〈お題:愛言葉〉
諦め。
〈お題:行かないで〉
もやもやとした嫌な感じ。
なんだか、体が熱くて嫌な感じ。
スッキリとしない感じ。
行かないでと泣き喚いた。
シクシクと声を抑えるオトモダチ。
顔を下に向けて泣いている。
今世の別れ。或いは一生の思い出。
ずっとつづくとおもっていた世界の色が褪せてしまう。
私は泣いている。
でも、何に泣いているのかな。
モヤモヤとしたこの感情の正体が怖い。
私は何を悲しむのかな。
オトモダチが何処かに行ってしまう。
「…行かないでよぉ」
泣き疲れて掠れた声が嫌にピッタリだった。
あくせくする周りの人達は凄い“イイ人”。
〈お題:どこまでも続く青い空〉
蟻の行列の、最後尾は何処まであるのだろう。
随分と薄くなった白線を辿りながら家を目指す。手にした虫眼鏡が太陽光を反射して、影を乱した。
時刻は午後14:38分。
現在の天気予報は晴れ。降水確率は20%。
下を見て歩けば、背中いっぱいに感じる太陽に心まで絆され、少しばかり足取りが浮つく。今朝は小雨が降っていたこともあってまばらに自生する草花が嬉しそうに見える。
そして、電柱に頭部を…まさに青天の霹靂。
痛みに振られて空を見上げた。
〈お題:忘れたくても忘れられない〉
あれだけ遠のいていた意識が眼痛に引き止められる。不本意な痛み。不愉快な感触。
映り込む光景がその痛みの元凶、さして変わらず在るその水面。落ちた先が奈落を思わせる空虚な世界。木漏れ日が嘲笑うか。揺蕩う風が私を脅す。
私の童心が、苦悩が水に溶け込んでいる。
透き通るような青い空が、雪辱の雲を作る。
ピッー、ホイッスルが鳴った。
練習試合開始の合図。各ブロックが一斉に構えた。
水泳選手としてこの場に立った私が、激しく揺れる水面に顔を映す。
ーピッ。
水に落ちた私の、一心不乱なその逃避行は他の追随を許さない。折り返し地点、落ちた先はあの日の続き。溶け出した感情が肌を妬く。
足も、顔も、手も、絡みつく空虚を祓う様に手を伸ばした。
ピッピッー。
私はまとわりつく水を掻き分けて空を見上げる。ゴールに接触した瞬間の試合終了の合図が知らせるもう一つの事実。
一拍の過呼吸を経て私は水に沈んだ。
〈お題:やわらかな光〉
とても冷たい雨が街灯で弾ける。
弾けた雨が波紋を呼び、コンクリートで身を寄せ合っている仲間に広がっていく。落ちた雫が光を求めてザーザーと声を荒げている。
時より車に撥ねられる街灯の写し鏡が、窓越しに映る光景がとても強かで。
スポットライトに照らされた水溜まりが放つその輝きはとても、やわらかい。