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この先に何かがあるのか。この先へ行かねばならない理由があるのか。そう自分に問いかける。
生まれてから親に抱かれてから親が死に自分が老いるまで歩き続けても尚、最北の地は見つからなかった。
けれど歩みは止めなかった。ただ老人となった私は知りたかった。己の一族が辿り着こうとした道のりを。
私は連れ合いを持たなかった。だから後を一族の悲願を受け継ぐものはいなかった。自分の代で終わらせるつもりだった。この因果を良くも悪くも断ち切るつもりだった。
老いた私は歩き続ける。それは私の人生の経過を示しているのかもしれない。
やがて冬が終わり春の風が東から吹いてくる頃、辿り着いた。そこはただ寂れただけの祠だった。
何も感慨が湧かなかった。人生を心血を注いで目指した先がこんなものが指標だったとはと落胆した。
けれど義理として祠に祈った。
すると私はその祠の神に出会った。神は言った。
私の一族は追放された神の系図でその神罰として果てのない道のりを歩まねばならなかったのだと。
私は得心した。すると枯れ果てた声が漏れ出て僅かしかない水分が溢れ出てやまなかった。
神はただ優しく私を見ていた。
お題「その道の先に」
ここまで読んでくださってありがとうございました。

7/7/2024, 1:50:37 AM