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「なぁ」大雨が降る中、前にいる友人に声をかける。
「何?」友人は傘と一緒にくるりと私の方へ向く。
「明日、もし晴れたらまたあの丘に2人でいこうぜ」
「いつも言ってんじゃん。そのセリフ。」
「まぁそうだけどさ。」そう言いながら傘をくるくる回す。
ちょっと水飛沫が上がり、友人が目を少し釣り上げて「かかったんですけど。」と私を咎める。
「ごめんごめん」と言いながら「あの日」を思い返す。私たちの世界は環境汚染が進み、雲が常に空を覆い隠し雨が常時降るようになった。その雨の降り始めた日を私達は「あの日」と呼ぶ。
「あの日」のせいで被害を被ったのはたくさんあるが中でも達筆する事は青空の下で寝転ぶことができなくなった事だ。
「あの日」がくるまで私達はよく晴れると地元では西が丘という丘の野原に寝転んで雑談をしていた。
だからもう晴れて私たちが寝転ぶことができないとわかっても私はいつも友人にさっきの口上を言っている。帰り道の半分に差し掛かる頃、急に友人が歩みを止めて空を見始めた。
「どうした?」と私が近寄ると、友人は傘をいきなり落とした。いけない、このままでは友人が濡れてしまうと思い、私の傘を友人に翳して気づいた。
傘を手放しても雨に体が濡れない。不思議に思って、私も空を見上げた。そこで私たちが見たのは万金にも値する「あの日」ぶりの青空と虹だった。
パシャリパシャリと友人が連写を始める。私も釣られて連写を始める。
これが私たちにとって最後の青空になった。
数年後、私達は成人し開発者になった。
それから更に数年が経ち、私達は発明品の完成に差し掛かるところだった。
「準備できてる?」私が聞くと友人が「もちろん」と返す。
「それじゃっいくぞ!」と私がボタンを押すとともに空が映った。私たちが撮った最後の青空が全世界の雨を遮り偽りの青空を生んだ。
こうして私達は再び青空を取り戻した。
ただ願うならもう一度、もしも明日雨が晴れれば。
お題明日もし晴れれば
ここまで読んでいただきありがとうございます。
更新遅れてすみません

8/1/2024, 12:31:06 PM