僕の将来の夢は異世界転生をすることだ。
真面目に考えると普通に父親のように適当な会社に勤めるんだろうけれど、
最近ラノベの異世界転生ものにハマってしまった。
初めて見た時は天啓を得た気分になった。
僕が求めていたのはこれだ。
でも大抵の異世界転生は主人公が現世で不慮の事故で死んで、哀れに思った女神がチートな能力をくれて
異世界へ生まれ変わったりすることが多い。
でも僕は死にたくはない。
だから僕は中学校が終わって帰宅し、自室にこもる。
ノートを広げ、1ページちぎる。
異世界へと飛ばしてくれるような女神を召喚しようと
日々召喚陣を描く。
そして『僕の元へ来たまえ!』と念じる。
これが僕の日課だ。
この召喚は家族を含め誰にも知られてはいけない。
特に一つ下の中学1年生の妹だ。
きっとこの儀式を見ると、僕のことを“厨二病”と
言って嘲笑うだろう。
僕は厨二病なんてイタイものでは無い。
だってこれは事実なのだ。
僕は特殊な力を持っていて、くすぶっているだけだ。
波長が違うからなのか、現世ではこの力を
発揮できないのが残念。
ふむ、それにしても今日の召喚陣は力作だ。
完璧と言っても過言ではない。
紙を顔の前まで持ち上げて、まじまじと見つめる。
『今日こそ女神が来てくれるはずだ。』
―――あとは強く僕が念じるだけ。
これだけ完璧なのだ。いつも通りではなく、ちょっと
気合を入れるためにリラックスをしよう。
まずは、そうだな、おやつのプリンを食べよう。
リビングへ行き、夕方のニュースを見ながらプリンを食べた。
『そうだ、プリンの作り方を知っておこう。異世界で使えるかもしれない…』
スマホでプリンの作り方をググり、頭に記憶…しようとしたのだが
お菓子作りだなんてしたことがないからよく分からない。
茶こしでこす?弱火ってどれくらいだ?
そもそも、異世界に冷蔵庫はあるのか?
悶々としていると母親が帰ってきた。
「晩ごはん買ってきちゃった♪」
近所のスーパーの惣菜を机の上に並べる。
僕としては異世界へ行ったら食べれなくなる“母の味“。
忘れたくないから、母の手料理が食べたいのだが、しょうがない。
これも僕の運命(さだめ)だろう。
いつも母親が帰ってきたらすぐ1階にくる妹が来ない。
しかたなく階段の下から2階にいる妹に呼びかける。
「ヒナ!ご飯だぞ!」
だが来ない。多分寝ているのだろう。
僕は2階へ上がり、妹の部屋に行こうとした瞬間、
僕の部屋から光がもれているのに気がついた。
『たしか消したはず…』
慌てて扉を開けると、そこには女神―――!
ではなくニタニタ笑ってる妹がいた。
手には召喚陣が描いてある紙だ。
「ユウ兄ちゃん、やばい厨二病!!!!
そーぞーいじょー!!」
見たことがないくらいの大爆笑をしている妹。
恥ずかしいやら怒りやら、ごちゃごちゃした感情を感じ、
力いっぱい妹から紙を奪い取ろうとした。
――が、妹も意外と強く持っていたのだろう。
ビリリと音を立てて、召喚陣は真っ二つになった。
「あぁ、あ…。」
僕は膝から崩れ落ち、悲しさから怒りに支配されていた。
「ああああああああ!」
僕は拳に力を込めて、壁をドン!と叩いた。
穴が空いた壁を見て、
妹はビクッとした後「おかあさーん!」と1階に向かう。
数秒後鬼の形相の母親が仁王立ちしている。
「……もしかして僕、やっちゃいました…?」
タハハと笑う僕に、母親は力を込めて僕のおしりを叩いた。
―――僕の異世界への道は、これからも続く―!
(ユウ兄ちゃんの次回作にご期待ください☆)
【力を込めて】~完~
しょうもないギャグ回です笑
皆さん異世界行ったら何したいですか?
