NoName

Open App
7/30/2023, 8:54:25 AM

気がつくと風が強さを増していた
重たい風が木々を揺らす

いつもなぜ風の弱いうちに
行かんとせんのだろうか

そうだ私には未来が見えない
だから見ようともしなかった

見えないのなら考えるだけ辛いと
私は心を空っぽにしてしまった

そうやって毎度失敗をして
自分に落胆し周囲に落胆させた

たとえ嵐が来ようとも
ここにとどまれはしない

困難に苛まれ間に合わねども歩くしかないのである
何もない道を

6/8/2023, 11:55:35 AM

生まれたところは畜生の
向かうところは修羅にして
辿り着く先地獄道

ここは天下の桂川
引き返したるは本能寺
篝る炎を後にして

単三日と判れども
もはや先に平和なし
己がままに突き立てよ

過ぎゆく脳裏に我が妻子
己がただ今欲するは
そこには来るなとしかと告ぎ

迫る安寧世の為に
ひたすら東を掛け行かん
儚かる夢我が命

風前の灯は揉み消えゆ
己の刀のその先に
約一寸の光あり

12/20/2022, 5:20:41 PM

ベルが鳴った。
私の意識はすぐさま覚醒した
客を一番に迎えた誇り高い鍵守りの声は勇猛に溢れている
ああ 億劫だ 憂鬱だ
甲高い鐘の音が脳を直にさわっているようだ
私は覚悟をして自分だけの
世界から出ていかなければならない
無知を恥ずることなく
時間に囚われることなく
ありのままにいられる世界だったのに
私は重い腰を上げて玄関の扉を開ける
そこに立っていたのはありし日の私だった
情けない

12/14/2022, 12:49:16 AM

息を立てて眠る寵児に一体注がれるものは何ぞや

それは大いなる大自然にかつてから溢れていた

殺風景なビルディング街に吹き付けるものは何ぞや

扣けど中は伽藍堂でそれはとても無愛想だった

凍つた滝の中を流れていくものは何ぞや

何も流れず時間だけが止まっている

それはただ世が情のなかにある限り時は止まり続けている

何者もそれを溶かすことなかれ

12/6/2022, 3:18:56 PM

全てが逆さまだったあの頃に

心を捧げて目を伏せた

置き捨てた机上の砂時計は

もう何も測ってはくれない

雨上がりの水溜まりに佇むその姿は

どこか遠くを眺めていた

彼が残した行き場のない波紋と

共に私は歩いている

Next