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同情


彼は作品が特徴的すぎると有名な彫刻家

あまりにも独特すぎるが故に、商品が売れていない

普通のものを作ればいいものを

断固として、自分の世界の作品を作り続けている

逆に欲しい、とも一時期言われていたが

それも一時の風

薄い壁で取り付けられた興味はすぐどこかへ飛んで行った


「…またそんな服ばっかり着て、少しはオシャレしたら?」

君は、人の気も知らずにズカズカとドアを開けると呆れ気味にため息を吐いた

「作務衣の何が悪いのさ」

「悪いも何も、貴方は私の幼馴染なんだから一応人目は気にしてほしいんだよ」

「周りから職人って言われてるの知らない?」

職人、という言葉は聞いてて心地が悪い

売れていない自分に対しての皮肉なんだろう、そう気付くのには時間はかからなかった

「さっきから疑問文で話すのやめてくれないか、頭が痛くなる」

「はぁ……」

彼女は何度吐いたか分からないため息で部屋を見渡す

部屋はぐちゃぐちゃで、そこらに道具が落ちている

大学の空き部屋を使っているせいか日当たりも悪い

その目には、趣味の悪そうな彫物が置かれているように見えているのだろう

彼女は部屋の中心にある彫刻を見つめた

形が歪な、長身の女性

目は作成途中なのか顔はのっぺらとしてして、口は笑っている

下半身には女性らしいふっくらとした体の丸みが垣間見えた

「綺麗ね」

「行き過ぎた芸術は理解されない、とでも言うのか」

僕の言葉を無視して、彼女は濁りの無い眼で見つめる

モデルは君だ

そう言ったら君はどんな表情をするだろうか

きっと、御籤で凶を引いた、そんな顔をするに違いない

コツコツ、とヒールの音を鳴らしながら耳に髪をかけるアイツが少し色っぽく見えて、思わず顔を逸らした

「……なに?」

「べつに」

彼女は怒って、それか呆れて部屋を出ていってしまった

視界に写ったその瞳には、

僕がどんな色で見えていたんだろうか

2/21/2024, 9:42:32 AM