同情
彼は作品が特徴的すぎると有名な彫刻家
あまりにも独特すぎるが故に、商品が売れていない
普通のものを作ればいいものを
断固として、自分の世界の作品を作り続けている
逆に欲しい、とも一時期言われていたが
それも一時の風
薄い壁で取り付けられた興味はすぐどこかへ飛んで行った
「…またそんな服ばっかり着て、少しはオシャレしたら?」
君は、人の気も知らずにズカズカとドアを開けると呆れ気味にため息を吐いた
「作務衣の何が悪いのさ」
「悪いも何も、貴方は私の幼馴染なんだから一応人目は気にしてほしいんだよ」
「周りから職人って言われてるの知らない?」
職人、という言葉は聞いてて心地が悪い
売れていない自分に対しての皮肉なんだろう、そう気付くのには時間はかからなかった
「さっきから疑問文で話すのやめてくれないか、頭が痛くなる」
「はぁ……」
彼女は何度吐いたか分からないため息で部屋を見渡す
部屋はぐちゃぐちゃで、そこらに道具が落ちている
大学の空き部屋を使っているせいか日当たりも悪い
その目には、趣味の悪そうな彫物が置かれているように見えているのだろう
彼女は部屋の中心にある彫刻を見つめた
形が歪な、長身の女性
目は作成途中なのか顔はのっぺらとしてして、口は笑っている
下半身には女性らしいふっくらとした体の丸みが垣間見えた
「綺麗ね」
「行き過ぎた芸術は理解されない、とでも言うのか」
僕の言葉を無視して、彼女は濁りの無い眼で見つめる
モデルは君だ
そう言ったら君はどんな表情をするだろうか
きっと、御籤で凶を引いた、そんな顔をするに違いない
コツコツ、とヒールの音を鳴らしながら耳に髪をかけるアイツが少し色っぽく見えて、思わず顔を逸らした
「……なに?」
「べつに」
彼女は怒って、それか呆れて部屋を出ていってしまった
視界に写ったその瞳には、
僕がどんな色で見えていたんだろうか
枯葉
枯れ葉は、肥料になるらしい
おじいちゃんは、いわゆる老害だ
古く臭い考えだし、口煩い
今時の若いもんは〜……なんて文句も平気で言う
今になっては逆に慣れたもんだが、小さい頃にも容赦なくタコができるほど聞き慣れた言葉だ
そんな態度だから近所の人からは毎回、話題が無くなった時のネタにされている
自業自得だ、とも思うが
誰に対しても態度の変わらない人間
裏表がない、という意味では終始一貫な人だなと思う
「礼儀がなっとらんな」
杖を上げて、俺を指しながらこちらを見るおじいちゃん
礼儀がなっていない、というのは‘’俺に会っておきながら挨拶のひとつもしないとはどいうことだ”、という意味らしい
「(通訳雇ってくんないかな)」
「あぁ……おはよう」
目線を上げて顔色を伺うが、鉄板のように硬い表情は変わらない
別に間違った事も言っとらん気もするが、顔に更にシワが入ったような気もする
「おはよう…ございます」
そう言うと満足したのか背を向けてリビングへ向かう
腰が悪いのにわざわざ俺のところまで来て、小さな嫌がらせをしてるくのだ
毎朝やられるからたまったもんじゃない
一見些細に見えるだろうが、機嫌が悪い時は思わず口が滑って
俺は執事じゃねぇぞ、この野郎。と言って喧嘩になったこともある
「……ふん…」
こんな事考えても時間の無駄だよな、早く行こう
頭の中に残る邪念を振り払って、玄関のドアを開けた
少し歩くと見慣れた風景が飛び込む
ランドセルを交互に預けながら登校する小学生、スマホを見ながら歩く若者、なにやら仲良さげに話す近所のおばさん
「ロウさん家の子だわ」
ロウさん、というのは俺のおじいみゃんのニックネームみたいなものだ
小学生の間で妖怪みたいな通り名で呼ばれているらしく
杖をついた老害じいさん、の略らしい
「ずいぶんと、まぁ。おおきくなったわね」
「あなたが歳を取っただけじゃない?」
「やだもぉ……気にしてるんだからね。やめてちょうだい」
「でも、挨拶もしないのね」
「まぁ、親代わりがあの人じゃあ……ねぇ?」
