気づいた時には、頭から離れなくなってた
違う、思い込みだ、
何度もそう思おうとした
だって、そうじゃなきゃ、おかしい、
離れることはなく逆にそのことで頭がいっぱいになった
変に意識して、普段通りがわからなくなった
何も悪くないあの子達を妬んでしまう自分に、
どちらかに決めきれない自分に、
またひとり抱え込んでしまう自分に、
嫌気がさす
だれも、なにも悪くない
ただ自分だけが悪いのだ
だから、この思いはここで消化する
まだスタートラインにすら立てていないから、
その場に立つことなく済むように、
息を潜めていてくれ
この■■よ
【誇らしさ】
ちょいとこのお題は難しかったのでやめて、別のお題で書きました
このアプリ家族もやっているので、どうか見つからないことを祈ります
四角に入る部分は想像にお任せします
「...ぅお''ぇっ」
日付を跨いでから早一時間。仲間に酒場で浴びるように酒を飲まされたフーゴは、人っ子ひとりいない港町の端で、ひたすらに嘔吐していた。
「...気持ち悪」
はぁはぁと息を切らしてぽつりと呟いたそれは、口の中に残る吐瀉物に対してなのか、水面に写る自分の醜い顔に対してなのか、はたまたその両方なのか、本人以外知る由もなかった。
視線を少し上げ奥にずらすと、水面に映る月が、キラキラと輝いていた。
今日は満月か
そんなことをふと思いながら、持っていた水筒の水で口をゆすぐ。
そうしてしばらく夜の海を眺めていると、酔いもだんだんと覚めていった。
帰るか、と思い立ち上がると、急に動いたからか、少し目眩がしてふらついた。
「いてて」
と小さくもらし、帰路に着いた。
家に着くあいだ子守唄というべきか、幼い頃、顔も覚えていない母親が歌っていた名もない唄を唄って歩いた。
街から離れた場所にある古びた灯台の家の窓辺に座ると、夢心地の目で満月を眺め子守唄を唄い、フーゴは眠りについた。
【夜の海】
いいよね、あんたは自由で。
現代には珍しい、古臭い家の長女として生まれて17年。
“蝶よ花よ”と、それはそれは甘やかされて生きてきた。
何をねだっても何を嫌がっても、望み通りにしてくれた。
小さい頃はそれでよかった。
好きなことを沢山して、嫌なことを避けて、いい事しかないと思っていた。
だけど、そんな都合のいいことではなかった。
高校生にもなったというのにどこへ行くにもGPSが仕込まれていて把握され、友達との連絡も筒抜け。その友達も両親に言われた人達。バイトも部活もできない。恋愛なんて以ての外。食べる物も、着る服も、全ての私の行動は、あの人達が選ぶ。
― 過保護
この言葉が何度も頭に浮かんだ。
ほんと、うざったい。
枕に顔をうずめて、小さい“つ”にできる限りの力を込めて呟いた。
話はずれるが、私には極々身内の人間だけしか知らない双子の妹がいる。
双子は縁起が悪いだのなんだので、生後間もない頃、当時まだ子供のいなかった叔母夫婦の養子にされたそう。
17回目の誕生日を迎えたのが昨日。
魔が差して妹達の住んでいる住所を特定したのが昨晩。
初めてあの人達に内緒で出かけたのが今朝。
幸いにも私達は一卵性双生児で顔がそっくり。
改札を抜け10分程で妹と思わしき人物をみつけた。
妹は、楽しそうに、恋人と歩いていた。
ぷつん、と何かが切れる音と、鈍器で脳を直接殴られたかのような痛みが走った。
は?え?笑
なんであいつは笑ってるの?
口から漏れ出た「…は?」が自分でも驚くほど震えていた。
ズカズカと歩み寄り、自分と同じ顔をした妹の、ぽかんとした表情を無視して、憎いこいつの胸ぐらを掴んで、酷く歪んだであろう顔で、叫んだ。
「っあんたなんかだいっきらいっ!!!!」
【蝶よ花よ】
そう
あぁ、なんだ、“最初から決まっていたと”いうことか。
はっ、と自嘲する僕の声が狭い部屋に消えていった。|
そこまで打って手をとめた。
我ながら文才が無いものだ、と改めて痛感するお題だ。
いや、文才だけの問題では無い。
アイデアも、経験も、思考力もなにもかもがたりない。
動かない画面が暗くなり、変わりに醜い自分の姿が映し出された。
髪はボサボサで目元には隈、着ている部屋着はヨレヨレの、
なんとも覇気のない姿に軽く吐き気を覚えた。
―こんなはずじゃなかったのに
偶然にも今の姿が、先程まで綴っていた物語の人物と重なっていた。
これも、最初から決まっていたのかな。なんて
乾いた笑い声をもらし、僕は再び画面と向き合った。
【最初から決まっていた】
太陽に近づきすぎた男は翼をもがれ、地に落とされた。
父さんとともに幽閉された僕は
父さんの作った蝋で固めた翼で空を飛び、脱獄した。
牢獄からでることができたことと、空を飛んでいることで高揚した僕は
-太陽に近づいてはいけない。
そんな父さんの忠告を無視して太陽に近づいた。
雲を何度も突き抜け、胸いっぱいに空気を吸う。
翼をバサバサと動かし上へ上へと飛んでいったとき、
「やめろイカロス!」
そう叫ぶ父さんの声も、もう耳には入ってなかった。
なんって!素晴らしいんだ!!
例えこのまま本当に死んだとしても、構わない。
まるで恋焦がれる少女のように、そう思った。
あと少し、あと少しで太陽に届く!
熱くない、、熱くない!
ジッ
手を伸ばしたとき、短くきこえた。
手など、とうに焼け焦がれていた。
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い!!!
つい先程まで熱さだって感じなかった。なのになぜだ。なぜ
のどがヒューヒューと音を立てている。
蝋が溶けたのか、背中に激痛が走った。
翼も焦げ落ち、一気に落下していく。
-嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやっー......
ぐぢゃ
なんとも不愉快な、身体が潰れた音を最期に
意識は途絶えた。
目が覚めると、どこをみても白一色の場所で座っていた。
ふいに下をみると、仰々しい本があった。
なにも無い空間になぜ本が?と疑問に思いつつ、引き寄せられるように手にとり、捲ってみた。
―太陽に近づきすぎた英雄、イカロス
俺が?英雄?
はっ、と鼻で笑い、クククとのどを鳴らして呟いた。
「バカばっか」
【太陽】