私には愛した誰かがいた
遠い昔のことなのか
つい昨日までのことなのか
まるで思い出せなくて
その誰かは夢の中で
私に手を差し伸べてくれたけど
その顔は逆光に照らされて
面影すらもわからなかった
何もわからないままなのに
なぜかひどく懐かしくて
同時にとてつもなく悲しく思えた
なんだか心がざわざわして眠れなかった
まるで息をしているだけで罪を犯しているような
心当たりのない罪悪感に苛まれながら
寝返りをうってはため息を吐く
居ても立ってもいられなくなって
私は長らく閉ざされた日記を開いた
言いようのない感情を無我夢中で書き殴って
ふと読み返してみると
私は何の罪も犯していないのに
全ての人間が私を嫌っている気がして
私は誰にも愛されないんじゃないかって
夢を見ていた
暖かい陽だまりの中で
かつて冒険を共にした貴方と
一緒に旅をする夢だった
それが現実ではないことはわかっていた
刹那の幻想に迷い込んで
二度と叶わない願いが届いたみたいで
ずっとこのまま覚めなければいいのにって
また叶わない願いを抱いてしまう
でも、もう終止符を打たなければ
もう二度と貴方に会うことはできないのだから
外はすごい大雪で睫毛の先にまで積もるほどだ
白く凍てつく空気に体の末端が酷く痛む
けれど私はベンチに座ったまま動けないでいた
なぜなら今日は大切な約束の日だったからだ
数日前、私はあの人に想いを告げた
そしてこの気持ちに応えてくれるなら
今日この日、この花園に来てほしいと
私はいつまででも待つつもりだった
もしかしたら来てくれるんじゃないかって
少しの期待と不安を抱いて寒さなんて感じなかった
あたりは次第に暗くなっていく
この場にいるのはひとりだけ
もうとっくにわかっていた
無駄だとわかっているのに足が動かなくて
寒さが身に染みて、心まで凍ってしまったように
大好きな貴方の視線の先には
いつも青いドレスを着たあの人がいた
美しく儚げで目を離したら消えてしまいそうで
私がどれだけ可愛らしい衣装を着て
どれだけ貴方にアピールしても
あの人に与えられた愛の一欠片さえ
私に注がれることはない
ふと顔をあげると目に入るのは凍てつく鏡
そこに映るばかみたいに着飾った自身の姿
なんて醜いんだろう
あの人に勝てるはずがない
私は瞬間的に鏡を叩き割って
バルコニーに飛び出して月を見上げた
私にとってあの人はまさに月のような存在
あんなにはっきりと光り輝いて見えるのに
手を伸ばしても、決して届くことはないの
あの人に恋をした貴方の心も
決して私のものにはできないの