どうしてこの世界はこんなにも美しいの
毎日、眩しくて堪らないわ。あまりにも綺麗で、まるで天の國に居るみたい。眩暈がしそうなほどに、すてき。
でも、私はこの世界あまり好きにはなれないの。だって、私が更に醜く見えるんだもの
隅にある、ちいさな花瓶を意味もなく一瞥した。花瓶にはこの世界にぴったりな、真っ白でみずみずしい百合の花が刺してあった
ああ、厭だ。死んでしまいたい
先端が赤くぬらぬらと光っている包丁を固く握りしめて、親友がこちらにゆっくりと近付いてくる。
1歩、2歩、3歩、と。
僕は息も絶え絶えで、引き攣るような息を繰り返しながら、ひたすら逃げ回るだけだった。
「んふ、君は、僕の親友だから、最後にしてあげようと思ったんだ。僕は君のことがだいすきだから、ゆうっくり快感を味わって欲しいんだ」
一言づつ区切りながら喋る彼は不気味で、体のうちから喜んでいることが分かる。まるで夢見る少女のように、頬が朱に染まっていて、気味が悪い
彼が僕の間合いに入ると、そっと僕の首にナイフをあてがって、乙女のように笑った
「ね、ね、行こう?」
そういう彼女の額には、うっすらと汗が滲んでいた。すかさず、私も
「うん、うん、」
と言った。最低限の荷物を鞄に詰めて、彼女の手をしっかりと握る。彼女も、私の手を握り返してくるので、私は更に強く握った。私の真横で、くすくすと笑う気配が手のひらから伝わる。
「じゃあ、行こう」
彼女が囁くように言った言葉は、ふたりだけの逃避行の、開始の合図だった。
私には幼少期からの友人がいるのだが、最近久々にあったら、少し様子が変に感じた。
どうやら、人を殺してしまったらしい。私は最初、それを冗談だと思って気にもとめなかったが、後に再度話を聞くとどうやら本気らしかった。
「はあ、なんでそれを僕に言うんだ!」
「お前しかいなかったから。すまない...」
即答する彼に私は呆れ返ったが、結局、彼は私のことが好きだし、私も彼のことが好きなので私は最初から犯罪に加担する他なかったのだ。
じゃあ、そろそろ行くわ
うん、また向こうで逢おうね、絶対よ?約束ね?
清潔感が溢れる真っ白な部屋で、彼女はそう囁いた。
優しく僕を抱く彼女はきっと世界でいちばん美しい。
彼女は満足気に笑った後、目をつぶった。
そして僕を抱擁していた彼女の腕は、次第に緩くなっていき、最後にはだらんと力尽きた。
早く彼女に逢いたい。彼女の笑った顔がみたい。けど、直ぐにあいに行けば、きっと怒られる。だから我慢だ。何十年後になるかは分からないけれど、きっと再会できるだろう。彼女と堅く約束したのだ。
まだ、彼女の声が耳元で聞こえるような気がした。僕の中にいる彼女は何度も口ずさむ。僕は、彼女の言葉に耳を傾ける
よみの國であいましょう。