「命燃え尽きるまで」
なんて言葉があるが、自分の命が「ぼあっ」と燃えている感じはしない。
線香花火の最初のじゅくじゅくがずっと続いて全く爆ぜる気配がない感じ、
ガスコンロに火をつけようとしたけど火がついてなくてガスだけ漏れてる感じというか
小学生の頃までは仄かに火が付いてた気がするけど、そのあとはもう下火。なんの火力も上がることなく続いてる感じ。生きてる？
中華料理だったら最悪の出来だよ。切れ味の鋭い刀も打てないし、そんなエンジンじゃ宇宙にもいけない。
もっと燃料投入せねば。私の燃料って何よ。
感情も最近鈍いし、体力も筋肉も衰える一方よ。
死ぬときはそれはもう音もなく誰にも悟られることなく消えるんだろうな。
燃え尽きるほど生きてる人はいるのかな
願望なんじゃないかな。そうあれかしと
燃え尽きてもいいと思えるものがある人は幸せなんだな。憧れるな。

好きな食べ物が同じ。
水族館や博物館巡りが好き。
年上で落ち着いてる頼れる感じが好き。
声が好き。
収入も安定してる。
初めて会ったとき話しやすかった。

大人の恋を知らないけれど、私はいつの間にか30になって、
周りの友人は結婚したり、子供ができたり、
人生のパートナーを見つけ、別の世界の住人になった。
「誰かを好きにならなきゃ」
突如溢れたそんな焦りに追い立てられて、マッチングアプリに登録したのが1ヶ月前。
彼と会ったのが昨日。
正直楽しかった。普通に生きていたら会うことはなかった人と知り合えたのが嬉しかった。世界が少し広くなった気がした。
でもこの気持ちが恋愛に変わる兆しは感じなかった。
焦る。焦る。もういい大人なんだから恋愛くらいできなきゃ、「誰とも付き合ったことないんです。」なんて言ったら引かれて、残念な女のレッテルを貼られてしまう。
そんなことないかもだけど、勝手にそんな圧を感じる。
恋は衝動。気づいたら落ちているもの。
いつの間にか付き合っていた。
相手のことが好きすぎて毎日考える。
物語の中の恋愛をそれなりに楽しめるのに、どこか他人事で、
私だて好きの感情はある。でも恋にはならない。

「来月昨日話したアーティストのイベントがあるから行こうよ」

彼からのメッセージ。返事するための心の体力がない。もう会いたくないとすら思う。
テレビにマッチングアプリのCMが流れる。
みんなこんなにサラッと自然に発展するのかな、すごいな、恋愛は高度すぎる。考えすぎなんだろうか。
責任感がないんだ。自分にも相手にも。

「是非行きたいです。楽しみです。」

考えを先延ばしにしよう。もう一度だけ勇気を出して
相手のことを知り、自分を知られる勇気を持とう。
これが今できる精一杯の本気の恋への挑戦。
傷つく勇気を持たなくちゃ。
きっと本気の恋はできないのだろうな。

何か新しいことを始めたいとき。
気分を変えたいとき。
可愛いデザインを見つけたとき。
私は手帳を買うけれど、
結局一日だけ予定を書いたきり、
特に書き出す予定もなく。
素敵な手帳に自分の汚い字が浮いて
絶望的に可愛くない。

そうしてほとんど新品のままの手帳をまた増やした。
わかっていたのに。
自分はカレンダーに予定を書かなくとも生きていける、変わり映えのなく中身のない、空っぽのつまらない人間なのだと
確認するために買うかのように。
ごめんね、ごめんね。
ごめんね私。