伽藍

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10/9/2024, 10:17:22 AM

朝早く起きて、眠たい目をこすりながら
顔を洗い軽めの朝食を食べる

メイクして身支度を整えて、仕上げに鏡に映る自分に
気合いを入れるためのとびっきりの笑顔

狭くてむさ苦しい満員電車に揺られながら出社

まったく、子供じゃないんだから不機嫌を人にぶつけるんじゃないわよ、なんて思いながらも
ネチネチ嫌味ばかりの上司に、ぺこぺこ頭を下げながら業務をこなす

おしゃべり好きな同僚とランチしながら、社内のどうでもいい噂話に肯定も否定もせずニコニコしながら相槌をうつ
この子、そうやって私のことも影でコソコソ言ってるんだろうな

午後からも、時計を気にしながらパソコンにかじりついてやっと業務終了させた
仕事ができない上に、プライドだけはやけに高い後輩くんのフォローをしたからいつも以上に疲れた

クタクタになりながら、夕食のメニュー考えるけど
もうそんな気力も体力もないから今日も、コンビニ弁当でいいや

6畳にも満たないこの自宅の一室が、私の唯一の
安心できる場所で、素の自分でいられる無二の居場所
心を許せる友達も、心底愛せる恋人も、信頼できる家族もいないそんな寂しいアラサー女の地味なサンクチュアリ

だけど、そんな日々を淡々と生きて自分のやるべき事をやってるんだから頑張った私を労いたい
一日を乗り切った私にお疲れさまをこめてビールを一杯

はぁ、今日もしんどかった



「束の間の休息」

9/19/2024, 11:18:08 AM

「本当に、アナタは美しいわね。さすがは私の娘」

それが、ママの口癖だった。みんな、アタシの美しさを誉めそやす。そして決まって言うのだ。
「お母さんに、よく似てるね」

長くツヤのある髪。透き通るような白い肌。
キスしたくなるようなジューシーな唇。吸い込まれそうな魅惑的な瞳。抱き寄せたくなるような華奢な身体。

写真で見た若かりし頃の、ママの生き写し。

アタシにとってそれは、最大の褒め言葉で誇りだった。
ママは、アタシの髪を優しく撫でて囁いてくれるの。

「アナタは、私の娘。私がお腹を痛めて産んだ美しい娘。
美しい私から生まれた特別な子なのよ」

毎日、繰り返し繰り返し。その度に、幸せな気持ちになるの。アタシ、大好きなママにとっても愛されてる。

いつも、忙しくて普段は会えないけど夜が深まった時間には会いに来てくれてアタシとお話ししてくれる。
ママのそういう優しいところが大好き。

優しくて心配症だから、男の人とあまり仲良くするととっても怒るから近づかないようにしてる。ママが悲しむことはしたくないもの。

アタシの世界は、ママがすべて。アタシの1番の理解者なのよ。だって、アタシを産んでくれた神様だもの。

これからも、ママとずっと一緒にいたい。
そして、もっと愛されるためにお利口さんで美しいアタシで居続けなければならないわ。

ああ、このまま時間が止まればいいのに。

「時間よ、止まれ」

7/27/2024, 12:24:52 PM

神様から、お告げをもらった

「人々を救済し、幸せに導きなさい。それがアナタの
使命なのです」

俺はその時思ったさ。こんなに光栄なことはない。
神から授かった神託。俺は特別なんだ。だから、
弱き者を助けなければならない。
俺にしか出来ないことなのだから。

だから、己の全てを人類の救済に費やした。
文字通り身を粉にして捧げつづけた。

やがて年老いて、人々を幸せに導いてきたはずの俺に
残ったものは何とも言えないむなしさだった。

確かに、数多くの人間に感謝された。俺の弟子になりたいと慕う若者もいた。
俺は使命を全うした、はずだった。
それなのにどうして俺は、満たされないのだ。

俺は、他者のために生きてきた。それが使命だったから。
神託がなければ、俺はどういう人生を歩んでいただろうか。
死を間近にして、そればかり考えてしまう。
朽ち果てそうになる身体に歯痒さを感じながら、
ただ、自分の役割に縋って生きてきたことに気づいて
とても滑稽で、己の幸せとは何か追求せず
寿命を使い切ってしまった。

そんな、俺の嘆きを神は何も答えてくれない。
突然、舞い降りて神託を告げたのにそれに答えた俺の
声を知らんぷりだ。

なあ神様、本当にその使命は俺にしかできなかったのか?
答えてくれよ、ちゃんと使命を果たせたのか?
よく頑張ったくらい言ってくれてもいいんじゃないか?
最期くらい俺を、救ってくれよ。
あの日、天から舞い降りてきたように
もう一度、俺の前に、


なあ、



「神様が舞い降りてきて、こう言った」

7/23/2024, 2:20:26 PM

夏になると思い出す。

ひまわり畑を背にニッカリ笑う元気な少女。

日焼けした肌にはそばかすがあり、頬はいつもほんのり

赤かった。あの子は男子にからかわれるから

自分の容姿がコンプレックスだというけど、

ボクは、向日葵みたいに明るい彼女が大好きだった。

照れくさそうに目尻を細めて、そばかすのうかんだ

ほっぺを赤くしてはにかむ表情は、

まるで蕾から花が咲いたみたいに

瑞々しい艶やかさがあった。

ジリジリと灼けつくような太陽に照らされて

暑さから立ち込める熱気は蜃気楼のように揺らめく

暑さにのぼせ上がって思いのまま、麦わら帽子をかぶったあの子の乱れた髪に触れればよかった。

なんて、告白もできない臆病者がそんなスマートなこと
できるわけがなかったが。

想いを伝えることもないまま、だんだん接点もなくなって

今ではお互いそれぞれの人生を歩んでいる。

だけど、思い出となった初恋の残骸がザワザワ

動き出すときがある。

それは決まって向日葵が咲く蒸し暑い季節だ。

ボクは、花が咲いて芽が出る瞬間の美しさを知っている。

くしゃっと細まったキラキラした瞳

笑った口元にのぞく白い八重歯。

今頃あの子は、どんなふうに生きてるだろう

花は咲いてしまった。だから、これからより多くの人を

魅了していくのだ。ボクの思い出と共に

枯れ果てるその瞬間まで。








「花咲いて」

7/23/2024, 3:52:07 AM

もしもタイムマシンがあったら、

過去の自分に会いに行きたい。

そして、笑顔で感謝を伝えたい。

「ありがとう、アナタのおかげで未来(今)の私は

幸せに過ごすことができています。だから、

生きていてくれてありがとう。前に進むことを

諦めないで、笑顔で明日を迎えようとするそんな

アナタが大好きです」

生きていたら、楽しいことばかりじゃない

打ちのめされて何もかも投げ出したい時もある。

それでも、自分自身を諦めたくない。

絶対に幸せになるんだ。

未来の私に幸せになりたいと願いを託したアナタに

最高の笑顔を見せてあげたい。

アナタには眩しい未来が待っている。

だから、生きていてくれて

ありがとう。

「もしもタイムマシンがあったら」

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