太陽が消失してから3年。人工的な光源を見上げながらあの生命力に溢れた暑さを思い出した。
光源からの熱は完全制御されており、あの頃のように死を肌に感じる程の暑さはもうない。
耳をつんざく程の蝉の鳴き声はもう聞こえない。あの頃を知る人間の記憶の彼方と映画等の作品の中にあるだけだ。光源は日本全土を覆うことはできなかった。財政難と材料不足により作物を作る範囲だけだ。
その代わり家庭用の窓型スクリーンを導入している。ところもある。俺の家にはそんな高価なものはない。農業をしているのでその時浴びるし、問題は生じていない。
太陽が消失して最初の頃こそ恐ろしかったが、慣れというのはすごいものだ。
家庭用の光源がない人たちは一週間に数回サウナのように太陽を浴びれる施設に通っている。保険適用なので格安で使用することができるが、それでも痛い出費だ。
日に焼けた肌は富と健康の象徴となった。
まあ俺は「富」とは無縁だが……
早く俺の太陽を見つけたいよ。
うあっ!!??くっそなんなんだよ
お前誰なんだよくそっ放せ。
あ、、ちょっとウソ。ウソです。
はなさないで待って。ここなんも見えないから怖いんだよ。ごめんて。
あ?待て上から砂かけてるような音しないか?
お前も聞こえるよな??
何??声ちっせえよもう少しハキハキ喋ろよ
…………もうここから出られない…?
「そう。もうここからは出られないよ。僕たちはこれから生きた神様になるんだ。ずっと一緒。嬉しいなあ
お父さんに頼んだんだ。僕が神様になる条件に、君と一緒ならいいよって。僕はこの敷地内から出られないから。窓からいつも見てた。君が小学生の頃からずっと。君と友達になって同じ高校に通って、放課後一緒に遊んで…、お母さんのアップルパイ食べて欲しかったな すごく美味しいんだ。あれ?ふふっ悲しいよね、もう食べられないなんて。君は何が好きなの?好きな人はいる?いても、もう会えないね。ふふふ
大丈夫。僕がずっと一緒にいる。2人で神様になろう。神様になるまで少し苦しいかもしれないけど、一緒だからね」
「なんだこれ」
独自の神を崇める信仰宗教の信者が次々と震えや筋肉のこわばり、歩行困難。肺炎などで死んでいき、ついには信者がほぼ亡くなり壊滅した。
自然に囲まれた教団跡地を新しいリゾート施設にするために、開発が始まった矢先、大きな棺桶のような箱が出てきたのだ。
凄まじい異臭を醸し出すその箱を蹴ると中で「からころ」と何かが転がる音がする。
こうしていても埒が空かないと、意を決して開けた。
箱の中は二体の…おそらく、二体の人間の遺体があった。埋めてからどれくらい経ったのかわからないが、ここの宗派では土葬のようで、まだどこか生々しさの残る、てらてらとぬめり気がある状態だった。もう1人は半分ほど白骨化していた。……いや、先ほどの遺体の爪がその遺体に食い込んでいる。歯も突き刺さっているようだ。
まさか……「食った」のか?この遺体の人物は半分白骨化した遺体を食った…?生きていたのか?
「うボエっ…そんな、げえっ……うっぷ。ゲホゴホ」
私の脳は思考をやめ、その場にうずくまって吐くことしかできなかった。
イルミネーションを見かけると、クリスマスの曲を聴くようになると、「ああ。もう今年も終わるのか」ともう年末の気持ちになる。
今年も1人。なんの新しい報告もなく終わる。
抱負も何ももう思い浮かばない。どうせ来年も判で押したような年になるのだ。
「え??もう⚪︎月なの???時間が過ぎるのが年々早くなるな…」
とかって言いながら
もう私は死んでいて、地獄で永遠に同じ年を繰り返しているんじゃないかって思う…けど、人生のロスタイムなのかも。
変わりたいって強く自分が思わないともう大人になったなった私は変われないんだなって。
生きる力も薄く、死ぬ勇気がない。怠慢な生を
来年も…
「夕焼け小焼け」が聴こえる。もう帰る時間だ。
外で聞いたのは久しぶりだった。いつも学校終わりにはどこにもよらず、友達とも遊ばず。家にすぐ帰っていたので、たいていは家の中で聴いていた。
しかも家は学校の目の前だったので、大音量なのだ。
こんなふうに遠くから聴こえてくると、力強さは薄れ、ノスタルジックで、もの寂しい気持ちになる。特に、こんな状況だと。
先程までぴくぴくと痙攣していた同級生がいつの間にかぴくりとも動かなくなっていた。
周りに人気はない。どれくらい眺めていたのだろうか。
「いつもみたいに家にすぐ帰ればよかった…」
自分の声が冷たく響いた。
私は幼稚園生の頃ジャングルジムのてっぺんまで登り、そこから他の園児たちを観察することが好きだった。いつもとは違う視点になれることも嬉しかった。
幼稚園の先生たちはそんな私を見守ってくれていた。
他の友達と遊びなさいとか、誘ってくることはなく。
尊重してくれていた。
とても心地よい場所だったなとふと思い出した。
誰にも否定されず、価値観も押し付けられない。
1人で居させてくれる空間。
あの幼稚園に入園できてよかったな。