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8/7/2024, 10:21:31 PM

「はぁはぁ…」と私は息を切らせながら必死に後ろから走っている馬車から逃げる。
私は生まれて間もない頃、村の口減しとして奴隷商に売られた。まだ良識のある奴隷商だったら良かったが運悪く私が売られた先の奴隷商はいわゆる違法な奴隷商だった。当然、法律なんて気にされないので劣悪な環境での生活を強いられた。また、奴隷の価値を上げるために私たちはよく訓練をさせられる。
今のこの状況もその一環である。
監督者が馬車で後ろから奴隷たちを追い、奴隷たちがサボったら鞭で百回叩かれる。
ノルマの三キロダッシュが終わり、私たちはどっと倒れ込む.
しかしそんなのも気にせずに監督官は「ほら、帰るぞたて!」と容赦なく放ってくる。
もう耐えられなかった。
主従関係ではなく、これは一方的な隷属だ。
必ず本人の意思関係なく主人の命令を遂行しなくてはならない.
ーーーーーーーーソレガドウシタ?ーーーーーーーー
パキンッと何かが壊れた音がした。
親が一応餞別としてくれた錆びた鉄剣を取り出す。
監督官はその異様な視線に気がついたそうで、下卑た笑みを浮かべながらこちらは整備の行き届いた刃渡りの長い片手剣を取り出す。
武芸の差は歴然だった。
素人が経験者に勝てるわけがない。
そんな常識なんて関係ない。
今私ができる事をやるだけ。
監督官が剣を振り上げ上段に構えた。
私も剣を横に構え、そして相手の懐に飛び込んだ.
監督官は私に嘲笑の笑みを浮かべながら剣を振り下ろす。
私は剣でそれを少し逸らし致命傷を避ける。
ドバッと肩から血が大量に流れ出す。
だがそんな事を気にせず私は攻撃を続ける。
流石の監督官も今度は焦ったように後ろに飛び去り攻撃を交わす。
今度は私は剣を真ん中に構えながら突進し監督官を突いた。監督官は剣の腹で弾く。そのまま刃を返し私を斬りつける。
「ガフッ」と口が血が流れ出す。
そして私は倒れ込む。それを見ると監督官は安心したように、私から目を離す。
その瞬間、私は流れる血など気にせず一瞬で監督官の後ろに回り込み斬りつけた。
そのまま乱雑に斬りつけると監督官は動かなくなった。
その後私も後を追うように倒れる。
血を失いすぎて、私が死ぬのは一目瞭然だった。それでも恐怖ではなく清々しさが胸に残った。
少しは決められた運命に抗えたか。そう思えた。
こうして1人の少年の儚き命が世界から去った。
お題最初から決められていた
ここまで読んで頂きありがとうございます。

8/6/2024, 11:47:05 PM

昔から根暗な性分だった。
人と関わろうとしても上手くいかなかった。
そんなまま幼稚園を卒園し小学校へ上がった。
教室の自席に座って辺りを見渡すと幼稚園時代の顔見知りもポツポツいた。
話す友達もいないので周りを見渡していると他の人から一際注目を集めている子がいた。
見るからに明るそうで容姿端麗できっと性格もいいのだろう。
こんな人が私たちの世代を引っぱっていく人になるんだろうなと思ってその子をずっと見続けていると流石に視線に気付いたのか、こちらを向いた。
慌てて視線を伏せても時既に遅し。
ああ、初日から私はクラスカースト最下位に転落するのか、まだ二週間は先だと思っていたのに。と心の中でつぶやいた。
しかし私の想像とは裏腹になんとその子は私に声をかけてくれた。
「そんなとこで何してるの?こっちおいでよ!」
そう笑顔で言ってくる君が天使か何かにその時は見えた。
その日から私の人生は一変した。
その子、私の友達第一号の名前は空野雲母と言った。
とにかく明るく面倒見が良くてまるで太陽に思えた。
雲母と一緒にいるとみんなが私に話しかけてくれる。
友達も沢山増えて、楽しい事を謳歌できた。
何よりも雲母と一緒にいると楽しかった。
そうして時を経て、私たちは社会人になった。
ある日、たまたま雲母が予定があったので家で1人、本を読んでいると平塚らいてうのこんな言葉が目に映った。
「昔、女性は太陽であった。」意味は全然違うけど、私の心をガッと掴んだ。
このまま雲母に頼っていていいのだろうか。
いつまで私は月なのか。
そう決心付くと近くにあったパスポートを取り、
雲母に電話した。
「もしもし」
「もしもしどうかしたの?」
「実わね、私海外に一年行こうと思うんだ。」
「えっ!そうなの!どうして?」
「私、コミュニケーション能力が全然ないからアメリカで鍛えてもらおうと思って。」
「そっか。じゃあ定期的に電話しようね。また来年会おう。」
そうして私はアメリカへ旅立った。
私が雲母のように誰かを照らせるような太陽になるために。
お題太陽
ここまで読んで頂きありがとうございます。

