我ら魔法使いの在り方を巡る魔法大戦の最中
貴方は氷の魔法に当てられて氷塊となった
まだ魔法を使うことができなくて
恐怖に竦み動けなくなった私を庇ったせいだった
ずっと後悔していた
私がいなければ、貴方をこんな姿には
でも、やっと魔法を使えるようになったんだ
それで最初の魔法は貴方に使うと決めていた
小さな愛の魔法、身代わりの魔法を
これでやっと貴方を解放できる
私は貴方の頬に触れて目を閉じた
少しずつ貴方の氷が溶けて体温が戻っていく
それと同時に、私の手足は徐々に氷に覆われていく
思っていたより寒くない
貴方がいない方がよほど寒かったもの
薄れゆく意識の中、私はあの日のことを思い出す
氷に覆われる寸前、貴方は何かを囁いていた
私はその言葉をずっと知りたかった
願わくば、貴方が目を覚ましたその時
最期に囁いていた言葉を教えてほしい
魔法使いになりたい
それが私の子供の頃の夢だった
楽しい魔法で人々を笑わせて
美しい魔法で人々に感動を与えて
安らぎの魔法で人々を幸せにしたかった
それなのに今は
誰かを想う純粋な心を忘れて
自分自身が楽になりたい願いだけ
誰かを救う立場になれなかった
嫉妬や恨みに囚われて
幼き日の自分を裏切って
ただ救われたいと祈る
堕落した人間に落ちぶれてしまった
静かに輝く星空の下で
幸せだった頃の夢を見る
ただ暖かい光の中を生きていた
儚い幻のような過去の記憶を
ねぇ、もう元には戻れないよ
光の中を歩くには
心は恐れを知りすぎたみたい
ごめんね
幸せを望んでいたはずなのに
痛みと悲しみに囚われて
でも、最期は少しだけ幸せだったよ
美しい月明かりに照らされて
寂しさを忘れて眠ることができたから
愛する人を失って
希望も居場所もなくなった
でも、どうしてこの世界は
こんなにも美しくて、儚くて
たとえ貴方がいなくても
離れがたいと思ってしまうのだろう
「きっとまたこの場所で」
そんないつかの約束も
瞳を合わせて笑い合った日々も
全てが瞬きの間に過ぎ去ってしまった
温かい灯火が消えてしまうみたいに
何もかもが思い出になって
きっと貴方も
あの時に交わした約束なんて
もう覚えてはいないのでしょう
どうか忘れないで、約束だよ、なんて
貴方がそう言ってくれたのにね