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8/18/2024, 6:56:12 AM

いつまでも捨てられないもの、それは私にとって本だった。
好みの本を買い続けていたら直ぐに本棚から溢れて尚増殖し、やがては部屋の床が抜けるから控えるように叱られても、私は紙の本を買うことを止められなかった。
整理整頓は心がけているが、私の部屋は足の踏み場と寝る場所以外は全て本が支配し、時々積み上げた本が雪崩を起こしていた。
学生時代は両親、大人になってからは配偶者に少しは本を処分しろ、とか、電子書籍があるんだから紙の本じゃなくたっていいじゃないかと、何度かぼやかれたり、或いは怒られたことも度々あった。
しかし、違うのだ。
手触りや匂い、本の重み、ページを捲る瞬間など理由を挙げたら切りがないが、本は紙ではなくては駄目なのだ。
そして、私の考えは間違ってなかったと、今は強く確信している。
「ねえ、本を読みたい!」
私の本を、私の子供がねだる。
私の子は本の虫で、しかも最近の本ではなく、親の私が持つ古い本に興味があるようだった。
そして、私の持つ本は、今では絶版になっているものや、図書館に無いものも少なくない。
……電子書籍では、版元の事情や権利でいつ読めなくなるかわからないのだ。
現物は一番強い。
私は子供と一緒に紙のページを捲りながら、絵本の読み聞かせを始めるのであった。

8/16/2024, 11:14:10 PM

いつからだろう。誇らしさ、なんて感情を忘れ去ってしまったのは。
小さい頃なんて、簡単なコトでも成し遂げられたら、すぐに誇らしさでピッカピッカに輝いた自分になれていたような気がしていた。
……まあ、幼い子供ゆえに周囲の大人が「良くできたわねえ」と誉めてくれたのも、凄く大きかったんだろうけど。
「そーんな単純な自分(コト)で良かったんだろうな……」
日々の過労と対人関係で精神を病んだ己には、そんな簡単なことすら難解で。
ストレスが心のコップから溢れてしまい、他の感情が後から湧き出る余地すらなくコップの下で根腐れを起こしてしまい、気持ちが枯れてしまった。
シンプルな感情すら、今はただ途轍もなく遠かった。

8/15/2024, 10:20:27 AM

いつか見た映画のように、自転車に乗ってあの月まで飛んでいけたらいいのに。
真夏の急な登り坂を自転車で漕ぎながら、ふと思う。
自転車で空をかけたり、深海の中を潜ったり、時を越えてしまえたらいいのに。
乱れた息を吐き、滝のような汗を掻きながら、自転車を漕ぎ続ける。

どこでもいい!
嗚呼、このまま、何処かへ行ってしまいたい!

8/13/2024, 7:43:20 AM

寝ぼけ眼の深夜に、死んだ筈の君の奏でる音楽が聞こえた。
夢か?
-----嗚呼、そういえば、今の時期はお盆か。
盆の季節は死んだ魂がかえるなら、幽霊でもいいから君の顔が見たいよ。
……でも、きっとこれが正解なのだろう。
音楽だけを届けて、君が俺に会わないというのなら……その選択を、正解としよう。
きっと俺は君の顔を見たら、君が居るところに俺も逝ってしまうだろうから。

8/12/2024, 1:44:08 AM

ふと、ガラクタの山で見つけた麦わら帽子。
子供の頃によく愛用した麦わら帽子は、忘れられた時間分の劣化と、当時の日の光による色焼けが酷かった。
そういやあ最近は麦わら帽子を被るような子供を、昔程見なくなったな、と思う。
しかし、それも無理も無かろう。昨今の酷暑と熱中症だ。メディアも日中の運動や不要な行動は避け、涼しい時間帯の行動を推奨している。屋外よりも屋内の遊びを勧める親も多いのかもしれない。
勝手な偏見だが、麦わら帽子を被る子よりも、日傘を差す子の方が、昨今多いのではないかとすら思う。
「ふーむ……うん!」
難しいことを考えるのはやめだ。
夏休み。子供は子供の遊びをするなら、大人は大人の遊びをしよう。
そうだな、折角懐かしの麦わら帽子を見つけたのだ。
麦わら帽子。英語でストロー。麦……麦の酒、ビールだ!!
麦わら帽子は、やっぱり暑い日差しの中で使わらるのが、お約束。
そして、たまには真っ昼間の炎天下の中で、冷たいビールを飲むのも乙かもしれない。
酒飲みの適当な大義名分をつけて、ボロい麦わら帽子を被りながら、男は厳しい日差しと温度の中で、冷たい缶ビールを開け始めた。




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