Lacryma

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10/13/2025, 5:00:59 AM

「本当にどういうつもりなのかしら」

「だって、いつも私の邪魔をしてくるのよ」

そうぼやく貴女は、いつもどこか楽しそうだった

端から見れば恋人への愚痴に聞こえるが

それがただの惚気であることを私は知っていた

結婚式はいつになるのだろう

貴女の話を聞きながら、毎回そんな風に考えていた

だから、彼の訃報が届いたとき

それが現実であると信じたくなかった

月のない夜、貴女は私を呼び出して

隣に座って、ただ夜空を眺めていた

「あの人はどこまでも私を苦しめるのね」

静かに呟く貴女は泣いていた

貴女の左手の薬指には

眩いほどに輝く綺麗な指輪がはめられていた

9/29/2025, 9:45:05 AM

貴女は人間で、私とは何もかもが違う

それでも貴女は私を怖がったりしないで

ずっと側にいて、仲良くしてくれた

初めて会った日から、もう何年経っただろう

私より少しだけ高かった背も小さくなって

あの頃のような元気もなくなってしまった

ここ最近はずっと寝たきりで

もう歩くこともできなくなったのね

こんな日が来ることはわかっていた

だって、貴女の寿命は私よりずっと短い

いつかはいなくなってしまうんだって

でも、それが今である必要はないでしょう?

永遠なんて、ないけれど

もう少しだけ、貴女と過ごす時間がほしいの

あの日、優しく微笑みかけてくれた貴女の温かさを

何千年先も、ずっと覚えていたいから

9/25/2025, 1:18:52 AM

本当に幸せな日だった

素敵なドレスで舞踏会に参加して

王子様と踊ることができたのだから

これからどんなに虐げられて

見下されて、ボロボロになっても

今日という日を思い出すだけで

きっと希望を持って生きていける

私は魔法のような一時に別れを告げて

城から飛び出して必死に走った

時計の針が重なって鐘が時を知らせる

私にかけられた魔法は徐々に解けて

夢から覚めたように全てが消えていく

やっとの思いで屋敷に辿り着いた時

私は片方の靴を落としたことに気がついた

9/22/2025, 1:11:29 PM

曇天が覆う世界の隅で

最期の考え事をする

思えば、待ちぼうけの人生だった

誰にも愛されず

誰からも認められない

誰も来ないとわかっていながら

私を迎えに来る誰かのことを

ずっとずっと待っている

でも、これでもうお終いなのね

幸せにはなれなかったけれど

もう終わりで構わない

視界は次第に暗くなっていく

強い眠気に身を委ね、目を閉じる

結局、私を迎えに来てくれたのは

涙と永遠の眠りだけだった

9/21/2025, 7:55:42 PM

雨の降る街の中、私たちはカフェにいた

話を聞いてほしかった

何も気づかないフリをして

愛をくれた人を邪険にして失ったことを

どうすれば、またあの人に会えるでしょうか

私がそう話すと、貴女は静かに呟いた

虹の架け橋を渡ると、大切な人に会えるのだと

そんなことできるわけがないと返すと

貴女は窓の外を見て、ただ悲しげに笑った

「そう、虹を渡ることはできない」

「失ったものは、もう二度と戻らない」

心が締め付けられるように痛くなった

雨は止むことなく酷くなっていく

本当はずっとわかっていた

後悔するには遅すぎたのだと

今さら何を願ったところで叶わないんだって

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