【別れ】
その夜、彼女はやけに静かだった。
恋愛映画を観ながらポップコーンをつまんでいる。私は一つ口に入れながら言った。
「愛し合っているのに別れなきゃいけないなんて、悲しいよね」
彼女は「うん、でも」と言いかけて黙った。私に肩を寄せながら視線はテレビから離さなかった。
映画が終わる頃には雨が降っていた。
部屋の電気を消した後、彼女は中々寝ようとしなかった。静寂の中で、私の名前を何度も呼ぶ。
「こっち向いて」
振り返ると悲しそうに笑っていた。
「映画に引っ張られすぎ」
私は冗談めかして、彼女の頬をつついた。彼女は無言になり、心地よい雨の音が間をつなぐ。
彼女は無言のまま、唇を重ねてきた。壊れ物を扱うように私を包み込まれた。彼女は私の心拍数を数えるように静かになった。
私も彼女の心音を聞こうとした途端、それに気づいたのか彼女は痛いほど優しい声で名前を呼ぶ。
「大好き」
泣きそうな震えた声が鼓膜を震わす。
「知ってる」
私は微睡みの中で答えた。その瞬間、抱きしめている力は追い詰められているように感じた。輪郭がなくなったまま、眠りに落ちた。
目を覚ますと、やけに体が冷えていた。雨のせいだろうか。窓の外に目をやろうとすると、隣に誰もいないことに気付いた。気配も何も感じなかった。私は慌ててスマホを見ると、そこには簡潔な通知だけが残っていた。
『ごめん。』
5/20/2026, 1:27:53 AM