どすこい

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5/24/2025, 9:10:46 AM

「そっと包み込んで」

私はの恋人は、嫉妬深い。私がやっていること、今いる場所、一緒にいる人、全てを把握したがる。誰かと話そうものならヒステリックに怒り、勝手に隣を時離れたら泣きつかれる。そんな私たちの関係によく人は「かわいそう」だとか「そんなに束縛されて辛くないの」と言うけど、私にはその気持ちが全くわからない。だって、愛されている証拠じゃないか。むしろ、その反応がとても可愛らしくて、つい嫉妬させるような態度をしてしまう。でも、流石にやりすぎたかな。あなたが私の首を手でそっと包み込む。
必死な顔も可愛いね

5/22/2025, 12:54:07 PM

「昨日と違う私」

「ねぇ!なんでこんな点数しか取れないわけ!?こんなテスト、100点取れて当たり前でしょ?」

ああ、またこの金切り声。キーキーキーキーうるさいな。人を馬鹿だって罵るなら、テストで100点取れっていうのなら、猿みたいに鳴くのやめてくれない。

ほんと、にやにやしながら下品な話をするクラスメイトも、キーキー鳴いて自分のできない理想を押し付けるばばあも、死んでくれたらいいのに。

、、、、、そうだよ。死んでくれたらいいんだ!


昨日とは違う私。もう自由な私。これからは、自分の好きなようにできるんだ!嫌なばばあのために頑張ることもしなくていい。教室で自我を押し殺すこともしなくていい。

なんでもできる。好きにできる。

5/21/2025, 1:30:47 PM

「Sunrise」

私は太陽が好きだ。落ち込んだ時でも私を包み込んでくれる。ひまわり、オムライス、そしてあなたの光に輝く金髪。これも私の大好きなもの。あなたは私の太陽。あなたの笑顔を見るだけで私は幸せになれる。
ある時、あなたは言った。親から虐待されているのだと。切り傷とあざがついたあなたの体は痛々しくて、それでも美しかった。あなたは私の太陽。でも私はあなたの太陽にはなれない。でも、こうやって話を聞くから。ずっとそばにいるから。だからあなたは、ずっと私の太陽でいてね。

そう、思っていたのに。

「ねぇ、私、明けない夜はないなんて信じられないの。もう、限界。、、、、、だから、じゃあね。」

あなたはそう言って夕陽の差す窓から飛び降りた。そんな時でさえ私は風に靡いて光るあなたの髪に見惚れてしまった。我に帰り、あなたの元へ行った時にはもう遅かった。あなたの美しい髪はみるみるうちに血に染まっていく。

、、、、、、あ、夕陽。

5/20/2025, 1:44:23 PM

「空に溶ける」

「ねぇ、私、明日宇宙船に乗ろうと思うの」

彼女はそう言った。誰もいない屋上、静まり帰った学校。宇宙移住計画が始まってもう早五年。地球に残っている人ももう私たちを含めて数十人しかいない。
人間の発展によって進んだ気候変動や空気汚染により、地球は近い将来人類が暮らせる状態ではなくなると判断された。だから、多くの人が水や食糧を持って宇宙へと飛び立った。宇宙船が瞬く間に発展し、もはやかつての地球よりはるかに進んだ状況になった今、ここに止まる物好きはあまりいない。それでも私たちはここに残り、誰もいなくなった屋上で空を見上げて毎日のように語り合った。そんなこの街にも、一年に一度宇宙船が戻ってくる日がある。久しぶりに我が家に戻りたいという人や宇宙船に乗りたくなった人たちのために、数日間滞在するのだ。明日がその出発の日。
ある日、この屋上で小指を絡めて誓ったことを、彼女は忘れてしまったのだろうか?
私たちはずっとずぅっと一緒に地球にいようねと言ったのに。

