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4/10/2024, 2:50:29 PM

私は散りゆく花弁の一片。ちょっとした風が吹けば地面に叩きつけられてしまうような不安定な存在。
でも風に乗るからこそ美しく見える。
だから私はいつも風に乗ってしまう。そう周りの考えという木枯らしに。誰かに反抗するなんて何年ぶりだろう。そう思いながら殴って気絶してしまった上司に目をやってみる。この上司は別に殴ってしまっていいだろう。裏社会の人間だしあまり慕われたし知名度があるわけでも無いから。私は堅気ではなく裏社会での仕事を生業としている。昔から刀の稽古をつけられて忍刀で相手の首をスパッとやるのが私の仕事だ。
だからなのか幼いときはやたらと殴られて体に主従関係を刻み込まされた。だから私は基本的に雇い主及び上司に絶対服従である。だがしかし何事にも例外があるものだ。こんな上司なんて上司と認識していない。
ろくに仕事もしないし誰かにも慕われてないのに何かと人に文句を言ってくる小煩い輩だった。
今日だって雇い主の事を馬鹿に来たので少し身の丈を教えてやっただけなのだ。そう、決して私の私情などではない。あの上司のたるみきった腹まるでお餅のようだな。お餅か…。家に帰るついでに買うか。そう思うほど私は和菓子が好きだ。特に大福。いつも仕事着に携帯している。だから時間感覚が狂ってしまう裏社会にいても季節だけは細かく分かる。
桜餅が昨日売られていたということは先週から春が始まったということだ。
春といえば春の定義って花が咲いて暖かいことだろう?だから私はいつも血の華を咲かせて返り血で暖かいから年中春ということだなという鉄板ジョークがある。勿論この社会でも受けるどころかドン引きされているのが全部だ。
春という恋愛のシーズンでもあるこの時期を血に染めてしまうのはとても心苦しいのだが止めることはできない。桜の花は春爛漫。血の華も春爛漫である。

お題春爛漫
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/10/2024, 2:32:19 PM

狼は言った。「満月よりかけている方が好きだと」
狼は知っていた。自分に剣の才は無いと。
狼は諦められなかった。狼の父との最期の約束の為に
狼はやめた。真っ当なぶつかり合いをする事を。
狼は餓狼となった。狼はその狂気的なまでの攻撃性と狼の人柄を表す様な曲刀が故に故郷で広く知られた。
狼はそれでも飢え渇いていた。まだまだ足りないと言わんばかりのその姿は悪魔でさえ飲み込むのではというまでの悪食であった。いつしか父に教わった剣技は泡沫へと消えただ狼の飢えを潤す為の剣技となった。
その名は一国に知らぬものはいないほどに広まった。
だが狼はまだ満腹ではなかった。1人で飢えるように鍛錬や手合わせを繰り返しやがて誰よりも強き剣士となった。その孤独で猟奇的な行動から人々は狐狼と呼んだ。けれど狼も衰えには逆らえずその剣術の腕は半分までに堕ちた。しかし狼の強さに憧れてやがて力を欲した小鳥たちが集まる大樹へと狼はなった。飢えた小鳥たちに自分の知識と技術の実を授け狼の名は永遠と語り継がれた。誰にも教わらず至った最強の狐狼。
狼の名は村雨と言った。

お題誰よりも、ずっと
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/9/2024, 1:55:16 PM

私には人にはみえない何かが見えている。いつも背後には刀を持った三十後半の男がいる。何でいるのかと聞いたら「さぁな俺にもわからん」と答える。本当に刀なのかと聞くと錆びついた刀を抜く。刃こぼれが酷くまともなものなど斬れなそうな頼りない刀だった。
その男とは10年ぐらいずっといる。もう少しで中学校に上がる私はある噂で竦み上がっていた。
それは中学校には例によって例の如く七不思議があってそんな幽霊たちが「見えてしまう」私にとって悪夢以外の何物でもないのだ。だがそんな私の願いは神に届かずやはり霊はいた。けれどこちら側を攻撃してくる様子はない。だがただ一つの異様な殺気を放つ黒マントの男を除いて。男は授業中、後ろでずっとこちらを見つめてくる。鏡の反射で見るとその見ている方向を睨みつけてくるのだ。怖くなって前をずっと見ていたある日急に男が笑いながら鎌を振り上げて私に斬りつけてきた。間一髪でかわすと死の鬼ごっこが始まった。それを続けて一刻。刀の男が私の前に立った。だがいつものヘラヘラした顔と違ってなにかを決した様に真剣な顔で男を睨みつけていた。そして刀を抜いた。いつものボロボロの錆びついた刀ではない。
たった今研ぎ澄まされたかの様な美しい直刃がそこにはあった。そして一気に男の間合いへ詰めると
豪!!
力強い一太刀で男を斬り裂いてしまった。だが刀の男の様子がおかしい。急に姿が透け始めたのだ。私はびっくりして彼に聞くと彼は悟った様な顔で
「やっぱり霊力が持たなかった」といった。
問い詰めると刀の男はかの名剣童子切の化身なんだそう。だが数百年、存在を維持するための霊力により刀に使う霊力が無くなっていた。でもさっきの戦いで無理矢理霊力を込めたため消えてしまうらしい。
何で助けてくれたのか聞くと「お前だけが俺を切るための剣として見てくれたそれだけだ」そう答えて消えてしまった。彼がいた所には一本の錆びついたでも懐かしい刀があった。私は彼にーーー。
お題「いつまでも、いっしょに」
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/8/2024, 9:44:57 AM

