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2/5/2025, 9:14:50 AM

 お金がなかったから仕方なく公園でデートしていた。当時は高校生だったから仕方ない。北風が身に染みる季節でも、灼熱な日の光を浴びる季節でも、ベンチしかない公園で肩を寄せ合って手を握った。
 二人で行けばどこでもデートスポットだった。

 お金があっても将来のためにデートでも倹約していた。僕も君も特に文句は出ない。行きたいところも行くし、美味しいものも食べる。でも贅沢をするつもりはない。二人でシェアすればどれも贅沢なご褒美だから。
 高校時代を過ごした公園に君から呼び出された。より静かで殺風景な公園のベンチに、君は躊躇わずに座っていた。昔から変わらない仕草と、より一層魅力的な女性になった君に見惚れていた。
 はやる気持ちを落ち着かせ、深呼吸してから君の目の前まで歩いた。

 跪いて差し出すは四十本の赤いチューリップの花束。


『永遠の花束』

2/4/2025, 5:27:55 AM

 優しくしないで
 でも酷くもしないで

 冷たくされるととても辛い
 だからといってあなたの優しさに触れるたび
 とても惨めな思いをするの

 ならどうしたらいいか?

 ただずっとそばにいて


『やさしくしないで』

2/3/2025, 1:15:49 AM

 成り行きに任せて各地を旅していた時の話
 君に出会ったのはネオンが灯る街だった
 たった一晩の出来事だった
 君と僕はほんの僅かな時間をとても濃密に過ごした
 情熱的にお互いを求め合った

 まどろみが心地よくて気付けば日が高い位置にいた
 君の姿はどこにもいない
 やはり一夜だけの関係だった

 部屋を出る前にもう一度見渡した
 テーブルの下にひらりと揺れる何かがあった
 拾い上げれば白いメモ紙に何か一言書いてある
 この国の言語なのだろう
 僕にはあいにく読めなかった
 捨てるのも忍びなくポケットに突っ込んだ

 そのうちその紙のことすら忘れて
 気がつけば何十年と経っていた
 あの言葉はいったい何だったのだろう
 それはテレビの異国のアーティストが教えてくれた

 「バイバイ」


『隠された手紙』『バイバイ』『旅の途中』

1/30/2025, 12:25:20 PM

 人生約三十年。
 様々なことを見て、聞いて、やってみて、知ってみて。
 物事を通して自分がどういう人となりなのか、全て理解できている。
 いや、理解できていたはずなのだ。
 そのはずで間違いないんだけど、新しい物事を始めたり、環境が変化すると自分の新しい一面を思い知るのだ。

 まだ知らない自分の一面なんて分かりたくなかった。
 私が手先が不器用で足元が鈍臭い人間だったなんて。
 もっとスマートに人生を歩んでいると思っていたのに、チョコを降らすような人間だったなんて未だに信じたくない。
 
 もうこれ以上の面白とんでもドジは踏みたくない。


『まだ知らない君』

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 ひんやりとした空気を気持ち良いと感じるか
 ジメジメした感触を気持ち悪いと感じるか

 暗がりの空間に自ら飛び込むか
 境界線から引き込まれるか

 どちら側かを気にする私は日陰者

『日陰』

1/29/2025, 8:01:25 AM

 モコモコしたダウンコート
 レギンスの上からコーデュロイのズボンを重ね着して
 フワフワした履き心地のスノーブーツ

 首元にはピンクの毛糸のマフラー
 ミトンの手ぶくろも同じピンク色

 そして新たに耳元までカバーされる
 白いポンポンが頭頂部と左右に垂れ下がった
 ピンクのニット帽が仲間入り

「雪だぁ!」

 一面真っ白の世界で眩しいのは
 降り積もった雪か はしゃぐ我が子か



『帽子かぶって』

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