あの頃は 、 眩しい太陽が好きでは無かった 。
まとわりつく熱気
幼い身体中を容赦なく駆け巡る温度
なのに寒くなると全く助力してくれない
暑くて 、 眩しくて 、 役に立たない 。
こんな明るさ 、 いらない 。
そんな風に思っていた 。
「 belle personne ( 綺麗な人 ) ……… 」
恩人に出会うまでは 。
「 その調子ですわシトロン ! 段々と上達していますわね ! 」
「 うん ……… じょ 、 うたつしてる 。 」
その人はとても綺麗で 、 私と同じフランス人 。
日本語がすごく上手 。
日本について何も知らなかったわたしに 、
様々なことを教えてくれた 。
おかげで 、 日本語や文化に詳しくなれた 。
日本のことが好きになれた 。
「 シトロン 、 少し宜しくて ? 」
その人はお洒落が大好き 。
だからわたしも段々とお洒落が好きになった 。
「 きゃ〜っ ! やっぱりとても似合ってますわ ! シトロンには絶対にこの服が似合うと思ってましたの ! 」
「 きれい ………… ありがとう 、 セルリアさん 。 」
ふわりと舞い踊るスカートに 、 所々にあしらわれたフリルに 、 可愛らしいリボン 。
本当にかわいくて 、 お揃いコーデで 、 嬉しかった 。
何よりこの人が 、 わたしを見て笑顔でいてくれることが嬉しかった 。
本当の親子になれたみたいで 。
窓から射し込む太陽の光は 、
わたしが嫌いだった太陽の光は 、
彼女を照らす柔らかい光に見えた 。
ああ 、 やっと理解した 。
太陽の光は 、 この人の笑顔を見るために 。
この人の為に 、 あるんだっていうこと 。
- やわらかな光
- シトロン・テュルクワーズ 、 天ヶ崎セルリア
( 友情出演 )
危機管理能力が低い 。
精神年齢が幼い 。
書類仕事が苦手 。
寝てばかり 。
まるで犬 。
こんな特徴ばかり連ねられる人間が
とある組織の首領だなんて夢にも思うまい 。
それでも彼にも " 首領 " らしい所はあるのだ 。
「 んで 、 今日はどこ ? 」
組織の一室 。
1つの机を隔て 、 向かいに立つ親友に尋ねた 。
親友は軽くため息を吐いて 、
「 6丁目の最近噂立ってきてる所ですねェ 。 色々とやってくれてるらしいですよ 。 」
と呆れ気味な表情を見せた 。
「 あ〜 ………… あそこかぁ 。 」
頬杖をついて 、 少し物を考えた 。
「 よし 、 早いとこ片付けよう ! 」
『 ここに来てから1週間 、 順調に事が進んでる 。 』
『 ああ 、 だが油断はするんじゃねぇぞ 。 』
「 そうそう 。 いつ敵が乗り込んでくるか分かんないからね 。 」
ふわり 、 音も立てずに静かな部屋に現れる 。
小さなグループの人数はそう多くない 。
その全員が 、 声を発するまで " 敵 " の存在に気が付かなかった 。
『 ッ!? 』
「 あれ 、 ようやく気付いた ? 」
椅子に座ったまま立ち上がろうとしない男に 、 グループの人間は戸惑いを隠せないでいた 。
しかし 、 頭の 『 何してる ! やれ !! 』 という声を合図に 、 一斉に動き出した 。
……… だがそれも 、 一瞬であった 。
「 君ら俺の存在にも気付けないくせに俺らの縄張り荒らそうとしてた訳 ? 目障りなんだけど 。 」
その真紅の鋭い眼差しを受け 、 再び動けなくなる 。
動けなくなった者共を見て 、 男 …… 首領は大きなため息を吐いた 。
「 はぁ〜 …………… つまんな ! もういいよ ! 」
その声を合図に 、 首領の右脇から大量の銃弾がグループの人間を襲った 。
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「 文句言う訳じゃ無いですけど 、 何で自分でやんないんですかァ ? 」
「 だって 、 俺がわざわざやんなくたって明来くんで充分だったじゃん 。 」
血溜まりに這い蹲る1つの気配を
銃弾が貫く音が響いた 。
- 鋭い眼差し
- 紫檀極 、 明来 ( 友情出演 )
もっと高みを目指さなければ 。
首領の役に立てるように 。
「 ……… ま 、 ンな事これっぽっちも思っちゃいねぇけどさ 。 」
木刀を振る 。
静かなトレーニング室に空を切る音が響く 。
高みを目指しているのは本当だけれど 。
「 …………… 」
部屋の隅でトレーニングをただ眺める少年が 、
幾度かの空を切る音の後に口を開いた 。
「 首領のために強くなろうと思わないのか ? 」
暗く沈んだ深海の底のような瞳を向けて
質問の答えをひたすらに待つ 。
やがて振っていた木刀を止め 、
乾いた音を立てて剣先を床に当てた 。
「 勿論 。 」
良い笑顔だった 。
「 首領のためじゃねぇ 、 俺のためだ 。 」
少年は黙ってしまった 。
下を向いて 、 何かを考える 。
しかしその時間はあまり長くは無かった 。
「 俺は ……… 強くなりたい 。 首領のために 」
これまでに無い程 、 真っ直ぐな目で 。
その瞳は 、 太陽の射し込む海の色だった 。
「 ……… そうか 。 じゃあ特訓するしかねぇな 」
狂犬は笑う 。
木刀を少年の方に投げた 。
「 高く高く昇って見せろ 。 そうじゃなきゃ首領にゃ届かねぇぜ 。 」
- 高く高く
- 山吹シュヴェールト 、 柑子浅葱
子供のように 。
子供のように 、 幸せを願った 。
子供のように 、 ひたすらに 。
夢中になって 。
「 今日は何をお話に来たんだい ? 」
柔らかい笑顔をその顔に称え 、
今日も仲間の …… " 家族 " の話を聞く 。
家族の心を支えるのが私の幸せだから 。
子供のように 、 笑う 。
しかしその笑顔は子供のようではない 。
何処か 、 寂しそうな 。
純粋な笑顔ではない 。
それでも 、 ひたすらに 、 子供よりも
子供のように 、 1つの事を願い続ける 。
皆の幸せを 。
望まれていないかもしれないなんて 、
考えたこともない 。 だから 、 ただの自己満足
だなんてことも考えない 。
皆の幸せが私の幸せだから 。
" 子供 " を経験しなかった彼女が大人になった今
その姿は 、 性格は 。
家族の誰よりも " 子供 " なのかもしれない 。
それでも彼女は今日も聞く 。
「 いらっしゃい 。 今日はどうしたの ? 」
- 子供のように
- 水縹天