本というのは世界への扉と鍵だ。
いつも自分が望む世界へ連れて行ってくれる。
だから本が好きだ。現実は酷く辛く苦しいけれどそれがより人を成長させ本の世界を一層深めてくれる。
怖くたって面白くたって綺麗だとしても本質は何も変わらずただ人々の根幹にある想いを呼び起こしてくれる。
世界は自由にできている。
どんなに人が私たちを縛りつけようが心は自由だ。
だから今この文を読んでいる人はやがて価値観を変えるような本に出会うかもしれない。
私の運命を変えたのは「聖書」という一冊の本です。
お題好きな本
ここまで読んでくださってありがとうございました。
今回はストーリーではありません。
すみません
月光が糸の如く僅かに届く裏路地で、少年が歩いていた。まっさらなキャンパスを想起させるような白髪に、血の色を思わせる澱んだ赤色の目をしていた。
黒い襤褸を被ってどこか楽しそうにステップを踏みながら道を進む。
そんな少年の様子をならず者たちが眺めていた。
彼らは集団で行動し裏路地に迷い込んだ子供を誘拐し売ることを生業としていた。
気配を殺し、獲物にバレずに接近し一瞬のうちに攫う。彼らは自他共に認めるプロだった。
今日も哀れな少年が再び自分の懐の金へと変わるのだと確信していた。
そして手筈通り背後をとって全員で囲い布を少年に被せようとした。こうしていつもの如く鳥籠に捕まる哀れな鳥のようにジタバタと袋の中を暴れ回る光景が目に浮かんだ。
だが次に見たかれらの景色は酷く錆びついた赤茶けた剣だった。
「羊が一匹羊が二匹羊が三匹」
今まで何事もなかったように、少年はステップを踏み続ける。
ただ変わっているのは彼の後ろに打ち捨てられている流血の跡すら見えないならず者たちの死体であった。
彼は貧民の出だった。生まれた頃から両親のいない彼が知っていたことは奪わなければ奪われることだった。
だが子供である彼に生存競争を生き延びる術はなかった。
全てを失いのに打ち捨てられていたところを神に見そめられ死神となった。
彼の刃は誰もきずつけずただ冷酷に魂だけを刈り取った。
戦乱の世をたった1人で終わらせた。
ある日は戦乱の指導者を、ある日は無双の戦士を
星の数のような途方もない数を殺して来た。
裏路地を歩き切ると美しい噴水が目立つ広場へと繋がっていた。
そこには怪しい挙動をする異国の剣士がいた。
彼が今夜のターゲットであった。
少年は骸骨の面を被りあっさりと男の前に姿を現すと男は驚きもせずにただ無言で東国で刀と呼ばれる剣に手をかけた。
少年も自分の得物を抜く。赤錆びた鉄剣は今日も鈍い色を精一杯輝かせている。
お互い無言で闘いは始まった。
最初に仕掛けたのは男の方だった。
刀を抜きつつ間合いを詰めて少年を切り裂こうとするが、バックステップで躱される。
だが怯まずに再び間合いを詰め豪快な一太刀で少年を切り裂こうとした。
しかし男の豪剣は見えない何かに弾かれてしまった。
月に反射して見えたのは細長い糸だった。
糸の全てに少年の死の権能が込められていた。
攻撃をするだけでは行き詰まると察したのか男は後方へ逃げようとする。
だが少年は左手で糸を操り男の背を斬りつけた。
初めて男に苦悶の表情と焦りが見える。
男は流れる血を手で止血しながらも尚、刀を手放さなかった。
攻守が変わり少年が打って出る。
少年は主武器は使わずに糸だけで男を翻弄させた。
少年の糸は何千の剣を想起させ男を防戦一方へと押し込んだ。
男はひたすらに防いでいたかと思うと男の姿が消えた。
糸が虚空を切る。
男は少年の背後にいた。
滑るような一撃が少年の背後を襲う。
しかし少年は消えるように避け冷酷に男を捉える。
男はとうとう奥の手を使った。
剣先が開き銃口が出てくる。
男の刀は仕込み杖ならぬ仕込み剣だった。
目視できぬ高速の一撃が少年の心臓を打ち据える。
しかし何故か銃弾が当たったにも関わらず少年は平然としていた。
そして終わりを告げる。「死神流百閃」
男にあらゆる武術の技がぶつかり男はズタズタに切り裂かれた。
血溜まりに背を向けて少年は歩き出す。
少年を蝕むことができたのはちっぽけな罪悪感と殺人の愉悦だけだった。
お題街、岐路、誰にも言えない秘密
ここまで読んでくださってありがとうございました。
更新遅れてすみません
地獄の沙汰も金次第とはよく言ったものだ。
どんな悪人でも赦してくれる魔法の呪文だ。
だけど金で赦される生ぬるい地獄があるのだろうか?
