〈君が見た景色〉
君はこの先の人生で色を感じられるだろうか。
君が感動を知ることが出来るだろうか。
僕の見る世界に君を連れ込んでも“幸せ”だとか“幸福”だとか。
君はこの先、一生を懸けて僕の見る全て、君の目に映し出して良いのだろうか。
熱を帯びる眼球。君は耐えかねて目を伏せるだろう。底冷えする闇の中へ。
例えば一羽の鳥の自由を。翼を。困難を。
例えば僕の胃袋に詰め込むが如き所業を“幸せ”と評するのは舌鼓を打った僕だけだろう。
君ならばと手招きするのは困窮した捕食者かもしれない。君はその光景を眺めることになる。
逃避行の末に眺める景色は仄暗い。
冷たい雨に唄えば、声は床に叩かれる。
君との出会いが一枚の風景画となりて風化する、そんな未来に邁進する僕を。そんな景色を狭い食道の中から見つめていたんだね。
8/14/2025, 10:08:40 PM