8/5/2024, 1:11:57 PM

チリーン、チリーンと鐘を鳴らす。
涼やかな音が心に染み渡ってくる。
私が鳴らしている鈴はとある恩人から譲り受けた物だった。
うっすら青みがかったガラスの表面に川を想起させるような水色の波線と金魚が描かれている。
それを鳴らしながら私は恩人との出会いと別れを思い返した。
あれはまだ私が小学生の頃、チョウにつられて歩いていると親とはぐれてしまったのだ。
チョウが手の届かぬところに行ってしまってふと後ろを振り返ると両親がいなかった時ほど心細かったことはなかっただろう。
道の真ん中で人目を気にせず大声をあげて泣いていた。
たくさん人はいるのに誰も自分を助けてくれないで、そそくさとその場を立ち去る中、恩人だけが、私を助けてくれた。
ちょっとどころか完全に時代錯誤の袴姿に大きな傘みたいな帽子に私が貰った鈴をつけてチリーンチリーンと鳴らしながら私に近づいてきた。
そして私を落ち着かせるように優しい声で
「ご両親のところまでお届けしよう」と言ってくれた。
そして私は恩人の手を握りながら、両親のところへ向かっていった。
両親のところへ辿り着くと恩人は帽子に付けていた鈴を外して私の前でチリーンと鈴を鳴らしながらこう言った。
「鈴にはね、不思議な力があるんだ。とても涼やかな音は心に響き渡って落ち着かせてくれるし私にとっては恩人とのあった証なんだ。」
と言って私に渡した。
そして恩人は名前も告げずに人混みの中へ消えていってしまった。
あれから随分と経ってしまってもう高校生だがその貰った鈴は今も私の学生鞄に自身の存在を主張するとともに私が恩人とであった確かな証にも思えた。
お題鐘
ここまで読んでいただきありがとうございます。
読者の皆様方にはこれ鐘じゃなくて鈴じゃないかと思われる方もいるとは思いますがその思いは心の内にしまっていただきたいと思います。

8/4/2024, 1:33:51 PM

世界で最強と呼ばれた戦士を知っているだろうか。
戦士の名は李書文。かつて中国に存在した八極拳の開祖、挑んでくる武闘家たちをことごとく一撃で粉砕し戦う相手全てを殺した武闘家。そのあまりの強さゆえに最後には毒殺されたとも言われている。
何故、彼の一撃はあまねく全ての武闘家を仕留めるに至ったのか。
キリスト教の聖書に出てくる士師の1人、素手で獅子真っ二つに引き裂くサムエルの如き剛力を持っていたのか。
           否。
ギリシャ神話に描かれているメドゥーサ殺しの英雄ペルセウスの如く神の加護と知恵があったのか
           否。
李書文が使っていた八極拳をはじめとした中国武術の文献を見ると、日々の鍛錬をすると「クンフー」と呼ばれる力がついてくる。それによって中国と武術家などは岩を破壊したり踏み込みだけで石畳を割る力さえも生み出すことが出来る。
李書文はこの「クンフー」という地味な鍛錬を積み重ねあの極地に至ったのだ。
また李書文は弟子にこう言っている。
「千招有るを恐れず、一招熟するを恐れよ。」
これはあらゆる技をこなす者ではなく一つを極めた者を恐れよ。という意味の言葉である。
つまり何でもかんでも例えるなら八極拳全ての技を習得するのではなく、一つの初歩でも技を極めろという教えである。
彼はこの教えを身をもって実践している。
李書文は確かに素手で戦う武闘家だが、「神槍」の李書文とも言われる。
その由来は李書文が槍の一突きだけを鍛錬し続けた結果、誰もその槍が見えないまま突き刺さることから呼ばれた。
つまり現代でも言えることは、自分が何か始めたいと思ったことをちゃんと最後まで続ければ、素晴らしい技術に昇華させることが出来るということだ。
だからこそ何でもかんでもすぐ投げ出さない心が大事なのだ。
お題つまらないこと
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ちょっと説明文ぽくなってしまいました。

8/1/2024, 12:31:06 PM

「なぁ」大雨が降る中、前にいる友人に声をかける。
「何?」友人は傘と一緒にくるりと私の方へ向く。
「明日、もし晴れたらまたあの丘に2人でいこうぜ」
「いつも言ってんじゃん。そのセリフ。」
「まぁそうだけどさ。」そう言いながら傘をくるくる回す。
ちょっと水飛沫が上がり、友人が目を少し釣り上げて「かかったんですけど。」と私を咎める。
「ごめんごめん」と言いながら「あの日」を思い返す。私たちの世界は環境汚染が進み、雲が常に空を覆い隠し雨が常時降るようになった。その雨の降り始めた日を私達は「あの日」と呼ぶ。
「あの日」のせいで被害を被ったのはたくさんあるが中でも達筆する事は青空の下で寝転ぶことができなくなった事だ。
「あの日」がくるまで私達はよく晴れると地元では西が丘という丘の野原に寝転んで雑談をしていた。
だからもう晴れて私たちが寝転ぶことができないとわかっても私はいつも友人にさっきの口上を言っている。帰り道の半分に差し掛かる頃、急に友人が歩みを止めて空を見始めた。
「どうした?」と私が近寄ると、友人は傘をいきなり落とした。いけない、このままでは友人が濡れてしまうと思い、私の傘を友人に翳して気づいた。
傘を手放しても雨に体が濡れない。不思議に思って、私も空を見上げた。そこで私たちが見たのは万金にも値する「あの日」ぶりの青空と虹だった。
パシャリパシャリと友人が連写を始める。私も釣られて連写を始める。
これが私たちにとって最後の青空になった。
数年後、私達は成人し開発者になった。
それから更に数年が経ち、私達は発明品の完成に差し掛かるところだった。
「準備できてる?」私が聞くと友人が「もちろん」と返す。
「それじゃっいくぞ!」と私がボタンを押すとともに空が映った。私たちが撮った最後の青空が全世界の雨を遮り偽りの青空を生んだ。
こうして私達は再び青空を取り戻した。
ただ願うならもう一度、もしも明日雨が晴れれば。
お題明日もし晴れれば
ここまで読んでいただきありがとうございます。
更新遅れてすみません

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