惰眠

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11/26/2023, 4:12:03 PM

微熱

君がそばにいると、なんだかわたしは変になる。
かすかな熱が体内を駆け巡った。やがて落ち着くと、じんわり広がり溶けていく。木漏れ日に照らされ、心地良さげにまどろむ君から、目が離せない。

君がそばにいると、いつもわたしは熱をだす。
頬に耳元、首筋までもを赤く染めあげる。林檎みたいになったわたしを、ふふっと笑って撫でてくれた。君は涼しい顔をしているのに、わたしだけなんてずるいよ。

この熱に、君も侵食されちゃえばいいのに。ずっと一緒にいられるから、はやくふたりで溶けちゃいたい。

8/1/2023, 5:05:10 PM

明日、もし晴れたら
 
 夏が泣いていた。
夏なのに、秋雨のように冷たい涙を流していた。

 プールに入りたがった子供は、悲しさに顔を歪ませている。あの女子高生は、げんなりとした様子でうねった髪を気にしているし、あの男性はおろしたての靴が汚れたようで苛立っている。

 僕は、ここのところ頭痛が酷かった。

 いつも明るい夏が泣いていた。普段はうんざりするほど暑苦しい奴なのに、こんな姿を見てしまうとこっちまで悲しくなってしまう。それに毎年こうなんだ。

 だけど明日、もし晴れたら。

 きっとみんなの心にも陽が差すだろう。すると、太陽にも負けないくらい眩しい笑顔であふれるんだ。

 あの子供が元気に泳いでほしい。女子高生は、さらさらとした髪を風でなびかせて。ピカピカになった靴でいきいきと歩いている男性も。

 僕はアイスにかぶりつくだろう。つい食べすぎてしまうから、結局のところ頭痛薬は手放せないだろうけど。

 そうして僕たちを明るく照らしてほしいんだ、明日こそはね。
 まだ夏は始まったばかりなんだから。

6/18/2023, 4:50:34 PM

落下

 落ちていく。
 深淵に吸い込まれるように、辺りいちめんの闇に飲み込まれるように、黒に侵食されていくように、落ちていく。

 今の時間も、左も右も分からない空間のなか。決して動かない身体が、下へ下へと落ちていく。
 まだ光は見えない。けれどきっと君は近くにいて、僕を待ってる。信じているよ。

 僕たちを繋ぐその糸は、まだ切れていないはずなんだ。きっともうすぐ、辿りつくはずなんだ。

 啜り泣く君の声が聞こえてきて、僕は早くその涙を拭ってあげたいと思った。
 今度こそ離さないって、伝えたいと思った。
 君のもとへ落ちてきたら、全力で抱きしめてね。

3/27/2023, 8:17:18 PM

My Heart

桜の木の下に埋まっている。
わたしのココロはそこにある。

桜の木の下で、君に想いを告げた。
君は笑って、わたしを地面へ押し倒した。
どうしてか、君はわたしに土を被せていた。

春は、わたしにだけ来なかった。

わたしのココロを、土越しに誰かが踏みしめて
「はいチーズ」という声の後にシャッター音が鳴る。

きっとここは一面、春景色。

桜の木の下で眠る、わたしのココロ。
出会いと別れの春の下で、静かに、静かに眠っている。