『愛があれば何でもできる?』
帰りのホームルームが終わってからしばらく経ち、人気のなくなった廊下で凛がそう呟いた。
「何でもは無理だよ。」
屈託なく心陽は返した。
「そっか。」
残念そうな様子で凛は相槌を打った。
階段に差し掛かり、一つずつ足音が響く。
「じゃあさ。」
凛は足元に意識を向けながら、そして心陽の心を覗くように言った。
「愛って何のためにあるのかな?」
心陽は少し考えて、照れながら答えた。
「きっと、好きな人と幸せを共有するためだよ。」
「共有…。」
初めて触れる言葉のように、肯定も否定もせずに発した。
階段を降り終えて、二人は下駄箱へ向かった。
凛は一足の靴を眺めながら口を開いた。
「愛ってさ、共有するためのものじゃないと思うんだよね。」
「え?」
思わぬ返答に頭が回らず、心陽は声が漏れる。
「お互いがお互いの愛で傷つけ合うのって幸せじゃない?」
息を呑む心陽を置いて、凛は昇降口を飛び出して言い放った。
「私は心陽の愛に壊されてみたいな。」
その様子は、西陽に反射し美しく燐光を放っているようだった。しかし、その光に潜む毒に、心は静かに蝕まれていった。
5/16/2026, 5:59:27 PM