その日は雨だった。いつものように校門を抜け1人で家へと帰宅する。傘を忘れてしまったがどうということはない。これくらいの雨ならば大丈夫。
そう思っていました。雨足は私が1番目の交差点を渡る時に既に強く帰路の半分まで来るとゲリラ豪雨と見まごうくらいの大雨へと変貌した。
携帯で天気情報を見てみる。勘違いしないので欲しいのが私は学校に違反物を持ってきたわけでも私立の中学校に行っているわけでもない。
私は現役高校生である。
今日も今日とてぼっちで家へ帰ろうとしてこうなってしまったのだ。
「「はぁーついてないなぁ」」
え?声が被った事に驚いて慌てて向こうを見ると向こう側の人も驚いた表情でこちらを見ている。
彼女の名前は牧野桜と言った。彼女もこの近くの高校に通っていて雨のせいでここに雨宿りしにきたらしい。ついでに彼女も同じぼっち仲間である。
私達はすぐに打ち解け世間話をするぐらいの仲になった。それがやがて1月経つと友達となり2月経つと親友と呼べる仲になった。
今日も一緒に家に帰っていると彼女が突然、「私転校するの」と言い出してきた。
驚いて言葉が出ずにいると彼女は酷く申し訳なさそうにそして寂しそうに目を伏せていた。
彼女の前では心配したりして快く送ったが内心はとても乱れていた。たった1人の友人が居なくなってしまうなんて。
1人だけの帰路で私は目から雫を零した。
お題「雫」
この物語はフィクションです。
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更新が遅れてすみません。
遥か遠くの宇宙の外、空間が捻じ曲がってあらゆるものがひしめき合ってまさしく混沌とした空間、そこに彼は立っていた。時空を管理する彼はビックバンよりも遥か前からこの場所にいた。彼こそが所謂神である。神は退屈であった。ビックバンによりできた幾つ物並行世界を観測するのが。
神はある日思いついた。それはそれはとても面白いお遊戯である。神は早速その遊戯を実行した。
まず神が下界におりて囁くのだ。
未来を見たく無いか?と。一つ目の世界は愚かな欲に溺れて自滅した。二つ目の世界はやがて訪れる死の未来に恐慌した。三つ目の世界は生きる気力を失った。
世界を息をするように破局に導いた神がみると最後の世界になってしまった。
そしていつも通りの手段を使って問うた。
しかし彼らはそのすべてを断った。神は遊戯の通りには行かなかったが愉快だった。新しい玩具が手に入ったと喜んだ。この世界なら好き勝手しても耐えてくれるという期待があった。さあ遊戯を始めよう。
春。新しい生命の息吹が感じられる瑞々しい草木の匂いがする季節。私は桜の化身と出会った。
あれは中学3年の頃である。遊びにかまけていた私は都立の受験に至って危ない状況にあった。今日も塾に行ってご飯を食べて寝るだけの一日になるだろう。そう思ってしまうと気分が重くなる。歩いていると桜並木に出た。どの桜も美しく流麗だった。だが一つだけ格別の木があった。その巨体は大地に深々と根を張り桜の散る儚さと何があっても壊れぬことのないような猛々しさが同居しているような木だった。時間を忘れてその桜を眺めていると一つの青い桜の花びらが落ちてきた。変わっているなと注目していたらその花びらは地面につくと同時に人の女の姿を取った。あまりにもショッキングな光景すぎて私が二の句も告げなくなっていると「ねぇ何をしてるの?」と話しかけてきた。
言葉喋れるんだ…。
彼女?に動揺していると彼女が自己紹介してきた。
予想通り彼女は桜の精で、花が散る頃にまた消えてしまうらしい。それから私は彼女と毎日通学路で話をした。楽しくてそれだけのために外へ出るほどだった。
そんなある日いつもの通り桜の木に到着するとそこに彼女はいなかった。驚いて桜を見ると花は全て散ってしまっていた。悲しくて寂しくて下を向いているとたくさんの花びらがどこからともなく飛んできて私を覆い隠した。綺麗な光景だった。さようならと言われといるとともにまた来年とも取れたものだった。
それから私は冬になってまたこの桜に来た。新芽がピョコッと生えてきて頼りなくとも力強い生命の息吹が感じられた。
お題桜散る
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この物語はフィクションです。
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私はよく夢を見る。幸せな夢ではない。
いつも何かに追いかけられている。焦って脚がすくんで動かなくなってしまったりする現実感は夢の世界が本当の世界だと勘違いさせてしまうほどだ。私は勿論こんな毎日夢の中で逃走中のようなものをやりたくないと思っている。でも悪いことばかりではない。
夢は人にさまざまな啓示を与えてくれる。有名なベートーヴェンをはじめとした偉人の中には夢の中の出来事から着想を得たと述べていたという。
夢を見る。それは自分の想像の領域の中で自分だけのストーリーを汲み出すことのできる力である。
だから私は悪夢には嫌悪を抱くが夢に関しては何も思わないようにしている。心の中に響くはショパンの幻想即興曲。さあ今日は一体どんな夢を見せてくれるのだろうか。
お題夢見る心
この物語はちょっとフィクションです。
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天つ風 雲の通路 吹き閉じよ をとめの姿 しばし留めん。中学2年生の時に百人一首の宿題があった時に覚えたものだ。何も知識もない私からみるとこれを詠んだひとは下衆い人なんだなと思った。
それから3年半ば少し経った私は今その歌を反芻している。家で作ったサンドウィッチを食んで真っ白なきゃんばすに絵の具という情報をこぼしている。
絵を描こうと思ったのは中学3年生の頃だ。絵を描くより本を書く方が好きだった私は絵がとても下手で98点だったのに評定は四だった。だから内申点もとりたかったし絵を練習し始めた。すると存外これが楽しい。目が自分なりに上手く描けると舞い上がってしまう。
やがて私は絵師を志すようになった。志望校もかなぐり捨てて美術の専門高校に入った。
でも生まれつきの不器用さゆえか凡人より上程度の実力にしか到達することはできなかった。
だから単位が吊り橋の様に危機的な状況になっている。教師にも親にも怒られて私はこの道はダメなんだろうか。と思いながら何となくふらっとこの丘に立ち寄った。公園っていうのはつまらないものだなと私は思うけど描いてしまう。私にはこれくらいがちょうどいい。やっぱり普通に進学すべきだったのだろうか。
絵を描いていると気分が重くなってしまってすぐに描くのをやめてしまった。雲を眺めてあれは羊だ。あれはアイスだとか幼児がやる様な遊びをしているといきなり天が割れた。文字通り。雲が晴れて青空が切り裂かれてそこに何が蠢いている。それは白い龍だった。あまりの美しさに私は無意識に筆を握っていた。
写真とか無粋なことはしない。このキャンバスにこの光景を閉じ込めたかった。何かが変わって何かが終わる音がした。これが芸術というものか。美しさの化身である龍は鳴いた。その音はどんな名曲にも勝る天上の音色だった。背景を描き終わって龍に取り掛かろうとしたら雲がまた集まり出した。待って、待ってくれ。まだ見ていたい。天つ風が雲を吹き閉じてくれる様に私は願った。その詩人の気持ちを身をもって理解した様な瞬間だった。それから5年私の家の壁には美しい空と真っ白な龍の様なシルエットが浮かんでいた。
お題遠くの空へ
この物語は半分フィクションです。
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