無視をしようかと一瞬思ったが、出かける前にじいちゃんに言われた言葉が頭に引っかかって思わず声をかけた
「おはようございます」
「あら、おはよう」
「ほんと、礼儀正しいねぇ。」
「私の息子にも見習ってほしいわ」
おばさんは口に手を当てながら、ヒラヒラと手を振る
その様子にある文章を思い出した
確か、最近読んだ本で口元を隠すのは感情を知られたくない心理の現れだった、とか見たような気がする
「それでね、最近新しい服を買ってみたの」
「どう?」
話が進んでいたのか、目の前のおばさんはヒラヒラと長いスカートを靡かせて右に視線を向ける
「うーん……イマイチね」
「色が合って無いんじゃない?まぁ、いいと思うけど」
赤、紫、黄のスワイプ柄のセーターと、茶色のロングスカート
バックには典型的な豹柄とか、目がチカチカするような彩り鮮やかなものまで
それ誰が着るの?っていう服を着ていたりする
40歳以降はセンスのない服しか着てはいけない、とかそういう規則でもあるのかな
「では、そろそろ……」
「引き止めちゃってごめんなさいねぇ、じゃあ」
「はい、さようなら」
少しお辞儀をした後に足を進めるとザクッ、と足に何かを踏んだ感触を感じた
道端に、大量の枯葉が落ちている
まるで______
「おじいちゃんみたい」
思わず枯葉を手に取る
葉っぱは茶色くカサカサで、土の匂いがした
元気そうな小学生も、あの若者も、近所のおばさんも、おじいちゃんも、みんな歳をとっていく
俺も、あんなふうになるのだろうか
栄養が無くなって成長を終えた葉と、シワシワのおじいちゃんの手の様子が重なった
10年後の私から届いた手紙
《やァ😊✋こんにちワ❣️あ❗️いまはこんばんは、カナ?ボクちゃんは10年後のワ・タ・シだよ❤️𓂃 𓈒正確には10秒後のワタシ、カモ?🦆←あ❗️これマガモだヨ💦💦(笑)》
「……なんだこれ」
「意味わからんな」
彩り鮮やかな、見ているだけで目が痛くなる文章に頭を抱えた
突然、空から降ってきた手紙を手に取ってみたらこれだ
こんなおじさん構文ほんとに書く人いるんだな、受け取る人が少し可哀想だ、なんて考えを巡らせている内に、この悪趣味な手紙をどうするか、その結論に至るには遅くはなかった
「かといって捨てたら……」
「ポイ捨てだぞ」
「だよね……」
丁寧に封筒に詰められた白い手紙をちらっと回して見てみる
一見普通の手紙だ
……内容を除けば
「学校に付いてから捨てるよ」
よりにもよって今日は小テスト
珍しく早起きして朝に詰め込んできた教科書の内容が吹っ飛んでしまいそうだ
こんな印象の塊みたいな存在は忘れてしまおう
そう自分に言い聞かせて学校へ足を運んだ
主人公は俺
口答えすんな、殺すぞ。
幼稚園でも主人公は俺
小学校でも主人公は俺
中学だろうと主人公は俺
高校だろうと主人公は俺
先公だろうと、親だろうと俺に歯向かうんじゃねぇ
気に食わねぇクラスのリーダーのお前も、小汚いサラリーマンのお前も全員ぶっ飛ばす。
今日から俺がボスだ。
俺に逆らうんじゃねぇ、殺すぞ。
昼飯買ってこい、殴るぞ。
飲み物もろくに買えねぇ出来損ないは切るぞ。
点数上げろ、殺すぞ。
生徒の事を思えねぇ、クソ野郎の汚ねぇ写真ばら撒くぞ。
ここは俺だけの俺のための世界。
主人公は俺。
誰だろうと俺に歯向かう奴は居なくなった。
俺に話しかけんじゃねぇ、女。
やかましい。やっちまえ。
ボコボコにしてやった、ざまぁみろ。
また来やがった。
バカが話しかけんじゃねぇ、女如きが出しゃばんな。
うぜぇんだよ。殺すぞ。
やれ。
クソが…しつけぇんだよ。
俺が相手になってやる。
刃物を目に近づけたらニコニコ笑って嫌がった。
マジで気持ち悪ぃ。
もう好きにしろ、クソが。
あの女、ずっと付き纏ってきやがる。
飯も授業もセットみたいにずっと来やがる。
トイレくらい1人にさせろ、マジでやめろ。
マジでウゼェ。
気持ち悪ぃ笑顔貼り付けやがって。
そうだ、殺そうか。
殴ろうとしたら笑顔でこっちを見た。
クソが。
授業をもっと出ろだと?
