夢幻劇

Open App

太陽に近づきすぎた男は翼をもがれ、地に落とされた。


父さんとともに幽閉された僕は
父さんの作った蝋で固めた翼で空を飛び、脱獄した。

牢獄からでることができたことと、空を飛んでいることで高揚した僕は

-太陽に近づいてはいけない。

そんな父さんの忠告を無視して太陽に近づいた。
雲を何度も突き抜け、胸いっぱいに空気を吸う。
翼をバサバサと動かし上へ上へと飛んでいったとき、
「やめろイカロス!」
そう叫ぶ父さんの声も、もう耳には入ってなかった。

なんって!素晴らしいんだ!!

例えこのまま本当に死んだとしても、構わない。
まるで恋焦がれる少女のように、そう思った。


あと少し、あと少しで太陽に届く!
熱くない、、熱くない!



ジッ



手を伸ばしたとき、短くきこえた。


手など、とうに焼け焦がれていた。

痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い!!!


つい先程まで熱さだって感じなかった。なのになぜだ。なぜ

のどがヒューヒューと音を立てている。


蝋が溶けたのか、背中に激痛が走った。
翼も焦げ落ち、一気に落下していく。

-嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやっー......



ぐぢゃ



なんとも不愉快な、身体が潰れた音を最期に
意識は途絶えた。







目が覚めると、どこをみても白一色の場所で座っていた。
ふいに下をみると、仰々しい本があった。
なにも無い空間になぜ本が?と疑問に思いつつ、引き寄せられるように手にとり、捲ってみた。


―太陽に近づきすぎた英雄、イカロス


俺が?英雄?
はっ、と鼻で笑い、クククとのどを鳴らして呟いた。



「バカばっか」



【太陽】

8/6/2024, 1:06:40 PM