ホシツキ@フィクション

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「ごめんなさぁい、今日の最下位はおとめ座のあなた!」

シルバーウィーク明け後、久しぶりの学校に行く準備をしているとテレビから聞こえてくるアナウンサーの声。

『私最下位やん』

占いは信じない派の私は別にショックなど受けていない。
ただ、順位というものに敏感なだけだ。
テレビに背を向け、カバンにお弁当箱を詰める。

この地球上のうち、おとめ座は何億人いると思ってるのだろう?
みんながみんな、アナウンサーが続けているような言葉――

「不注意で大事なものを壊すかも!ゆっくりひとつひとつ確認してみてね!」

――が起きるというのだろう?
それに不注意で何かを壊してしまうのは何座でも有り得る。
しかも今日1位だったてんびん座の人みんながラッキーなことが起こるわけでもないし。
占いっていっても、結局は統計学ってやつでしょ?

『ばかばかし。』

私はカバンを持ち、玄関へと向かう。

「ラッキーアイテムは出がらしのお茶!」

「ブハッ!」
リビングと廊下のちょうど扉のところにいたので耳に入ってきたのだが、あまりにも可笑しくて思わず笑ってしまった。
『お茶!出がらしの!?』
出がらしのお茶を出されるだけでもアンラッキーじゃん?

にやけ顔で「いってきます」と言い、家を出た。

学校でも何も起こらず――というより占い自体を忘れていた――無事帰宅した。


「ただいま。」
「おかえり、あのね、マユ、ごめんなさい…」
母親がしゅんとしている。きっと何かしでかしたんだろう。
「どうしたの?」
「朝マユの部屋掃除してたら…うっかり腕がぶつかっちゃって…コレ。」
そう言うと母親は視線をリビングのテーブルの上に移す。
つられて私も見ると、初めてピアノのコンクールで金賞を取った時にもらったトロフィーの持ち手がポッキリと折れていた。
「あぁ、私の…!」
駆け寄り、持ち上げて折れたところを見る。

「本当にごめんなさい…」

正直かなりショックだったし怒りも覚えたが、しゅんとしおれている母親を見ると強く言えなかった。

ふと脳裏に朝の言葉が蘇る。
『不注意で大事なものを壊す…』

あぁそうだ。母親も私と同じおとめ座だ。
普段しっかり者の母親が不注意で私のトロフィーを…。

母親にとって、娘の初めてのトロフィーはとても大事なものということか。と思うとハッとした。

「……いいよお母さん、とりあえずそこ、座って。」
食卓に母親を座らせて、私は台所へ入る。
急須の中のお茶っ葉はいつも入っていないのだが
私のトロフィーを壊したのが相当ショックで落ち込んでいたのか、捨てておらず濡れているお茶っ葉がそのまま入っていた。

「マユ!お茶ならママが!」

立とうとする母親を制し、ポットからお湯を注ぐ。
2つ湯のみを出して、そこに注ぐ。
――案の定、出がらしだ。

私は2つの湯のみを持ち母親の前と私の席に置いた。

「マユ…このお茶…」

私はフゥフゥ冷ましながら

「それ、ラッキーアイテム」

そう言うと母親はふふっと笑って
「ラッキーアイテムだなんて信じるようになったの?」
と問いかける。

「ううん、でも、今日の占い通りの行動起こす人、初めて見たから」

そう言って笑うと、つられて母親も笑った。

ズズっと2人で飲む。トロフィーを壊された悲しみはあるけれど、母親の笑顔を戻したい気持ちの方が大きかった。

「マユはラッキーパーソンね」
母親はいつものふにゃっとした笑顔に戻った。


明日のおとめ座は何位だろうな。


【星座】~完~


皆さんは占い信じますか?私は手相や画数、占星術など色んな占いを色んな人に見てもらいましたが全員の占い師さんが
私のことを『組織の中には向かない。1人でクリエイティブなことをした方が向いてる』と言いました。
全員…
そのうち1人の人にはズバッと「マイペースで自己中」と言われました。かなしみ。

10/5/2022, 11:29:16 AM