をもっと感じられるくらい寄り添って歩きたい。
「記憶のランタン」
生きていくのは大変で、現実に打ちのめされて心の中はどんよりと暗くなっていく。頭によぎるのは、過去の失敗や苦い記憶。それらは心をより一層闇で包んでいく。
そんな時、あなたのことを思い出す。優しい笑顔、柔らかな声、抱きしめた時の温もり。今でも鮮明に思い出すことができる。あなたの記憶が、ランタンのように淡く柔らかく光って私の心を明るくしていく。
この温かさが、優しさが、心に灯り続けるから、私はまだ歩いていける。
「冬へ」
冷たい北風が、私の頬から、手から、体温を奪っていく。ほんの少し前までは鮮やかな紅葉を楽しんでいたのに、気がつけばほとんどが散ってしまっている。
冬へのカウントダウンは、知らないうちに始まっていたみたいだ。
やっと、寒さを口実に君とくっつくことができる季節が来る。