夢幻劇

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「...ぅお''ぇっ」
日付を跨いでから早一時間。仲間に酒場で浴びるように酒を飲まされたフーゴは、人っ子ひとりいない港町の端で、ひたすらに嘔吐していた。

「...気持ち悪」

はぁはぁと息を切らしてぽつりと呟いたそれは、口の中に残る吐瀉物に対してなのか、水面に写る自分の醜い顔に対してなのか、はたまたその両方なのか、本人以外知る由もなかった。

視線を少し上げ奥にずらすと、水面に映る月が、キラキラと輝いていた。

今日は満月か

そんなことをふと思いながら、持っていた水筒の水で口をゆすぐ。

そうしてしばらく夜の海を眺めていると、酔いもだんだんと覚めていった。
帰るか、と思い立ち上がると、急に動いたからか、少し目眩がしてふらついた。

「いてて」

と小さくもらし、帰路に着いた。

家に着くあいだ子守唄というべきか、幼い頃、顔も覚えていない母親が歌っていた名もない唄を唄って歩いた。

街から離れた場所にある古びた灯台の家の窓辺に座ると、夢心地の目で満月を眺め子守唄を唄い、フーゴは眠りについた。


【夜の海】

8/16/2024, 5:51:48 AM