いす

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12/21/2023, 6:24:46 PM

諦めてよ。諦めて。
この大空を覆えるほどの雨雲を待つ時間は私にはないの。
青く。どこまでも青く。
間違い続けて生きてきた。この大空の青に怯えるだけの人生だった。片隅なんてどこにもなかった。恥晒し、履き違えて、無様に踊り続けた。正すこともできない。正さなくても良い?間違いだらけの愛にそっと触れたのはあなただけだった。正確には、そっと触れてもらえたと私が気づけたのはあなただけだった。今までにもこうして触れられたことがあったのかもしれない、なかったのかもしれない。
怒る声が。悲しみの声が。
聴こえる。ちゃんと聴こえるから諦めて。あなたの声は私にちゃんと聴こえるから諦めて。雨が降れば、あるいは私がこの青をただしく愛せたら、そのときはまた私と恥晒しのダンスを踊ってよ。

12/21/2023, 7:55:59 AM

鳴っていた、と言う。その日ベルは鳴っていて、彼らは順調に街を回り、つつがなく子どもたちにプレゼントを配り、そうっと帰った。
「聞こえなかった」
「君が望んだ」
「そうかも」
ただひとつのベルの音で良かった。私はそれで満たされてしまった。だからもうおしまい。新しいベルの音は聞こえず、子どもたちの喜ぶ声だけが耳に届く。赤い服がよく似合うあなたが私の目の前で笑い、星のかたちのキャンドルに火を灯す。

12/20/2023, 9:45:55 AM

「手らしい」
「何が?」
「寂の又の部分」
「へえ、左側は?」
「忘れた」
うかんむりの下で手が何かを触っているのだろう、という当たりをつけることになる。その者は1人なのだろう。又の字は1人分にしか見えないので。左側を忘れた男が寂の字に「さびしいか?」と問いかけている。奇怪な男だ。ならせめて思い出してやれ。今この場でこの小さな家で1人で何かに触れている者を、孤独から解けるのはお前ただ1人だ。

12/19/2023, 9:17:07 AM

ことさらこの冬がそうであるようにと祈り続けている。普段祈りなどしないので祈りの作法に準じているかは知らない。
名も知らぬ神よ、私の声は、あるいは視線はそこまで届きますか。この2人が分かたれることがありませんように。ただそれだけです。この2人が互いを抱きしめ合う日が多くありますように。ただの2人でいても孤独であると知っている2人です。ただの2人でいても互いを分かち合えないと知っている2人です。だから隣り合うと決めた2人です。愛など知らないと嘯きながら、いまこの世で一番慈しみに溢れた2人です。

12/18/2023, 9:51:25 AM

ここでとりとめもない話をしはじめてもうすぐ100日になる。大体は創作の根やアクセントに後々使われるが、その日その日書くものなので、間接的に日記という機能を兼ねており、読み返せばその日何があったかを薄っすら思い出せる。
君がいなくなった翌日の朝の空気を思い出している。日々書き換えられていく記憶が、「これはあの日の朝の空気です」といった顔をどうにか取り繕って私にその瞬間を差し出す。その不確かで曖昧な記述や行動や現象に囲われながら、君の不在という確かな事実を抱きしめている。

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