夏になると思い出す。
ひまわり畑を背にニッカリ笑う元気な少女。
日焼けした肌にはそばかすがあり、頬はいつもほんのり
赤かった。あの子は男子にからかわれるから
自分の容姿がコンプレックスだというけど、
ボクは、向日葵みたいに明るい彼女が大好きだった。
照れくさそうに目尻を細めて、そばかすのうかんだ
ほっぺを赤くしてはにかむ表情は、
まるで蕾から花が咲いたみたいに
瑞々しい艶やかさがあった。
ジリジリと灼けつくような太陽に照らされて
暑さから立ち込める熱気は蜃気楼のように揺らめく
暑さにのぼせ上がって思いのまま、麦わら帽子をかぶったあの子の乱れた髪に触れればよかった。
なんて、告白もできない臆病者がそんなスマートなこと
できるわけがなかったが。
想いを伝えることもないまま、だんだん接点もなくなって
今ではお互いそれぞれの人生を歩んでいる。
だけど、思い出となった初恋の残骸がザワザワ
動き出すときがある。
それは決まって向日葵が咲く蒸し暑い季節だ。
ボクは、花が咲いて芽が出る瞬間の美しさを知っている。
くしゃっと細まったキラキラした瞳
笑った口元にのぞく白い八重歯。
今頃あの子は、どんなふうに生きてるだろう
花は咲いてしまった。だから、これからより多くの人を
魅了していくのだ。ボクの思い出と共に
枯れ果てるその瞬間まで。
「花咲いて」
7/23/2024, 2:20:26 PM