いす

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「手らしい」
「何が?」
「寂の又の部分」
「へえ、左側は?」
「忘れた」
うかんむりの下で手が何かを触っているのだろう、という当たりをつけることになる。その者は1人なのだろう。又の字は1人分にしか見えないので。左側を忘れた男が寂の字に「さびしいか?」と問いかけている。奇怪な男だ。ならせめて思い出してやれ。今この場でこの小さな家で1人で何かに触れている者を、孤独から解けるのはお前ただ1人だ。

12/20/2023, 9:45:55 AM