そんなの知らねぇ。
出席日数?俺は大学は行かねぇ。
一緒の大学に行くだと?
お前バカだから無理だろうが、アホが。
なんかしらねぇが怒りやがった。理不尽だろうが。
なんか食いに行くぞ、女。
金はお前が払え。
今は昼?しらねぇ。俺は腹減ってんだ。
早く行くぞ、女。
お前邪魔、そこどけモブ。
殴ろうとしたら女に止められた。
気分悪ぃ。飯とってこい。
…この店の食いもん腐ってんのか。不味ぃ。
女も眉を顰めてやがる。
不細工だな。
ふっ、ザマァみろ。
さっきの罰が返ってきたじゃねぇか。
クソが、教科書忘れた。
おいお前、ドア開けろ。
どけ、女共。
騒ぐな。クソ、耳が痛い。
教科書貸せ、殺すぞ。
早く出せばいいんだよ、クソが。手間取らせやがって。
家までついて来やがった。この女。
親に見られた、クソが。
ぐちぐちウルセェんだよ、ババア。
彼女じゃねぇ、死ねや。
早く二階行けや、女。
菓子折りくらい用意しとけよ。
腹減ってんだよ。クソババア。
頭殴るんじゃねぇ。いてぇじゃねぇか、クソ。
勉強したくねぇ、俺に指示するんじゃねぇ。
して何になるんだよ。
全部無駄じゃねぇか。
バカみてぇに机向かいやがって、クソ女。
昼寝してんのに起こすんじゃねぇ。
なんでそんな怒ってんだよコイツ。
仕方ねぇからわざわざ宿題を付き合ってやった。
感謝しろ。クソが。
暴力はやめてほしいだと、?
俺に逆らうんじゃねぇ
殺すぞ
腹を殴ったら静かになった
俺に逆らうからだ、ザマァみろ。
いい気分だ。
早く帰れ、女。
珍しく何も言わねぇな。まぁその方が楽でいい。
もう話しかけてくんじゃねぇぞ。クソが。
女がいねぇ。
学校を休み?
ちょうどいい。もう来なくて清々するぜ。
は?生理だと?しらねぇな。
俺は関係ねぇよ
クソ、汚ねぇ女だ
おい、お前。
女は何処にいる?
早く言え、殺すぞ。
ここが病院か?おい、そこの女。
あいつは何処だ?
早く言え、殺すぞ。
106?ノロマが。
早く言えばいいんだよ
話し声が聞こえる
親か?
確かあいつ父しかいないって言ってたな
痛そうみたいな声出しがって
クソが、俺のこと言うんじゃねえぞ
…大丈夫だと?……クソが。
あの親父が出て来やがった。
クソ、時間がねぇ。
無駄にデケェな。
…いてぇ
未成年殴ってんじゃねぇ、クソが。
これでフェアだと?ふざけんな。
俺を諭してんじゃねぇ、どいつもこいつもキモいんだよ。
2度と来ねぇ、クソが。
女が学校へ来た。
大袈裟にしてんじゃねぇ。クソが。
大丈夫だと?ふざけんな。
おい、女。
飯行くぞ。
放課後だよ、何が悪ぃんだ。クソが。
昼にはなんで誘わなかったのかだって?
気分だよ、クソが。口答えすんじゃねぇ。
前は最悪だったからな、他の店行くぞ。
おい、女。飯持ってこい。
ん、早く食え。イライラすんだよ。
今回の店は美味かったな。
俺が選んだから当たり前だが。
財布出すのおせぇんだよ。退け、俺が払う。
帰り際ニヤニヤしてんじゃねぇよ、女。
気持ち悪ぃ顔しやがって。
平均点になった。
私のおかげだと?
