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春。新しい生命の息吹が感じられる瑞々しい草木の匂いがする季節。私は桜の化身と出会った。
あれは中学3年の頃である。遊びにかまけていた私は都立の受験に至って危ない状況にあった。今日も塾に行ってご飯を食べて寝るだけの一日になるだろう。そう思ってしまうと気分が重くなる。歩いていると桜並木に出た。どの桜も美しく流麗だった。だが一つだけ格別の木があった。その巨体は大地に深々と根を張り桜の散る儚さと何があっても壊れぬことのないような猛々しさが同居しているような木だった。時間を忘れてその桜を眺めていると一つの青い桜の花びらが落ちてきた。変わっているなと注目していたらその花びらは地面につくと同時に人の女の姿を取った。あまりにもショッキングな光景すぎて私が二の句も告げなくなっていると「ねぇ何をしてるの?」と話しかけてきた。
言葉喋れるんだ…。
彼女?に動揺していると彼女が自己紹介してきた。
予想通り彼女は桜の精で、花が散る頃にまた消えてしまうらしい。それから私は彼女と毎日通学路で話をした。楽しくてそれだけのために外へ出るほどだった。
そんなある日いつもの通り桜の木に到着するとそこに彼女はいなかった。驚いて桜を見ると花は全て散ってしまっていた。悲しくて寂しくて下を向いているとたくさんの花びらがどこからともなく飛んできて私を覆い隠した。綺麗な光景だった。さようならと言われといるとともにまた来年とも取れたものだった。
それから私は冬になってまたこの桜に来た。新芽がピョコッと生えてきて頼りなくとも力強い生命の息吹が感じられた。

お題桜散る
ここまで読んでくださってありがとうございました。
この物語はフィクションです。
更新が遅れて申し訳ありません。

4/19/2024, 2:21:00 PM