かきフライ

Open App
5/20/2026, 11:59:49 AM

【理想のあなた】

理想はいくらでも妥協できる。
だからこそ、いくらでも追い求めなければならない。
理想を求めるほどほどあなたらしくなる。

5/20/2026, 1:27:53 AM

【別れ】

その夜、彼女はやけに静かだった。
恋愛映画を観ながらポップコーンをつまんでいる。私は一つ口に入れながら言った。

「愛し合っているのに別れなきゃいけないなんて、悲しいよね」

彼女は「うん、でも」と言いかけて黙った。私に肩を寄せながら視線はテレビから離さなかった。

映画が終わる頃には雨が降っていた。
部屋の電気を消した後、彼女は中々寝ようとしなかった。静寂の中で、私の名前を何度も呼ぶ。

「こっち向いて」

振り返ると悲しそうに笑っていた。

「映画に引っ張られすぎ」

私は冗談めかして、彼女の頬をつついた。彼女は無言になり、心地よい雨の音が間をつなぐ。
彼女は無言のまま、唇を重ねてきた。壊れ物を扱うように私を包み込まれた。彼女は私の心拍数を数えるように静かになった。
私も彼女の心音を聞こうとした途端、それに気づいたのか彼女は痛いほど優しい声で名前を呼ぶ。

「大好き」

泣きそうな震えた声が鼓膜を震わす。

「知ってる」

私は微睡みの中で答えた。その瞬間、抱きしめている力は追い詰められているように感じた。輪郭がなくなったまま、眠りに落ちた。

目を覚ますと、やけに体が冷えていた。雨のせいだろうか。窓の外に目をやろうとすると、隣に誰もいないことに気付いた。気配も何も感じなかった。私は慌ててスマホを見ると、そこには簡潔な通知だけが残っていた。
『ごめん。』

5/18/2026, 10:47:26 PM

『恋物語』
輝かしい朝日と、優雅な目覚ましの音で体を起こす。彼女はもう起きているようだ。

洗面所へ行き顔を洗ってから、リビングで朝食を食べる。いつものルーティンだ。ダイニングテーブルに座りながら、窓の外をぼーっと眺めている彼女の姿があった。朝が弱いらしい。だから、朝食はいつも僕が作っているのだ。

「今日も可愛いね」

キッチンで彼女を後ろ姿で確認しながら、二人分のトーストを焼いて、コーヒーを淹れる。

「はい、朝ごはん」

彼女は庭にいる小鳥たちを観察しているようだ。朝食を一緒に食べながら、おしゃべりをする。

新作ゲームの話。
昨日見たアニメの話。
駅前に新しくできたお店の話。

彼女は相変わらず口数が少ないが、僕はその静かな会話が好きだ。

朝食を食べ終え、支度をする。

「じゃあ、行ってきます」

5/18/2026, 12:32:19 AM

『sweet memories』

エステル特有の甘い香りが実験室に漂っている。

「本当に果物みたいな匂いなんだね」

彼女が少し笑いながら言った。

「加水分解するのもったいないね」

私はためらいながら、試験管に水酸化ナトリウムを入れる。静かな液面が微かに揺れた。

「…本当に匂いが消えちゃった」

「そうだね」

鼻腔の感覚は変わらないが、実験室は無機質な空気へと変化していた。
けれど、甘い匂いだけは記憶の中でいつまでも消えなかった。

5/16/2026, 5:59:27 PM

『愛があれば何でもできる?』

帰りのホームルームが終わってからしばらく経ち、人気のなくなった廊下で凛がそう呟いた。

「何でもは無理だよ。」

屈託なく心陽は返した。

「そっか。」

残念そうな様子で凛は相槌を打った。
階段に差し掛かり、一つずつ足音が響く。

「じゃあさ。」

凛は足元に意識を向けながら、そして心陽の心を覗くように言った。

「愛って何のためにあるのかな?」

心陽は少し考えて、照れながら答えた。

「きっと、好きな人と幸せを共有するためだよ。」

「共有…。」

初めて触れる言葉のように、肯定も否定もせずに発した。

階段を降り終えて、二人は下駄箱へ向かった。
凛は一足の靴を眺めながら口を開いた。

「愛ってさ、共有するためのものじゃないと思うんだよね。」

「え?」

思わぬ返答に頭が回らず、心陽は声が漏れる。

「お互いがお互いの愛で傷つけ合うのって幸せじゃない?」

息を呑む心陽を置いて、凛は昇降口を飛び出して言い放った。

「私は心陽の愛に壊されてみたいな。」

その様子は、西陽に反射し美しく燐光を放っているようだった。しかし、その光に潜む毒に、心は静かに蝕まれていった。

Next