否、これは罠であったのだ。暗示だったのだ。
最初の頃は本当に天国であった。道歩けば周りの天国の住人が俺に対して悪口を叩き石を投げるが痛くも痒くもない。やりたいことはなんでもできるし気に入らないことはなんでも消せた。
けれど段々と満たされなくなって来た。
欲求が過剰なまでに増幅して萎んでいった。
最終的には頬はこけ、目に生気が失われていった。
段々と周りの目線も気になり出した。最早天国などどこにもなくそこは天獄だった。
改めて言おう。地獄の沙汰も金次第というなら地獄のサタンは大笑いだ。
夜の荒野を駆けていく。宵闇に紛れている彼の姿は全身が黒一色。誰にも悟られるこのなく任務をこなす影の使者。毎夜血に塗れてなおこうして心を保っていられるのか。
それはありふれた日常を享受するということだった。
ある日、彼はいつもの如く雇い主の命じたとおりに指定された相手を殺そうとしていた。そこで見たありふれた日常が彼に心を取り戻させた。
いつか自分のお役目が終わる日が来る。その時こそあの光輝く日常を享受できるとそう勘違いしていた。
その出来事から数十年が経ち彼に引退の時期が訪れた。まだ彼は夢を忘れてなく遂に終わると意気揚々と最後の任務へと繰り出した。
いつもの通り指定された土地へ行くとただの空き地だった。不思議に思って地図をかくにんしていると不意に風切り音が聞こえて来た。
咄嗟に自分のクナイで弾いた。そこでようやく飛んできたものが分かった。それは自分が幼少の頃から見慣れて来た里のクナイだった。彼は理解した。
なぜ里に老いた忍びがいなかったのか。
それはこうして里のものたちで処分しているからだったのだ。
だが理解したところで手遅れだった。
彼の老いた体では2回目の攻撃はかわせなかった。
クナイが心臓に突き刺さる。
大量に口から血を流し彼は血の海に沈む。
結局は自分の業からは逃れられなかったのだ。
彼は最後に霞む視界で夜空を仰ぎ見て一つのことを願った。彼を今まで照らし続けていた月は月蝕によって影もなかった。
お題月に願いを込めて
ここまで読んでいただきありがとうございます。
更新が遅れてすみません。
春の風が優しく吹いている頃、私は揺籠の中で揺れていた。特にやる事もなくそれが暇という事を知らない私は不快と感じる事なく来る日も来る日も寝て起きて食べてまた寝るというサイクルを繰り返していた。
ずっとこのままでいいなと思い始めた頃、私は己の身長くらいもある大きい腕に抱き抱えられた。
このままだと連れ去られてしまうかもしれない。
そう思った私は堪らず大声をあげて泣いた。
すると大きい腕の男はワタワタと忙しなく顔を変え奇声を発してあやそうとして来た。
それがより一層不気味に思えてまた泣き出して、するとあやすことを諦めた男は急いで目的地らしい場所へ向かって駆けていった。
しばらくすると私の視界はいつも見た色の乏しい空間ではなく様々な色に富んだ空間を映していた。
それだけでなく知らぬ音、少し湿っている空気、見たことのない動物。
その全てが私を感動へと導いた。
声も出さず涙を流す私を胸に男は
「お前にこれが見せたかったんだ」と言い聞かせて言った。
その美しき光景は私はその男が父と知り自分で歩み言葉を発して1人で生きていける年になってもまだ鮮烈に一つの大切なフィルムの様に脳裏に焼き付いていた。
故郷を離れ、仕事に行っていた私は再び故郷に帰って今度は自分の足で歩いてその光景を見て息を吸った。
お題忘れられない、いつまでも
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
更新がかなり遅れてしまって申し訳ありませんでした。これからもまだまだ半人前ですが私の作品に目を通していただけるとありがたいです。