つけあがるんじゃねぇ。キメェな、クソが。
先公に呼ばれた。
カンニング?
してねぇっつってんのにこいつ頭おかしいじゃねぇの。
めんどくせぇ…クソが。気分わりぃ。
いつもいるあいつも同類だと?
好き勝手言いやがって。
女のこと話すんじゃねぇ。
殺すぞ
あいつの不倫写真撮っといてよかったぜ。
結局きたねぇ奴ばっかだな。
クソ。
暴力団?
つまんねぇから舐めた。
何処行っても俺は俺。
俺に歯向かう奴は殺す。
それは変わんねぇ。
何笑ってんだ。気持ち悪ぃ。
もうなんか慣れて来た。慣れたくないが。
もうなんでもいい。クソが。
夜中にわざわざ呼び出しがって。
よりにもよって公園とか、一番さみぃじゃねぇか。
寒そうな服きやがって。風邪ひきてぇのかよ。
モジモジしやがって。
何か言いてぇなら早く言えよ。
そういうのが一番嫌いなんだよ。
は?俺のことが好きだと?
勝手にキモい感情抱いてんじゃねぇ。殺すぞ。
勝手にしろ、クソが。
喜んでんじゃねぇ。
跳ねんじゃねぇ。
つめてぇだろうが。クソが。
口についた雪舐めたら静かになりやがった。
俺に逆らうからだ、ザマァみろ。
いい気分だ。
大学受かったらくらいで泣いてんじゃねぇ、うるせぇな。
俺と同じクラスなってんじゃねぇ、殺すぞ。
また来年も一緒だと?
2度とごめんだ。
笑ってんじゃねぇ。黙れクソ。
あー…課題やってねぇ。
おい、課題見せろ。
は?AIにやらせろ?そんなのバレるに決まってんだろ馬鹿なのか?お前。
キレてどっか行きやがった。
アイツ本当に友達か?
まぁいい、おい、女。課題見せろ。
最近女といることが多い?
…偶然じゃねぇの。
浮気してねぇよ。
何泣いてんだよ。
たかがそんなことで泣いてんじゃねぇよ。
俺がそんな奴に見えんのかよ。
見える?
ふざけんじゃねぇ。
お前のそういうとこ本当にウゼェんだよ。
こっちこい。
お前は俺の女だ。何回言ったら分かんだ?
もういい、身体で分からせてやる。
女ってめんどくせぇ。
機嫌良くなってんじゃねぇ。気持ち悪ぃ。
おい、女。もう課題はいらねぇ。
着いてくんな。鬱陶しい。
おい、教授。俺に逆らうんじゃねぇ。
課題の内容教えろ。単位落ちるだろうが。
ニコニコするんじゃねぇ。
クソが。めんどくせぇな。
は?子供ができた?
勝手にできてんじゃねぇ。
クソ、菓子折り買ってくぞ。
インターホン鳴らしても出てこねぇ。
先ホテル行ってろ。来たら呼ぶ。
クソ、冷えるだろうが。早く行け。
親父と鉢合わせた。
クソ、殴られた。いてェ。
妊娠したって告げたらもう一発くらった。
…相変わらずすげぇいいパンチしてんな。
泣かせたら許さない?
当たり前だろ、クソ親父。
…もう一回殴れよ、クソが。
自然分娩は無理?ふざけんな。
お前なんのためにいるんだよ。
帝王切開?大丈夫なのかよ。
アイツはどうなんだよ。おい。
俺も入らせろ、おい。クソ医者。
待つしかない?クソが…手握るくらいはいいだろ。
ダメなのかよ。
女なんだから子供くらい無事に産めよ、クソが。
痛そうな顔すんじゃねぇ。
勝手にいなくなんじゃねぇぞ。
アイツ、大笑いしながら待っていやがった。
はぁ?クソっ…大袈裟?ふざけんなよ。騙しやがって。
これが赤子?ちっさぇな。
女?へぇ。
握ったら潰れちまうんじゃねぇのか?
