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 成り行きに任せて各地を旅していた時の話
 君に出会ったのはネオンが灯る街だった
 たった一晩の出来事だった
 君と僕はほんの僅かな時間をとても濃密に過ごした
 情熱的にお互いを求め合った

 まどろみが心地よくて気付けば日が高い位置にいた
 君の姿はどこにもいない
 やはり一夜だけの関係だった

 部屋を出る前にもう一度見渡した
 テーブルの下にひらりと揺れる何かがあった
 拾い上げれば白いメモ紙に何か一言書いてある
 この国の言語なのだろう
 僕にはあいにく読めなかった
 捨てるのも忍びなくポケットに突っ込んだ

 そのうちその紙のことすら忘れて
 気がつけば何十年と経っていた
 あの言葉はいったい何だったのだろう
 それはテレビの異国のアーティストが教えてくれた

 「バイバイ」


『隠された手紙』『バイバイ』『旅の途中』

2/3/2025, 1:15:49 AM