いつも♡︎ありがとうございますm(_ _)m
昨日彼女が消えた。
今思えば俺は彼女に何もしてあげれなかった気がする。
何もしてあげれなかったどころか、彼氏としても最低だったかもしれない。
最初は頻繁だったLINEもいつしか“おはよう”と“おやすみ”
だけになっていた。
通話もしなくなり、デートも月に1回会うくらい。
しかも主に家デートというやつだ。
そのきっかけは何だっただろうか。
『そうだ、俺が仕事忙しいから疲れてるって言ってからだ。』
元々甘えん坊なところが可愛いなと思って好きになったはずなのに、いつしか彼女からの甘えが重たく感じてしまっていた。
その甘えもワガママなものではなく、
“ちょっとでいいから声が聞きたい”とか
“たまにでいいから次の日がお仕事休みの時とかにお外で一緒に晩ご飯食べたいな”
とかそんな可愛いものだ。
きっと彼女は苦しかっただろう。
そして俺はなんて酷いことをしたのだろう。
彼女のことは大好きなはずなのに。
自責の念が押し寄せてくる。
消えたと思ったキッカケは、いつもの“おはよう”と“おやすみ”
が来なかったからだ。
厳密に言うと一昨日くらいからパッタリと連絡が無かった。
あんなに甘えん坊で、子犬のようにしっぽをふりふりして
分かりやすく好きという気持ちを伝えようとしてくる彼女が
こんなにもLINEして来ないのはおかしいと薄々感じてはいた。
感じていたのだが、彼女も忙しいのだろうと
勝手に決めつけていた。
『本当にクズだな、俺は』
後悔しても彼女と連絡がつかない。
彼女の友人や職場にも連絡したが、どこにいるのか分からないらしい。
友人から聞いたが、彼女の両親は警察に捜索願を出したそうで、近く俺にも警察から連絡が来るようだ。
冷静に――冷静に――――とりあえず目を閉じる。
まぶたの裏には彼女とまだラブラブだった頃の思い出が
浮かんでくる。
―――白いシャツだったのにナポリタンを注文して案の定ソース飛ばす彼女。
凄く猫舌で、俺がいれた熱いコーヒーをずっとフゥフゥしていた彼女。
アルパカを触って「ゴワゴワ…」とちょっとガッカリしてた彼女。
水族館でチンアナゴをずっと見てる彼女。
映画館で一緒に手を繋いで観た映画。
初めて2人で朝まで過ごしたあの日――――
どの思い出の中の彼女も、コロコロと変わる表情が
面白くて可愛くて、愛おしくて仕方なかった。
彼女はどこへ行ったのか。会いたい。抱きしめたい。
――過去のデートにヒントがあるかもしれない。
彼女が行きたかった場所、したかった事、彼女と話したこと全てを思い出そう。
俺はさっきよりも強く、後悔と共に
2人の過去全てを“想い”だそう。
【過ぎた日を想う】~完~
今日という日も明日には過ぎた日。過ぎた日を後悔しないよう
1日1日を大切に生きていきたいものですね。
それが難しいんですけど…。
いつも♡︎ありがとうございますm(*_ _)m
「ごめんなさぁい、今日の最下位はおとめ座のあなた!」
シルバーウィーク明け後、久しぶりの学校に行く準備をしているとテレビから聞こえてくるアナウンサーの声。
『私最下位やん』
占いは信じない派の私は別にショックなど受けていない。
ただ、順位というものに敏感なだけだ。
テレビに背を向け、カバンにお弁当箱を詰める。
この地球上のうち、おとめ座は何億人いると思ってるのだろう?
みんながみんな、アナウンサーが続けているような言葉――
「不注意で大事なものを壊すかも!ゆっくりひとつひとつ確認してみてね!」
――が起きるというのだろう?
それに不注意で何かを壊してしまうのは何座でも有り得る。
しかも今日1位だったてんびん座の人みんながラッキーなことが起こるわけでもないし。
占いっていっても、結局は統計学ってやつでしょ?
『ばかばかし。』
私はカバンを持ち、玄関へと向かう。
「ラッキーアイテムは出がらしのお茶!」
「ブハッ!」
リビングと廊下のちょうど扉のところにいたので耳に入ってきたのだが、あまりにも可笑しくて思わず笑ってしまった。
『お茶!出がらしの!?』
出がらしのお茶を出されるだけでもアンラッキーじゃん?
