どこまでも続く青い空
永遠に続くと漠然と思ってた
そんなハズないのに、分かっていたハズなのに
来るはずの未来から目を背けて
この、どこまでも続く青い空のように
終わりなくこの日々が続くと信じようとしていた
けれどそんな叶わない夢は脆くも崩れ去り
桜が咲く季節にそれぞれの道へと放り出された
つい数ヶ月前まで毎日バカ騒ぎをしていた人達は
新しい地にさっさと馴染んで
まるで最初からそこに居たような顔をしている。
私だけがあの日の空の下に取り残されてるような感覚は否応無く孤独で寒かった
あの日は暖かな陽が照っていたはずなのに
真冬のどんよりとした曇り空のよう
「隣いい?」
ふと、隣の少し上から声がした
何が起こっているのか分からない私は「へ?」と気の抜けた声を発した
恐らく顔も阿呆面だろう。
「ここ、空いてるなら座りたいんだけど」
怒らせてしまったかもしれない
そう思わせる声色が緊張していただけだと知ったのはこの日から少し経った日のことだった
私の空は青い
始まりはいつも
「おはよう」
自室を出てリビングに入って家族との挨拶
毎朝この言葉が一日の最初
この日の朝食はトーストと目玉焼き
今回はどこかの動く城の住人よろしく
トーストに目玉焼きを乗せて食べる気分
上手に食べられなくて、目玉焼きのほうが先に無くなってしまうのはご愛嬌
それから父がいつもの時間に家を出て
次に妹が寝坊して起きてくる
今回はゆっくり歩く気分だから私は少し早めに「行ってきます」を言った
次いで妹が「待って!」と焦って後を追って来て
母の「行ってらっしゃい」を聞く
少し慌ただしいが、今までにない始まりかもしれない。
そうして3年後、私はいつもの場所でこの世を去り、この日に戻ってくる。
何度も何度もこの3年間を彷徨い続けている
始まりはいつも、この何気ない朝だった
やわらかな光
この日はいつも曇り空
何年経っても、毎年この日にこの場に来ると
必ず空には分厚い雲がかかっていて
なのにいつも、あたりは雲間から光が差し込む
包み込んでくれる暖かい光
こんなこと中々ないと思うのに
あの日から年に一度、必ずこの日はこの空と出会う
それはまるで、貴方と出会った日々のよう
もう会うことはできないけれど
毎年同じこの景色が
貴方との出会いを思い起こさせる
それだけで私は生きていける気がして
私は毎年同じ言葉をして帰る
今日も、
「また明日から頑張るね、またね」
子供のように
大粒の涙を流して
いやだいやだと周りの目など気にせず大きな声で叫ぶ貴方
行き交う人々の視線はどれも奇異なものを見る目で
けれど貴方はもちろん、私もその目を変える行動を起こすことは出来なかった
「なんで!?なんでそうなるの!?」
「ごめん」
私は謝ることしか出来なかった
そうする事でしかこの先に行けないから
「違う選択肢もあるかもしれないのにっ」
奥歯が音を鳴らす程に歯を噛みしめて
どうにか今を変えたいと必死に訴える貴方を
もう受け止めてあげることができない
大丈夫、少し経てば私の事なんか忘れて
新しい恋人を作って貴方はまた笑う
その未来に私は寄り添えないから
「さよなら、愛してたよ」
放課後
「放課後デートがしたい」
馴染んだ制服を着こなしてそういう貴方は
世間の誰もが顔も名前も知る有名人で
対する私は下手すれば隣のクラスの人は私の存在すら知らないのでは?と思えるほどの一般人
「ダメだよ」
当時の私はそう言うしか無かった
あれから、10年の月日が目まぐるしく過ぎ去っていった
環境は当時では考えられない程に変わり
何がどう転べば今に行き着くのか
私の顔がそこら中にある時代になった
そう、私は貴方の隣に立てる存在になっていた
そして今、貴方は私をみてこう言った
「放課後デートみたいだね」
誰もが羨む美しい顔がくしゃりと皺を寄せ
私だけに呟かれた
「夢、叶ったね」
私達だけの小さくて大きな夢