どすこい

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「優しい雨音」

今日もあなたは家に引きこもってうずくまっている。理由はわかっている。私が死んだからだ。どうやら私はあなたと待ち合わせをしいていた時、居眠りしていたトラックに轢かれて死んだらしかった。あなたはその日、私にプロポーズするつもりだったらしい。そのためか、待ち合わせに少し遅れてしまったあなたは、責任を感じてるらしかった。確かに、私はそのことを知った時、そんな日に死んでしまうなんてと運命を恨んだ。でも、あなたはちっとも悪くないのに。私は怒ってなんかいないのに。そんなことで引きこもって、あなたの生活を壊してしまうほうが私には辛い。もう一度、優しい笑顔を見せてほしい。
そうしてしばらく経ったある日、あなたは久しぶりに外に出かけて行った。親友から電話がかかってきて、呼び出されたようだった。
帰ってきたあなたは小さな箱を持っていて、それはどうやらオルゴールのようだった。あなたがネジを回すと、懐かしい歌声が聞こえてきた。あなたと一緒によく歌った、あの歌。少し音程のずれた、私の声。あなたの目から、涙が溢れ出る。後悔とは違う、優しい涙。いつの間にか雨が降り始めていたようで、外から雨音が聞こえる。あなたの涙によく似た、優しい雨音。
あなたには見えなくても、もう一度話すことはできなくても、私はずっとそばにいるから。ずっと、あなたのことを愛してるから。

5/25/2025, 1:10:43 PM