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11/26/2023, 1:49:23 PM

 微熱の定義を調べたが、特に決まりはないようだ。
 
 感染症法によると37.5度が“発熱”で、確かにそこを超えると出勤や入館がアウトになることが多い。
 さらに38度で“高熱”になるようだが、こちらの数字にはどうも違和感がある。発熱したら易々と超える人が多いのではないか。
 「高熱が出て」と休む理由には使えそうである。

 微熱の定義はないものの、自分の中ではなんとなく37度を超えたら、という感覚がある。上はコロナ禍前までは37.7度くらい、今は規定に沿って37.5度未満。気分的には37度を超えると半病人、38度で病人になる。

 ただ平熱が35度台の人にとっては37度台でもかなり体温が高い状態なので、数字で切ってしまうのも本当はおかしな話ではある。一人ひとりの平熱を確認することは難しいのでやむを得ないのだが。

 ところで、老いも若きも男性が「具合が……熱っぽい……」と重病人の顔で訴えてきた場合、体温を測ると37度にすら到達していないケースが散見する。以前から不思議に思っていたが、これもきっと平熱が低かったということなのだろう。

 
『微熱』

11/26/2023, 12:12:38 AM

 およそ野外とは縁遠い生活を送っている私が今夏、訳あって久しぶりに田んぼの畦道を歩いた。
 太陽の下、日に焼けると心の中で何度も呟きながら。

 まだ青い稲の根元には茶色いカエルたちが潜んでいた。泥水で半身浴状態のカエルは動くものの気配を感じるとピッと跳び、小さな波紋だけ残して姿を消す。見失うとなぜか逃げられた気分になった。

 カエルですら干からびないよう水の中にいるのに……。

 太陽に当てられて疲れきり、靴に土がつくのを気にしながら黙々と歩く。ふと、むかし裸足で入った田んぼの泥が生ぬるかったことを思い出した。


『太陽の下で』

11/25/2023, 1:42:22 AM

 アグリーセーターとは、欧米で母親や祖母が子どものために編むクリスマスモチーフのセーターを指す。赤や緑のどぎつい配色、鎮座するサンタやトナカイたち。
 プレゼントされて着ざるをえない子どもたちの悲哀を込めて、アグリー(ダサい)セーターと呼ばれる。

 日本でいう「おかんアート」を彷彿するが、こちらは一応実用品である。
 欧米ではもはやジョークのネタになっており、ホリデーシーズンには大人もあえて身につけて楽しむ。
 現代では手編みをする人が少ないので、アパレルメーカーがわざわざセンスの悪いセーターを作って売り出している。イケてるアグリーセーターを考えているデザイナーがどこかにいるのだ。

 最近、その文化は日本にも入りつつあるらしい。しかし、まだまだ浸透していないうえ、日本人の性質上「お洒落のつもりだったら突っ込むのは失礼」と気を遣われて、ただそこにいる派手なセーターの人になる可能性がある。
 ちなみに12月の第3金曜日はアグリーセーターの日となっており、今年は12月15日である。


『セーター』

11/24/2023, 1:36:36 AM

 気分が落ちていくのが自分でも分かるとき、上げようと努める人と落ちていくのに任せる人がいると思う。
 自分は後者である。
 根っからのネガティブで自らを鼓舞する気力が湧かない。
 落ちるところまで落ちて、どんよりした気分に浸りきる。反芻する。味わう。
 落ちるきっかけは自分自身の失敗であることが多く、思い返しては「アッ」と小さく声が出たりする。
 大失敗だとしぜん声も大きくなり、家の中で「アーッ」とのたうったあとに窓が開いていることに気づくのもよくあること。
 立ち直るきっかけは特にない。沈みきったところから徐々に浮上していくのを待つ。
 沈む深さは事案によるが、無駄なあがきはせず、ただ落ちていく自分を感じていたほうが、むしろ浮上の時は早まる気がするのだ。


『落ちていく』