神様から、お告げをもらった
「人々を救済し、幸せに導きなさい。それがアナタの
使命なのです」
俺はその時思ったさ。こんなに光栄なことはない。
神から授かった神託。俺は特別なんだ。だから、
弱き者を助けなければならない。
俺にしか出来ないことなのだから。
だから、己の全てを人類の救済に費やした。
文字通り身を粉にして捧げつづけた。
やがて年老いて、人々を幸せに導いてきたはずの俺に
残ったものは何とも言えないむなしさだった。
確かに、数多くの人間に感謝された。俺の弟子になりたいと慕う若者もいた。
俺は使命を全うした、はずだった。
それなのにどうして俺は、満たされないのだ。
俺は、他者のために生きてきた。それが使命だったから。
神託がなければ、俺はどういう人生を歩んでいただろうか。
死を間近にして、そればかり考えてしまう。
朽ち果てそうになる身体に歯痒さを感じながら、
ただ、自分の役割に縋って生きてきたことに気づいて
とても滑稽で、己の幸せとは何か追求せず
寿命を使い切ってしまった。
そんな、俺の嘆きを神は何も答えてくれない。
突然、舞い降りて神託を告げたのにそれに答えた俺の
声を知らんぷりだ。
なあ神様、本当にその使命は俺にしかできなかったのか?
答えてくれよ、ちゃんと使命を果たせたのか?
よく頑張ったくらい言ってくれてもいいんじゃないか?
最期くらい俺を、救ってくれよ。
あの日、天から舞い降りてきたように
もう一度、俺の前に、
なあ、
「神様が舞い降りてきて、こう言った」
7/27/2024, 12:24:52 PM