いつまでも捨てられないもの、それは私にとって本だった。
好みの本を買い続けていたら直ぐに本棚から溢れて尚増殖し、やがては部屋の床が抜けるから控えるように叱られても、私は紙の本を買うことを止められなかった。
整理整頓は心がけているが、私の部屋は足の踏み場と寝る場所以外は全て本が支配し、時々積み上げた本が雪崩を起こしていた。
学生時代は両親、大人になってからは配偶者に少しは本を処分しろ、とか、電子書籍があるんだから紙の本じゃなくたっていいじゃないかと、何度かぼやかれたり、或いは怒られたことも度々あった。
しかし、違うのだ。
手触りや匂い、本の重み、ページを捲る瞬間など理由を挙げたら切りがないが、本は紙ではなくては駄目なのだ。
そして、私の考えは間違ってなかったと、今は強く確信している。
「ねえ、本を読みたい!」
私の本を、私の子供がねだる。
私の子は本の虫で、しかも最近の本ではなく、親の私が持つ古い本に興味があるようだった。
そして、私の持つ本は、今では絶版になっているものや、図書館に無いものも少なくない。
……電子書籍では、版元の事情や権利でいつ読めなくなるかわからないのだ。
現物は一番強い。
私は子供と一緒に紙のページを捲りながら、絵本の読み聞かせを始めるのであった。
8/18/2024, 6:56:12 AM