にやけ顔で「いってきます」と言い、家を出た。
学校でも何も起こらず――というより占い自体を忘れていた――無事帰宅した。
「ただいま。」
「おかえり、あのね、マユ、ごめんなさい…」
母親がしゅんとしている。きっと何かしでかしたんだろう。
「どうしたの?」
「朝マユの部屋掃除してたら…うっかり腕がぶつかっちゃって…コレ。」
そう言うと母親は視線をリビングのテーブルの上に移す。
つられて私も見ると、初めてピアノのコンクールで金賞を取った時にもらったトロフィーの持ち手がポッキリと折れていた。
「あぁ、私の…!」
駆け寄り、持ち上げて折れたところを見る。
「本当にごめんなさい…」
正直かなりショックだったし怒りも覚えたが、しゅんとしおれている母親を見ると強く言えなかった。
ふと脳裏に朝の言葉が蘇る。
『不注意で大事なものを壊す…』
あぁそうだ。母親も私と同じおとめ座だ。
普段しっかり者の母親が不注意で私のトロフィーを…。
母親にとって、娘の初めてのトロフィーはとても大事なものということか。と思うとハッとした。
「……いいよお母さん、とりあえずそこ、座って。」
食卓に母親を座らせて、私は台所へ入る。
急須の中のお茶っ葉はいつも入っていないのだが
私のトロフィーを壊したのが相当ショックで落ち込んでいたのか、捨てておらず濡れているお茶っ葉がそのまま入っていた。
「マユ!お茶ならママが!」
立とうとする母親を制し、ポットからお湯を注ぐ。
2つ湯のみを出して、そこに注ぐ。
――案の定、出がらしだ。
私は2つの湯のみを持ち母親の前と私の席に置いた。
「マユ…このお茶…」
私はフゥフゥ冷ましながら
「それ、ラッキーアイテム」
そう言うと母親はふふっと笑って
「ラッキーアイテムだなんて信じるようになったの?」
と問いかける。
「ううん、でも、今日の占い通りの行動起こす人、初めて見たから」
そう言って笑うと、つられて母親も笑った。
ズズっと2人で飲む。トロフィーを壊された悲しみはあるけれど、母親の笑顔を戻したい気持ちの方が大きかった。
「マユはラッキーパーソンね」
母親はいつものふにゃっとした笑顔に戻った。
明日のおとめ座は何位だろうな。
【星座】~完~
皆さんは占い信じますか?私は手相や画数、占星術など色んな占いを色んな人に見てもらいましたが全員の占い師さんが
私のことを『組織の中には向かない。1人でクリエイティブなことをした方が向いてる』と言いました。
全員…
そのうち1人の人にはズバッと「マイペースで自己中」と言われました。かなしみ。
9時半、仕事へ向かう母を見送り、頼まれていた洗濯物を干し終わった後。
夏休みで学校もないし、部活もしてないし、友達も少ない。
私は部屋の中で暇を持て余していた。
一応午前中とはいえ、ジリジリとした暑さが
私の周りにまとわりつく。
それが汗となり、不快感がすごい。
『涼みも兼ねて図書館でも行こうかな』
本を読むのは昔から好きだ。特にファンタジー物が大好物。
現実じゃありえない事がどんどん起きて、
主人公になりきって一緒に冒険したり、まったり過ごしたり
魔法を使ったり、空を飛んだり…!
感情移入して読むのが本当に楽しい。
シャワーを浴びて水色の大きな花がプリントされた涼しげなワンピースに着替える。
近所の図書館に着くと真っ先にファンタジー物が置いてある
棚へと向かう。
ほとんど読んだものだが、分厚い本と本の間に絵本くらい薄い本があった。
『あれ?こんな本気づかなかったな。』
“ 12時の王子様 ” 作者名は書いていない。
怪しさを感じつつも興味が勝った。薄いのでその場でペラリとめくる。
“ 王子はいつも扉が開かない暗い部屋の中、ずっとお姫様を待っていた。
でもなかなかお姫様は来ない。
唯一扉が開くのは12時に1分だけだ。
王子様はその1分で一生懸命外にいるお姫様を探していた。
今日も王子様は12時を待つ。
扉の向こうにお姫様がいることを信じて…”
最後のページにはイラストが描いてある。
金髪で、細くて、黒いタキシードのようなものを着ている
10代くらいの少年が寂しそうに扉にくっついている様子が描かれていた。
『なんだ、拍子抜けした。タイトル通りだし…でも、いつかお姫様が来るといいね』
と本の中の王子様にちょっと同情した。
――その時鐘の音が聞こえてきた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
