ザザンというかすかな波の音が鼓膜をかすかに鳴らす。そこは白浜の海岸で私はそこを両親と手を繋いで歩いていた。
とても仲睦まじく誰から見ても仲良し親子のようだった…。
パチリと目を開けるとそこにはいつも通りの自室が広がっていた。
私は幼い頃、海のあるところで育った。
どこで育ったのかは両親が教えてくれなかったので海がある所としか呼べなかった。海があるところでは楽しく美しい記憶が残っているのに、今、私が生きるこの場所では苦難ばかりが続いてばかりだ。
何故、あの楽しい海のある所を離れたのかを両親は話してくれなかった。両親は秘密主義者なのだと思う。
海のあるところを離れて約18年、大学生になった私は両親の制止を無視して一人暮らしを始めた。
一人暮らしの生活は両親が制止したのも分かる辛さがあった。
ご飯はバイトであまり稼いでいないのでわずかなお米ともやしだけで家は家賃削減のため四畳半で、布団はツギハギだらけで誰が見てもみすぼらしいキャンパスライフを送っていた。
みすぼらしい生活を紛らわすように朝早くに近所を散歩することが私の日課である。
散歩が終わると大学の講義に行って帰ってくるとバイトで帰ってくると、寝る時間である。
私は寝る前、嫌なことがあると巻貝を吹く。
巻貝のあの音は私の記憶の海のある所を呼び覚ましてくれるからだ。
お題遠い日の記憶
ここまで読んでいただきありがとうございます。
人々の叫び声がする。どこかで赤子の泣き声がする。
そんな世界をぶっ壊してやりたい。そう思って勇者をやってきた。
幾度も己を狙ってくる狡猾な魔物を退け魔王軍の幹部を倒し遂には魔王城まで乗り込むことができた。
四天王を倒して謁見の間へ辿り着いた。
その先にいたものを見た時私は後悔した。ああここにくるべきではなかった。夢物語を胸の中に思ったまま暮らしていた方が良かった。
私が剣を抜かずにいたのを見て魔王の少女がよく通る透き通った声で「少し話しても良いでしょうか」といってきた。沈黙を了承と受け取ってたのか侵略のあらましについて語り出した。
魔族は昔から迫害されていたこと
このままでは一族が滅んでしまうこと
それは一つの国としての正当防衛だった。
先程まで邪悪な敵と思っていたが違ったのだ。
私は世界を救うヒーローではなく国に単身で乗り込んできた大量殺戮犯だった。
沈黙が続いた。
しかし突然、沈黙を裂くように抜刀音が鳴り響いた。
「終わりにしよう」そう口から漏れ出てきた。
すると魔王が「はい」と答えた。
そして私はその少女の首を…。
その後のことは思い出そうとすると頭痛がする。
ただその魔王を倒した後、私は闇に堕ちて「俺」は世界を気の向くまま「情動」のまま攻め込んだ。
これが俺という存在が生まれた歴史だった。
お題終わりにしよう
ここまで読んでくださってありがとうございました。
常識という押し付けがましい価値観が社会に蔓延ってきたのはいつからだろう。
その常識をよしとしなかったものを抑圧したのは誰だろう。
これは私の抑圧された世界の話だ。
私は殺人鬼を父に持った。地獄のようだった。他の人が見れば美しいと思える世界も私にとって狂気と猜疑に溢れた世界だった。毎日毎日、ねちっこくいじめをしてくる学校の悪ガキども。
それを許しむしろ扇動している学校の教師。
何もかも自分にとって信用ならない世界で理不尽は容赦なく濁流の如く私にぶつかってくる。
それがおよそ23年に続いた。
そして私は大学までなんとか進学し、地元と離れたところに就職した。
都会だったから家賃と物価は苦しかったが、あの地獄の責苦のようなものに比べたら随分マシだった。
結果には厳しいがちゃんと結果を見て褒めてくれる上司、失敗したら飲みに誘ってくれる優しい同僚、満ち足りた日々だった。
生活が貧しくともこんな生活が続くのであれば構わないと思った。
あの日の悪夢のようなニュースがなければ。
夏が過ぎたはずなのにまだ暑さを引きずった夜だった。
何故かよく眠れなくて気まぐれにニュースを見るとそこにはメモリアル殺人鬼ニュースというのがあった。
嫌な汗がどっと溢れた。
案の定、その事件は父の話だった。
その次の日周りからの目はガラリと変わった。
戻ったというべきかもしれない。
会社の上司は結果が出ても出なくとも叱ってきて同僚はあからさまに自分の足を引っ張ってくる。
思わず笑みがこぼれてしまった。今、思い返しても猟奇的な笑みだと思った。
自分の心の中の何かが切れた音がした。
お題私の当たり前
ここまで読んでくださってありがとうございました。最近更新遅くてすみません。
この先に何かがあるのか。この先へ行かねばならない理由があるのか。そう自分に問いかける。
生まれてから親に抱かれてから親が死に自分が老いるまで歩き続けても尚、最北の地は見つからなかった。
けれど歩みは止めなかった。ただ老人となった私は知りたかった。己の一族が辿り着こうとした道のりを。
私は連れ合いを持たなかった。だから後を一族の悲願を受け継ぐものはいなかった。自分の代で終わらせるつもりだった。この因果を良くも悪くも断ち切るつもりだった。
老いた私は歩き続ける。それは私の人生の経過を示しているのかもしれない。
やがて冬が終わり春の風が東から吹いてくる頃、辿り着いた。そこはただ寂れただけの祠だった。
何も感慨が湧かなかった。人生を心血を注いで目指した先がこんなものが指標だったとはと落胆した。
けれど義理として祠に祈った。
すると私はその祠の神に出会った。神は言った。
私の一族は追放された神の系図でその神罰として果てのない道のりを歩まねばならなかったのだと。
私は得心した。すると枯れ果てた声が漏れ出て僅かしかない水分が溢れ出てやまなかった。
神はただ優しく私を見ていた。
お題「その道の先に」
ここまで読んでくださってありがとうございました。
さかなというのは、どんな色をしてどんな形をしているのか。犬とはどんなものなのか、その一切を少年は知らなかった。本来なら白色以外の色すらもわからないはずであった。けれども1人の親切な研究員が小さな小さな窓を作ってくれた。それで少年は小さい世界で色とりどりの本来の世界を見ることができた。
その景色はやがて少年の心に好奇心という炎で焼き焦がし、少年はずっと待っていた。
いつかここをでられる日を。
終わりなき白い空間で。
「窓越しに見えるのは」