ぎゃあぎゃあ泣いてんじゃねぇ。うるせぇ。
アイツと似たような顔しやがって。
気味悪ぃ。クソ。
泣いてんじゃねぇ、うぜぇんだよ。
「ありがとう」だって?当たり前だ。クソが。
昼飯休憩で弁当開けたらハートがあった。
なんだこれ、はーと…?あぁ、なるほど
わざわざ材料買いに行ったな。クソが。
愛妻弁当?ちげぇよ殺すぞ。見んなクソが。
話しかけんな、キモいんだよ。
酷いって言って泣きやがった。
ザマァ見ろ。
おい上司。
は?俺が悪い?クソが、なんでだよ
こっち見んな、クソ
気分悪ぃ、早く帰りてぇ
家帰ったらガキとアイツがいた。
ガキが二足歩行してる…、
やるじゃねぇか
おい、たかがガキが立てるようになっただけで泣くんじゃねぇ。
心配して見てんじゃねぇか。
てか、玄関で待ってたのか?何してんだコイツら。
馬鹿じゃねぇの。
風呂か?ご飯?テンプレみたいなセリフ言いやがった。
お前
顔赤らめんじゃねぇ、キメェな。
風邪ひくじゃねぇか。お前ら早くリビング行け。
中学生になった?早ぇな。
明日、授業参観だから来いって?
なんで行かなきゃなんねぇんだよ。
学校では変なことすんなって?
俺をなんだと思ってんだこのガキ
っていうか授業参観って親来るものなのか?
俺の親は来なかったな。
だがコイツは……
…クソが、いつだよ。
教室どこだよ、広れぇな。
おい、お前。1の4どこだよ。
は?連絡先?お前みたいなブスに教える訳ないだろ。
……
無理だ。早く教えろ。
どいつとコイツも鈍い奴ばっか。
もう始まってんじゃねぇか。
……後ろのドアから入るか
ガキどこだ。席ありすぎだろわかんねぇ
…懐かしいな、こんな感じだったか。
うわ、なんだ。いつの間に来てたんだ、アイツ。
ガキの発表のギリギリで到着しやがった。
ラッキー●ンかよ。
というか仕事早退してきたな。
私の家族?
聞いてねぇぞ。勝手に個人情報ベラベラと喋りやがって。
アイツあの頃からよく泣くよな。
涙腺脆くなったんじゃねぇか。みっともねぇ。
今日は学校早く帰るだと?
なら今帰るぞ。
一時限くらい居なくても大丈夫だろ。
腹減ってんだ。早く家帰って飯作れよ。
何話してんだ、2人でコソコソと。
俺が昔不良だっただと?しらねぇな。
おい、アイツ。
勝手に喋りやがぇて、クソ。口が軽りぃな。
なんだ、あの男。同級生?
走りながら体操着持ってきやがった。
変態か、違うか。
、わざわざ体操着を届けにきてくれた?
今日が金曜だから?
…すまん。けどしらねェよ
ガキの腹がデッカく鳴りやがった。
顔真っ赤にして硬直してんじゃねぇか。
アイツのこと好きなのか?お前。
叩くんじゃねぇ。いてぇじゃねぇか。
っていうかお前も腹減ってんじゃねぇか。
おい、男。お前も早く戻れよ。
そう言ったら馬鹿みたいに頭を下げやがった。
礼儀正しい奴。気に食わねぇ。
高校生になったのか。……早ぇな。もうか。
リビングに行くとアイツがいない。
いつもならキッチンにいんだが何してんだ。
便所か。
おい、大丈夫か。
血吐いてんのか、お前。
早く、救急車。
クソが…クソ…クソ
…最近元気ねぇじゃねぇか。
馬鹿みてぇに寝やがってよ。
おい、起きろよ。
ガキの飯は誰が作んだよ。
お前の顔、醜い顔になってんじゃねぇか
見てるこっちが気分悪いだろうが、殺すぞ。
女の癖に俺より先に死んでんじゃねぇ
いつもみたいになんか言えよ、おい。
俺に逆らってんじゃねぇぞ、
おい、起きろよ、ガキ。
弁当いらねぇのか。
毎日毎日寝坊しやがって。
俺でも起きてたぞ。早くしろ。
今日は学校行かない?何言ってんだ。
お小遣いを増やせだ?
図々しいガキだ。
俺に歯向かうのは20年早ぇ。
早く飯食って行け。
布団に丸まってんじゃねぇ。芋虫みてぇだな。
は?セクハラ?
