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ザザンというかすかな波の音が鼓膜をかすかに鳴らす。そこは白浜の海岸で私はそこを両親と手を繋いで歩いていた。
とても仲睦まじく誰から見ても仲良し親子のようだった…。
パチリと目を開けるとそこにはいつも通りの自室が広がっていた。
私は幼い頃、海のあるところで育った。
どこで育ったのかは両親が教えてくれなかったので海がある所としか呼べなかった。海があるところでは楽しく美しい記憶が残っているのに、今、私が生きるこの場所では苦難ばかりが続いてばかりだ。
何故、あの楽しい海のある所を離れたのかを両親は話してくれなかった。両親は秘密主義者なのだと思う。
海のあるところを離れて約18年、大学生になった私は両親の制止を無視して一人暮らしを始めた。
一人暮らしの生活は両親が制止したのも分かる辛さがあった。
ご飯はバイトであまり稼いでいないのでわずかなお米ともやしだけで家は家賃削減のため四畳半で、布団はツギハギだらけで誰が見てもみすぼらしいキャンパスライフを送っていた。
みすぼらしい生活を紛らわすように朝早くに近所を散歩することが私の日課である。
散歩が終わると大学の講義に行って帰ってくるとバイトで帰ってくると、寝る時間である。
私は寝る前、嫌なことがあると巻貝を吹く。
巻貝のあの音は私の記憶の海のある所を呼び覚ましてくれるからだ。
お題遠い日の記憶
ここまで読んでいただきありがとうございます。

7/22/2024, 1:14:34 PM