『なに、この音、どこから?』
他の人はみんな静かに本を読んでいる。私にしか聞こえてないみたい。
キョロキョロしてる間も鐘の音が聞こえる。
どんどん大きくなり、頭が割れそうだ。
フラッと立ちくらんだ瞬間、図書館の時計が見えた。
―――――12時。
目の前が真っ暗になった。
目を閉じた訳では無い。いきなり暗い部屋のふかふかの椅子に座っている。
『なにここ、どこ?なんで?え?』
いきなりの事に混乱するが、ハッと冷静になり
目を閉じて早く暗闇に目を慣らそうとする。
恐る恐る目を開くと、絵本の中に描かれていた王子様が立っている。
その王子様は優しく、そして嬉しそうな顔で
「お姫様、やっと会えましたね!」
と言い手を差しだす。王子様の手を握り、ゆっくり立ち上がる。
「ここはどこなの?」と質問すると
「僕のお城です。暗いし何も無いけど…」
「どうやったら戻れるの?」
ファンタジーは好きだが、実際に自分がファンタジーを体験するのは正直嫌だ。
それに、家に帰りたい。
「僕と踊りませんか?」
「嫌!家に帰りたい…」
じわっと涙が目に浮かぶ
「僕と、踊りませんか?」
「だから、嫌だってば!ここから出して!」
王子様の目が少しずつ濁っていく
「出さないよ、やっと会えたんだ。王子様はやっと会えたお姫様とワルツを踊って、ずうっと幸せに暮らしましたとさ。」
めでたし、めでたし。
【踊りませんか?】~完~
今日のお題を見たとき、昔みんなのうたであった「メトロポリタンミュージアム」という歌が思い浮かびました。
結局少年は美術館にある絵の中に閉じ込められました。
みたいな結末の歌だったと思います。トラウマの歌…笑
いつも♡︎ありがとうございます。300!有難いです。
頑張って書いた甲斐があります泣
“ 愛しい貴方へ
この手紙を読んでいるのなら、私はもうこの世には
いないということですね。
なんてセリフ、ドラマでしか聞いた事ないけど、
こんな手紙の書き出ししか思い浮かばなくって笑
ねぇ、覚えてる?私たちが初めて出会った日。
バス停に私が傘を置きっぱにしてバス乗っちゃって
通りすがりの貴方がそれに気づいて
走ってバスをおいかけてたよね。
次のバス停まで走ってきたもんだから、私、
感謝よりも申し訳なさが勝っちゃって
渡すあなたに向かってスグごめんなさい!って
謝ったよね。あの時の貴方の「いいですよ」
って言葉と、汗だくの貴方の笑顔が忘れられません。
あの出会いさえなければ貴方を悲しませることは
無かったね。
でも、結婚出来て嬉しかったよ。
この手紙は私のお母さんから受け取ったんだよね?
私がお母さんに頼んだんだもん。「1年後に渡して」って
この手紙を読んでいる時、貴方には大切な人がいるかな?
だとしたらこの手紙は破り捨ててね。絶対。
じゃないと、その人が悲しんでしまうから。
……じゃあ、続き書くね。
私は貴方のまっすぐな瞳が好きでした。
不器用な優しさも言葉も好きでした。
サプライズが下手で、ちょっと抜けてる所も好きでした。
私がガンで苦しい時もそばに居てくれてありがとう。
正直、もっと貴方と一緒に生きたかった。
一緒に年をとって、おじいさんおばあさんになっても
手を繋いで寝たかった。そのまま一緒に老衰で死ねたら…
なんて本気で思ってた。
私だけ先に1人で行っちゃって、貴方には寂しくて悲しい
想いをさせるのは凄く心苦しいけれど
私は貴方の長い人生の中で一部分だけを一緒に過ごした人。
貴方が生きる意味はこれから先絶対あるから、今ここで
立ち止まらないで。
私はもう十分すぎるほど幸せを貰ったから。
生きててよかった、最期に貴方と同じ時間を過ごせて
良かったって思ってる。後悔なんてないよ。
だからもう、私のことを引きずらないで。
私は天国から見守っているから。
でももし生まれ変わりがあるんだとすれば、
来世では、もっと早く出会って、一緒になってくれますか?
貴方はこれから精一杯生きて、おじいさんになった貴方と
貴方が経験したことを天国で話すの、楽しみにしてるね!
そして一緒に手を繋いで、せーので生まれ変わって、
今世で貴方が出来なかったことを一緒にしたいな!
じゃあ、そろそろ消灯の時間だから、寝まーす!笑
ミユキより
p.s たくさんの愛をありがとう。”
【巡り会えたら】~完~