次の日、いつものように支度をして学校へ向かう。そして、門に手をかけたところで気がつく。もう、屋上へ向かう必要もないのだ。彼女はもう、出発してしまったのだろうか。それでも他にやることもないのでやはり屋上へ向かうと、一通の手紙が目の前に落ちる。見慣れた彼女の字。

「あなたがこの手紙を読んでいる頃には、私はもうきっとこの世にはいないでしょう。どうやら、私の体では汚染されていく地球の環境に耐えられなかったようです。嘘をついて、ごめんなさい。約束を守れなくて、ごめんなさい。」

なんてことだろう。彼女は、約束を忘れてなんて、いなかった。君は別の意味で空へと向かってしまった。

「ねぇ、私、ずっと君のことが好きだったんだよ」

つぶやいた言葉が、空に溶ける。
君がいるはずの、はるか空へと。

5/19/2025, 2:04:03 PM

「どうしても、、、」

残業終わりで真っ暗になった空に満月が浮いている。なんだか今日はやけに月が明るく見える。
月といえばで思い出したが、私は小さい頃、どうしても月が欲しいと思っていた。何故だかわからないけど、本当にどうしても。誕生日プレゼントになにが欲しいか聞かれて、月が欲しいと答えると家族みんなに笑われた。私はいたって本気だったのに。それで結局、誕生日には望遠鏡を買ってもらった。それからというもの、毎日ベランダに出ては望遠鏡を引っ張り出して、真夜中の空と睨めっこしていた。まったく懐かしい思い出だ。進学のために上京してからは、ビルに囲まれ、忙しくなったこともあり以前のように月を眺めることは無くなってしまった。望遠鏡はどこにしまったのだったか。せっかくの満月だ。久しぶりに覗いてみるのも悪くない。
そう思って視線を下すと、月明かりに照らされた小さな看板が見えた。
「月のかけら」
バーか何かだろうか。今日こうやって見かけたのも何かの縁だ、せっかくだし寄って行こう。少しレトロな木の扉を開けると、店内は月明かりに照らされているように、薄暗かった。
「いらっしゃいませ」
奥から初老の男性が出てくる。腕まくりした白いシャツに少しよれたエプロンという出で立ちはバーテンダーというより職人のようだ。カウンターも見当たらないし、ここはどうやらバーではなかったようだ。
「あの、ここはなんのお店なんですか?」

「これはこれは失礼しました。ここは名前のように、月のかけら、すなわち月を打っている所です。」

、、、月を売っている、だと?からかっているのだろうか。昔の私なら喜んで買おうとしただろうが、今の私は月を手に入れることはできないことぐらい知っている。それに、たとえそうだとすれば、さっき見た満月はなんだったというのだろう?

「本当のことか怪しんでいるような顔ですね。無理もありません。ここにくるお客さんは誰しも最初はそんな顔をします。」

店員なのだろう初老の男性が説明を始める。
なんでも、月が光っていられる時間はある程度決まっているようで、毎月月を取り替えているそうだ。ここではその、光の薄くなった月を売っているらしい。今日の月が明るく見えたのは、ちょうど月を変えたばかりだったからのようだ。光る時間は決まっている上にもうすでに薄くなってきているため、あまり長持ちはしないらしいが、それでも十分楽しめるみたいだ。にわかには信じられないが、もし本当だったら子供の時にどうしてもかなえたかった夢が叶えられることになる。どうせ大した値段ではないみたいだし、せっかくだから買ってみようか。

朝起きると、カーテンを閉め切った薄暗い部屋にぼんやりと月が光っている。これが月だというのが本当なのか、部屋に帰って箱を開けるとライトの近くを浮遊し始めた。それにしてもやはり、月というものは綺麗だ。

気づけば最近、我が家の月の光が消え掛かっている。電気を消しても存在が分かりづらく、ほとんど見えなくなってしまっている。今日はちょうどとても明るい満月が出ているから、あの店には新しい商品が入荷されたのではないか。
夜の散歩がてら、また行ってみようか。

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