昔から冒険に憧れていた。息が詰まる様なコンクリートジャングルにとらわれないで大海の中を自由気ままに動き見たことのない美しいものを見に行くのだ。
そう思って今僕たちはここに居る。サファイアの様な美しい海を渡るのは艶々と輝く黒漆の海賊船。
燦々と輝く太陽の下で僕たちは一日だけの冒険をした。小学校6年生の夏休み前日、重たい荷物を背負いながら気を紛らわすため親友である彼(ここでは彼と呼ぶが名前はちゃんとある)と話していた。朝ごはんはパン派かご飯派かやたけのこの里とキノコの里どっちがいいかなどのくだらない話題で馬鹿笑いしていた。
話のネタも無くなって石蹴りをしていると黒いボロボロのローブをきた怪しげな婆さんに当たってしまった。最初はその浮ついた雰囲気に唖然としてしまったがすぐに謝ると老婆はキヒヒと笑うと小さな船のストラップを渡してから「これは海賊になることができる魔法の船です。でも夕日が沈む頃に沈んでしまいます。使い方は簡単。水に浮かせるだけです。ああ、お金は入りません。それでは」と早口で怪しげな雰囲気を醸し出しながらフッと幻影の様に消えてしまった。
そして今に至るわけだ。船の中にはご丁寧に宝の地図がありそこに今向かっているわけだ。そろそろ島が見えてくる時に、大砲の音が聞こえた。その方向を向くとそこには僕らと同じような船。つまり海賊船があった。船長はジョン・シルバーと名乗った。
船を奪うという彼はマスケット銃とレイピアを取り出した。僕は衣装にあったカトラスと拳銃を持って戦った。どうしてだろう。カトラスも拳銃も握ったことのないのに導かれる様に使うことができる。レイピアが来るところを弾く。好きができたところに
ーーーーーーーーーーー『閃』ーーーーーーーーーー
ジョン・シルバーは斃れた。殺しても何も情は湧かなかった。このコートのおかげかも知れない。或いはここが幻だからかも知れない。けどとにかく島にたどり着いて僕らは宝を手に入れた。一つのコインをポケットに仕舞い込んで宝箱を開けると眩い光が溢れて海岸に帰ってきた。夕日が沈んだ。すると船と宝島はアトランティスのように海底に沈んでいった。
このことは幻ではない。そう確信できるのはあの日ポケットに入れたコインだった。
お題沈む夕日
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/7/2024, 3:40:47 AM

雪の激しかった冬、僕は人を殺した。死体を触ると徐々に冷たなっていくのがわかる。喉元を切った時のあの血飛沫は美しくて忘れられない。僕が人を殺したのはただ一つ。人の、彼女の絶望した姿が見たいからだ。既に事切れた死体の傷口をぐりぐり抉っていると彼女が帰ってきた。逃げるつもりはないがその方が面白いかなと思って隠れてみた。彼女を観察するとまず出迎えがないのを疑問に思う。リビングに進み大の字になってナイフに滅多刺しにされて死んでいる母を見る。気が動転する。そして壊れた様に泣き出す。その様を見てると凄く幸せになった。頃合いかなと思って出てみると案の定彼女は酷く怯えていた。少しずつ近づいていくと彼女も少しずつ狂気へ近づいていく。一歩進むと顔が凍りついた。二歩進むと突然笑いました。三歩進むと目が虚になって四歩進むと包丁を持ち始めた。五歩進むと突進してきて僕は刺された。
その時に僕が見た彼女の目は憎悪と殺意に塗りつぶされていた。その目は今まで見てきたどんな目よりも美しく気高かった。
お題君の目を見つめると
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

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