どすこい

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5/25/2025, 1:10:43 PM

「優しい雨音」

今日もあなたは家に引きこもってうずくまっている。理由はわかっている。私が死んだからだ。どうやら私はあなたと待ち合わせをしいていた時、居眠りしていたトラックに轢かれて死んだらしかった。あなたはその日、私にプロポーズするつもりだったらしい。そのためか、待ち合わせに少し遅れてしまったあなたは、責任を感じてるらしかった。確かに、私はそのことを知った時、そんな日に死んでしまうなんてと運命を恨んだ。でも、あなたはちっとも悪くないのに。私は怒ってなんかいないのに。そんなことで引きこもって、あなたの生活を壊してしまうほうが私には辛い。もう一度、優しい笑顔を見せてほしい。
そうしてしばらく経ったある日、あなたは久しぶりに外に出かけて行った。親友から電話がかかってきて、呼び出されたようだった。
帰ってきたあなたは小さな箱を持っていて、それはどうやらオルゴールのようだった。あなたがネジを回すと、懐かしい歌声が聞こえてきた。あなたと一緒によく歌った、あの歌。少し音程のずれた、私の声。あなたの目から、涙が溢れ出る。後悔とは違う、優しい涙。いつの間にか雨が降り始めていたようで、外から雨音が聞こえる。あなたの涙によく似た、優しい雨音。
あなたには見えなくても、もう一度話すことはできなくても、私はずっとそばにいるから。ずっと、あなたのことを愛してるから。

5/25/2025, 10:20:10 AM

「歌」

陽気な音楽を響かせる携帯を手に取る。携帯に表示される懐かしい名前。こいつから電話がかかってくるなんていつぶりだろうか?なんの用かと不思議に思いながら携帯を手に取る。

「あー、もしもし。久しぶりだな。元気にしてるか?最近、お前の彼女が亡くなったって聞いて、お前のことだから塞ぎ込んでるんじゃないかと思って。今近くにいるんだけど、ちょっと出て来れないか?連れて行きたいところがあるんだ。」

久しぶりに聞く親友の声。あいつの頼みなら仕方ない。そう思い、服を着替えてからドアを開ける。久しぶりに出た外は、眩しかった。

指定された住所に行くと、そこには小さな店があった。
中に入ると、すぐそばに親友が待っていて、こちらに手招きをしている。

「久しぶり。言ってたもの、持ってきたか?」

親友に電話で言われて持ってきたもの。彼女の写真や一緒に撮った動画。歌声の録音。携帯でそれを見せると、親友は店員さんを呼び、携帯を預ける。一体なにをするのだろうか。サプライズだなんだなんて言って、まだなにも伝えられていない。
それを作るにはしばらく時間がかかるみたいで、その間親友と久しぶりに話をする。待ち合わせをしていた時、居眠りをしていたトラックに轢かれて彼女が死んでしまったこと。自分が待ち合わせに遅れたせいだと責任を感じていること。彼女が死んでから何もやる気が起きなくて引きこもってばかりいること。
親友は無言で、だけど適度に相槌を打ちながら一生懸命に聞いてくれた。おかげて洗いざらい話してスッキリした。
話が落ち着いてきた頃、店員さんが小さな箱をもってきた。それはどうやらオルゴールのようだった。店員さんに勧められ、そっとネジを回す。聞こえてきたのは、懐かしい歌だった。君とよく一緒に歌った、あの歌。オルゴールの音色は少し音程がズレていて、彼女の歌声にそっくりだった。気がつくと、涙を流していた。彼女と言った場所、交わした言葉の数々。改めて寂しい、と思った。
親友と別れて、家に帰ると雨が降り始めた。君の笑顔を思い出させる、優しい雨音。
君ともう一度会うことはできなくても、声を交わすことはできなくても、思い出の中ならいつだって会える。
いい加減引きこもるのはやめよう。君に相応しい男になるために。

5/24/2025, 9:10:46 AM

「そっと包み込んで」

私はの恋人は、嫉妬深い。私がやっていること、今いる場所、一緒にいる人、全てを把握したがる。誰かと話そうものならヒステリックに怒り、勝手に隣を時離れたら泣きつかれる。そんな私たちの関係によく人は「かわいそう」だとか「そんなに束縛されて辛くないの」と言うけど、私にはその気持ちが全くわからない。だって、愛されている証拠じゃないか。むしろ、その反応がとても可愛らしくて、つい嫉妬させるような態度をしてしまう。でも、流石にやりすぎたかな。あなたが私の首を手でそっと包み込む。
必死な顔も可愛いね

5/22/2025, 12:54:07 PM

「昨日と違う私」

「ねぇ!なんでこんな点数しか取れないわけ!?こんなテスト、100点取れて当たり前でしょ?」

ああ、またこの金切り声。キーキーキーキーうるさいな。人を馬鹿だって罵るなら、テストで100点取れっていうのなら、猿みたいに鳴くのやめてくれない。

ほんと、にやにやしながら下品な話をするクラスメイトも、キーキー鳴いて自分のできない理想を押し付けるばばあも、死んでくれたらいいのに。

、、、、、そうだよ。死んでくれたらいいんだ!


昨日とは違う私。もう自由な私。これからは、自分の好きなようにできるんだ!嫌なばばあのために頑張ることもしなくていい。教室で自我を押し殺すこともしなくていい。

なんでもできる。好きにできる。

5/21/2025, 1:30:47 PM

「Sunrise」

私は太陽が好きだ。落ち込んだ時でも私を包み込んでくれる。ひまわり、オムライス、そしてあなたの光に輝く金髪。これも私の大好きなもの。あなたは私の太陽。あなたの笑顔を見るだけで私は幸せになれる。
ある時、あなたは言った。親から虐待されているのだと。切り傷とあざがついたあなたの体は痛々しくて、それでも美しかった。あなたは私の太陽。でも私はあなたの太陽にはなれない。でも、こうやって話を聞くから。ずっとそばにいるから。だからあなたは、ずっと私の太陽でいてね。

そう、思っていたのに。

「ねぇ、私、明けない夜はないなんて信じられないの。もう、限界。、、、、、だから、じゃあね。」

あなたはそう言って夕陽の差す窓から飛び降りた。そんな時でさえ私は風に靡いて光るあなたの髪に見惚れてしまった。我に帰り、あなたの元へ行った時にはもう遅かった。あなたの美しい髪はみるみるうちに血に染まっていく。

、、、、、、あ、夕陽。

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