夢幻劇

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いいよね、あんたは自由で。




現代には珍しい、古臭い家の長女として生まれて17年。
“蝶よ花よ”と、それはそれは甘やかされて生きてきた。
何をねだっても何を嫌がっても、望み通りにしてくれた。

小さい頃はそれでよかった。
好きなことを沢山して、嫌なことを避けて、いい事しかないと思っていた。


だけど、そんな都合のいいことではなかった。



高校生にもなったというのにどこへ行くにもGPSが仕込まれていて把握され、友達との連絡も筒抜け。その友達も両親に言われた人達。バイトも部活もできない。恋愛なんて以ての外。食べる物も、着る服も、全ての私の行動は、あの人達が選ぶ。

― 過保護

この言葉が何度も頭に浮かんだ。




ほんと、うざったい。


枕に顔をうずめて、小さい“つ”にできる限りの力を込めて呟いた。



話はずれるが、私には極々身内の人間だけしか知らない双子の妹がいる。
双子は縁起が悪いだのなんだので、生後間もない頃、当時まだ子供のいなかった叔母夫婦の養子にされたそう。

17回目の誕生日を迎えたのが昨日。
魔が差して妹達の住んでいる住所を特定したのが昨晩。
初めてあの人達に内緒で出かけたのが今朝。


幸いにも私達は一卵性双生児で顔がそっくり。
改札を抜け10分程で妹と思わしき人物をみつけた。




妹は、楽しそうに、恋人と歩いていた。




ぷつん、と何かが切れる音と、鈍器で脳を直接殴られたかのような痛みが走った。


は?え?笑
なんであいつは笑ってるの?


口から漏れ出た「…は?」が自分でも驚くほど震えていた。



ズカズカと歩み寄り、自分と同じ顔をした妹の、ぽかんとした表情を無視して、憎いこいつの胸ぐらを掴んで、酷く歪んだであろう顔で、叫んだ。



「っあんたなんかだいっきらいっ!!!!」


【蝶よ花よ】

8/8/2024, 11:27:37 AM