え?胸触った?
胸あんのか。お前。
…いてぇ…殴られた
さらに機嫌悪くなってんじゃねぇ。クソ
4500円。
はぁ?ダメ?
5000円。
……6000円。
6100円。
分かった…8000円。
クソ…ハメられた。
次文句言ったら布団ごと丸めて学校へ送るからな。クソが。
は?彼氏?
ふざけんなよ、連れてこい。
そんな顔すんなって?怒ってねぇよ。クソが。死ね。
お前はあん時の…変態
めちゃくちゃ大きな声で否定しやがった。
うるせぇな。礼儀がなってない。
早すぎるだろ、別れろガキが。
クソ…仲悪くなっちまったじゃねぇか。クソが。
アイツがいればすぐ解決すんのかな…
殺すぞ、俺。まじで。しっかりしろよ。
明日ガキと話すか。
なんか、最近つれぇな。
歩きにくい。
ガキが。病院行けだと?
なんで俺が……クソ泣くんじゃねぇよ。
俺は死なねぇよ。
早くタクシー呼んでこい。
ガキが、俺の前で泣いてんじゃねぇ。
何もないだと?ほら、言った通りじゃねぇか。
お前もアイツに似て泣き虫だな。
いってぇ…暴力は無しだろ。
多分、なんとなくわかった。
寿命だな。少し早いが。
死ぬのか、俺は。
悔いはないが、ガキの彼氏だけが心残りだ。
おい、こっちこい。
よく聞け、ガキ。
アイツは気に入らないが礼儀はなってる。礼儀だけはな。
気にくわねぇが悪い奴じゃなさそうだ。
だから、アイツに言っとけ。
泣かしたら殺すぞ。
何泣いてんだよガキがよ。
遺言みたいなこと言うなって?ちげぇよ。クソが。
あの医者、最後までクソ医者だったな。
なんか、ボヤボヤしてきた。クソが。
彼氏も来てんのか、面も見たくねぇ。
ガキが、ちゃんと飯食えよ。
怪我すんじゃねぇぞ。
なんだ、ここ。
三途の川じゃねぇな。花畑?
走馬灯ってやつか。
へぇ…ほんとにあったのか。
花畑って俺に合わねぇな
は?アイツ、
そこには見慣れた後ろ姿があった
俺は思わずアイツの元へ走る
お前…
何勝手に死んでんだよ。
ガキが心配してたろ。クソが。
ずっと見てたって?
勝手に見てんじゃねぇ。きめぇな。
早く行くぞだって?
ふざけんな
主人公は俺。
口答えすんな、殺すぞ。
逆光
虚像と錯覚しそうなほど、深い闇を見つめていた。
「…死にたい」
1人の少女がそう呟いた
すると暗い路地裏からゆっくりとこちらへ向かう足音が聞こえた
「あっ、あの……っあの」
【生きてください】
書かれた1枚のメモを手渡す
それはまるで学生が異性に告白をする光景のようだった
「愛の反対は死だと思う?」
そう投げかけた質問の意味がわからず彼は首を傾げる
「きみが………そっ、う思う。りっゆうは知らっ、ないけ…ど……げ……原因は…っ、何なのか…し、し…調べるべきだと思う…」
「…っきみが、“死にたい”…ど、っとと言うのが」
「俺は…よく…わ、わっ…か」
目の前にはよく知らない男の人
何かを必死に伝えようとしている
この人になら
最後くらいなら話してもいいと勝手に口が動いた
「…殺したい」
ずっと、深く奥に沈んでいた心の声
思っていたりよりその言葉は軽く言えて
同時に死ぬことへの決心が深まった
少女は求めるように両手を差し出す
彼は如何を問わず少女を抱きしめた
「ねぇ…なんであの時私に声をかけたの?」
【寂しそうな顔をしてたから】
「…そっか」
西宮可奴
人の目を過度に気にする女の子。
好きな人を殺してしまい、思わず家から飛び出て冷静になった後罪の重さから自殺をしようとした。
東野傳次郎
吃音でいじめられてきた経験があった為、メモで会話をする。
フリーの一般人。お金はない。
自己肯定感は高いので生きたいと願うが自分が好きではない。
多分2人でどっか遠くで幸せに暮らしてる。